第14章 異変の兎
「まさか……」
レオンは巨大な青い光の球を見つめながら、息を呑んだ。
夜空の下、洗面器ほどの大きさの光球が彼の手の中で静かに脈動している。数え切れないほどの青い光点が、まるで生きているかのようにペンダントの周りに密集していた。
だがこの美しい光景は、レオンに喜びよりも困惑をもたらした。
この光は何なのだ?
なぜペンダントはこれらを吸収するのだ?
そして最も重要なのは――この現象には、一体どんな意味があるのだろうか?
レオンは深呼吸をして、慎重にペンダントを懐に仕舞い込んだ。光球は彼の動きに従って徐々に小さくなり、やがて消えていった。
部屋に戻ると、レオンはペンダントをテーブルの上に置き、それを見つめながら考え込んだ。
前世で機械エンジニアだった経験が教えてくれる――すべての現象には必ず原因がある。この異常な光の吸収にも、必ず何らかの意味があるはずだ。
だが何時間考えても、答えは出なかった。
レオンは欠伸をして、ペンダントを首に掛け直した。今夜はもう遅い。明日また考えよう。
◇
翌朝、レオンが目を覚ますと、最初にしたのはペンダントの確認だった。
手に取って仔細に観察する。
外観に変化はない。六つの側面の図案も、蓋の符文も、すべて昨日と同じだ。
だが――
レオンは突然、ある細部に気づいた。
ペンダントの底部、六角柱の最下部に、微かな青い光が宿っている。
よく見ると、それは光ではなく……液体だった。
深い青色の液体。豆粒ほどの大きさ。
レオンの心臓が激しく鼓動し始めた。
昨夜はなかったものだ。
ということは、あの青い光を吸収した結果、この液体が生成されたのか?
彼は慎重にペンダントを傾けてみた。液体は重力に従ってゆっくりと移動する。粘度は水よりも高く、まるで水銀のようだ。
「これは……『星辰の血』と同じものなのか?」
レオンは内部の大きな液体の塊を見た。それと比べると、新しく生成された液滴は確かに同じ色をしている。
だがこの液滴には、何か特別な用途があるのだろうか?
レオンは再び考え込んだ。
母エララはなぜ種を「星辰の血」の中に封印したのか。
そしてこのペンダントは、なぜ夜空の光を吸収してこの液体を生成するのか。
すべてが謎だ。
だが一つだけ確かなことがある――この液滴には、必ず何らかの用途がある。
レオンの脳裏に、ある考えが浮かんだ。
実験だ。
小動物を使って、この液体の効果を試してみよう。
前世の科学的思考が、再び彼を導いた。未知のものに直面した時、最も有効な方法は観察と実験だ。
決心を固めたレオンは、立ち上がって部屋を出た。
◇
邸の後庭には、かつて母エララが薬草を栽培していた小さな薬園がある。
今は荒れ果てているが、時々野兎がここに現れる。
レオンは薬園を一周して、案の定、灰色の毛並みの野兎二匹が雑草を齧っているのを見つけた。彼は静かに近づき、前世で学んだ知識を使って、すぐにこの二匹の兎を捕まえた。
部屋の近くの小さな中庭に戻ると、レオンは野兎を紐で比較的広い場所に繋ぎ、夕日の下で日向ぼっこをさせた。
兎が日に晒されて元気がなくなり、喉が渇いてきた頃を見計らって、白い磁器の椀を持ってきた。そして慎重にペンダントを傾け、その液滴を椀に垂らし、普通の水を少し混ぜた。
豆粒ほどの深い青色の液体は、簡単に水の中に溶け込み、椀全体の水を淡い青色に変えた。この淡い青は見ているだけで、思わず清涼な感覚が心の底から湧き上がってくる。
レオンはこの椀の希釈した水を持ち、すでに喉が渇いている兎の前に来て、椀を彼らの側に置いた。
すでに日に晒されて喉がカラカラになっている兎たちは、急いで寄ってきて磁器の椀の周りに集まり、椀の中の水を大口で飲み始めた。レオンは一度に飲みすぎるのを避けるため、少し飲まれたところで椀を兎の前から取り上げた。
