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過労死OL、魔性のメロンに転生したので絶対働きません〜無口な狼執事が私の光合成生活を守りすぎます〜   作者: 月神世一


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第二章 『Club メロロン』と札束での殴り合い

温室改め『Club メロロン』オープン。~安眠を守るために、法外な入場制限チャージをかけました~

「きゃーっ! あれが噂の【クイーンメロロン】様よ!」

「なんという神々しい丸みだ! ぜひ我が領地の宝に……っ!」

「おい、押すな! 俺は金貨千枚持ってきたんだぞ!」

「…………うるさぁい」

私の究極のVIP温室生活が始まってから数週間。

世界が「メロロンを快適に光合成させるため」だけに統一されたというニュースは、瞬く間に大陸中を駆け巡った。

結果として何が起きたか。

かつては辺境の緩衝地帯だったこのポポロ村に、ルナミス、レオンハート、アバロンの三大国から、ミーハーな貴族や富豪たちが連日押し寄せるようになってしまったのだ。

彼らの目的はただ一つ。世界を平定した伝説の魔植物(私)を一目拝むこと。

温室のガラスの外には、まるでアイドルの出待ちか、はたまたパンダの初公開かというレベルの人だかりができている。

(……せっかく世界が平和になったのに、これじゃあお昼寝の邪魔じゃないの。前世の休日のパチンコ屋の行列よりうるさいわ)

私が不機嫌そうに短い根っこをバタバタさせ、葉っぱを萎れさせると。

「……申し訳ございません、我がマスター

カツッ、と冷たい足音を響かせ、私の専属執事であるリバロンさんが進み出た。

彼の銀縁メガネの奥の瞳は、外で群がる貴族たちをゴミでも見るかのように冷え切っている。

「世界が統一され、国境がなくなった弊害ですね。どこぞの成金や三流貴族どもが、貴女様の放つ極上のフェロモンに当てられ、我を忘れて群がっている。……我が主の尊きお昼寝を妨害するなど、万死に値する羽虫どもです」

リバロンさんの背中にある狼の尻尾が、怒りでピーンと逆立っている。

そこに、ルーベンスさんとデュークさんも合流してきた。

「リバロン、私が今すぐ影魔法で外の連中を全員亜空間に沈めてやろうか?」

「ふはははっ! 俺がブレスで消し飛ばした方が早いわ! 雫の安眠を乱す者は、誰であろうと灰にしてくれる!」

相変わらず過激派(武力行使)の二人に対し、リバロンさんはスッと手を挙げて制した。

「お待ちください、お二人とも。ここで血を流せば、結局は我が主の視界と土を汚すことになります。……ここは、ポポロ村宰相である私に一つ『策』がございます」

リバロンさんはニヤリと、それこそ悪魔のような、冷徹な為政者の笑みを浮かべた。

「あの羽虫どもは、貴女様の価値を金で買えると思っている。……よろしい。ならば『敷居』を天の高さまで引き上げ、選ばれた者しか貴女様に謁見できないシステムを構築しましょう」

 * * *

翌朝。

「ふぁぁ……よく寝たぁ。あれ? すっごく静か」

私が目を覚ますと、昨日までの騒音と人だかりが嘘のように消え去り、温室の周辺には静寂が戻っていた。

ガラスの向こうには、レッドカーペットが敷かれ、タローマン製の屈強な警備ゴーレムたちが門番として立っている。

そして、温室の入り口には、純金で縁取られた豪奢な看板が掲げられていた。

『完全会員制 VIPサロン ―― Club メロロン』

「おはようございます、我が主」

完璧なスーツ姿のリバロンさんが、恭しく一礼する。

「本日より、この温室は『Club メロロン』としてリニューアルオープンいたしました。入場できるのは、私が厳格な審査で認めた『超富裕層・絶対権力者』のみ。そして……」

リバロンさんが指を鳴らすと、空中にメニュー表(料金システム)が魔法で投影された。

・入店チャージ料(着席のみ):金貨100枚(※庶民の年収の三分の一)

・お水(肥料)持ち込み料:金貨500枚

・葉っぱへの接触(※審査あり):金貨10,000枚(※家が建ちます)

(……えっ? なにこのぼったくりバー。歌舞伎町の高級店でもこんな強気な値段設定しないわよ!?)

「いかがですか? これで有象無象は完全に足切りされました。さらに、この法外な値段設定が逆に貴族たちの射幸心とステータス欲を煽り、現在、入会待ちの予約が三年先まで埋まっております」

リバロンさんは「私、完璧なマネジメントをしましたよね?」と言わんばかりに、尻尾をブォンブォンと振って私からの褒め言葉を待っている。

(いや、これ普通に暴動起きるレベルじゃないの……?)

と思ったが。

「ふっ、当然だ。私の愛する癒やし(メロン)と同じ空気を吸う権利が、たった金貨100枚など安すぎるくらいだ」

「俺は永久VIP会員権を金貨十万枚で買っておいたぞ! これでいつでも雫の顔を見に来られるな!」

なぜかルーベンスさんとデュークさんが、超ドヤ顔でプラチナに輝く『VIP会員証』を首から下げていた。

(……まぁ、いっか)

彼らが納得して自分でお金を出しているのだし、何より、騒がしい連中がいなくなって静かに二度寝できる環境が戻ってきたのだ。

「リバロン、ありがとう……♡ しずく、しずかで、とってもうれしい……♡」

私がちんまりとした口で笑いかけ、営業スマイル全開で労うと、リバロンさんは「ああぁぁっ……!」と胸を押さえてその場に崩れ落ちた。

「貴女様のためなら、世界経済を牛耳るなど造作もありません……っ! さあ、本日の最初のお客様(太客)をご案内いたしましょう!」

こうして。

私の絶対的な安眠を守るために設立された『Club メロロン』は、世界中の権力者たちが己の財力(札束)を握りしめて狂い咲く、大陸最大の『極上キャバクラ(沼)』として、その魔性の扉を静かに開け放ったのだった――。

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