それから椀を持って傍らに立ち、辛抱強く兎の反応を待った。変化があるかどうかを見守る。
時間はあまり経たなかった。ほんの一刻ほどで、兎たちは落ち着きなく跳ね始めた。そして動きはどんどん激しく、どんどん狂暴になっていった。
レオンは眉をひそめた。
次に起こったことが、彼の身体を硬直させた。
兎たちの身体に驚くべき変化が起き始めたのだ。皮毛の下に卵大の腫瘤が隆起し始め、それがどんどん増えていき、やがて全身を覆い尽くした。そしてこれらの腫瘤が繋がって一つになり、兎の身体が見た目に一回り大きくなった。小さな頭と比べると、とても異様だ。
「何だ……これは……」
レオンは後ずさった。
兎の肥大した胴体は短い間しか維持されず、少しずつゆっくりと膨らみ始めた。そして時間の経過とともに、膨張の速度もどんどん速くなっていく。まるで体内に何らかの気体が注入され続けているかのように、どんどん大きく、どんどん膨らんでいく。
最後には、彼らの身体はまるで二つの大きな西瓜のように、二つの丸々とした大きな球体に膨れ上がった。
「やめろ……」
レオンは思わず声を上げた。
だが遅かった。
「パン!」
一匹目の兎が弾けた。
血と肉片が四方に飛び散る。
「パン!」
二匹目も――
レオンは顔を背けた。
手が震えている。
胃の中のものが込み上げてきそうだ。
彼は壁に手をついて、何度も深呼吸をした。
前世では機械を扱う仕事をしていたが、こんな光景を見たことはなかった。
血生臭い匂いが鼻腔を刺激する。
レオンはようやく顔を上げて、惨状を見た。
二匹の兎は、もう原形を留めていない。
「これが……『星辰の雫』の力なのか……」
レオンの声は震えていた。
彼は椀を見た。中にはまだ淡い青色の水が残っている。
こんなに希釈したのに、これほどの効果があるとは。
もし原液を直接飲んだら?
もし人間が飲んだら?
レオンの背筋に冷たいものが走った。
これは宝物などではない。
これは――毒だ。
恐ろしい毒薬だ。
彼は急いで椀を地面に叩きつけた。磁器が砕け、青い水が地面に染み込んでいく。
レオンは震える手でペンダントを握りしめた。
母は何故、こんな恐ろしいものを自分に残したのか。
「落ち着け……落ち着くんだ……」
レオンは自分に言い聞かせた。
前世の理性が、徐々に恐怖を押さえ込んでいく。
確かに兎は死んだ。
だが――それは液体が毒だということを意味するのか?
いや、違う。
もしかしたら、使い方が間違っていただけかもしれない。
もしかしたら、兎には効果が強すぎただけかもしれない。
もしかしたら……別の用途があるのかもしれない。
レオンは深呼吸をして、冷静さを取り戻した。
科学的思考。
一度の実験で結論を出してはいけない。
もっとデータが必要だ。
もっと観察が必要だ。
彼は周囲を見渡した。幸い、深夜で誰もいない。
レオンは急いで兎の残骸を片付け、血痕を洗い流した。
すべてを終えた後、彼は部屋に戻り、扉を閉めた。
テーブルの上にペンダントを置き、それを見つめる。
「次は……何を試そう……」
動物ではダメだ。
では――植物は?
レオンの目が輝いた。
そうだ。
薬草だ。
母は薬草を栽培していた。
もしこの液体が薬草に効果があるなら……
レオンは立ち上がった。
明日、試してみよう。
だが今夜は、もう眠れそうにない。
彼はベッドに横たわり、天井を見つめた。
兎が膨れ上がっていく光景が、脳裏に焼き付いて離れない。
「母さん……これは一体何なんだ……」
レオンは呟いた。
答えはない。
ただ静寂だけが、部屋を満たしていた。
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