第06話 狭間の選択
◆ 狭間の間
白い光に包まれたタケルは、ふと目を開けた。
そこは真っ白な空間。天も地も境界がなく、ただ不思議な光が漂っている。
「ここは……?」
すると、光の中から小さな羽音が近づいてきた。
虹色の羽をもつ妖精のような存在が、にこりと笑う。
「やあ、タケル! ようこそ“狭間の間”へ! 私はミラッチ。これから君の案内役を務めるよ」
「……案内役?」
「そう! マスターから管理を任されてるんだ。ここでいくつか大事なことを決めてもらうよ」
ミラッチは楽しそうにくるりと回った。
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◆ ミラリアのルール
「まずは説明からね。ここから先が“ミラリア”。
人間とミラモンが共存する、もう一つの世界なんだ」
「もう一つの世界……」
「そう。ここは仮想世界なんかじゃない。
現実の体ごと繋がっている、本物の世界だよ。
ただし──死ぬことはないけど、
HPがゼロになると強制的に追い出される。
そのとき、現実の身体や心に
重いダメージが残ることもあるんだ」
「……そんな」
「心配はいらないよ。きちんと守れば大丈夫。ルールはシンプルだからね」
ミラッチは羽を振り、光の板に文字を浮かび上がらせた。
【ミラリアの基本ルール】
1. ミラリアでは、人やミラモンとの戦闘によって命を落とすことはない。
2. ただし、ダメージはミラリア内で蓄積され、
過度な負荷は現実の身体や精神へ反動として返る場合がある。
3. HPがゼロになると強制退場。
現実世界へ戻され、十日間は再接続不可。
4. 生命活動ゲージが10%を切ると接続不可。
5. 適道や種族の変更には、基本的に専用アイテムが必要。
「ここで過ごす時間や体験が、タケルの成長に直結するんだ。つまり、“遊びの延長”なんかじゃないってことだよ」
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◆ 種族選択
「じゃあ始めよっか。“種族選択”だね。これは──質問とモンマスの初期ランクで、君に与えられる“第二種族”が決まるんだ」
「第二種族……?」
「そう! ミラリアでは全員ヒューマンがベース。でももうひとつ、“鳥族”とか“獣人”とか“精霊族”とか、第二種族が付与される。特性や得意分野が大きく変わるから、みんなワクワクする瞬間なんだよ!」
光の板に文字が浮かんだ。
――【質問1】困難に直面したら、どうする?
A:正面から突破する。
B:工夫して乗り越える。
C:仲間に託す。
「……A!」タケルは迷わず答えた。
――【質問2】一番大事にしたいのは?
A:力
B:知恵
C:絆
「……C、かな」
――【質問3】もしご飯を食べるなら?
A:肉!
B:魚!
C:野菜!
「……肉!」
「なるほど、食欲はパワーにつながるっと。あ、これ関係ないけどね!」
ミラッチがふんふんと頷いたその時、タケルのモンマスを覗き込み、目を丸くした。
「やっぱり……君の初期ランクはG(幻)だったんだ……! これは数十年ぶりに確認されたよ!」
「数十年ぶり……?」タケルの心臓が跳ねる。
「うん。幻ランクGは特例なんだ。質問の結果がどうであっても、選べる第二種族がほとんど封じられちゃう。だから──」
〈ベース種族:ヒューマン(全員共通)〉
〈付与第二種族:該当なし〉
「……え、無し……!?」タケルは目を見開いた。
ミラッチは気まずそうに笑う。
「ごめんね。普通なら質問で特性が広がるんだけど、幻ランクは制限がきついんだ。けどさ──“可能性そのもの”とも言えるんだよ」
(……なら俺が、このGを証明してやる!)
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◆ モンマス展開モード
ミラッチが羽をふわりと振った。
「モンマスの展開の仕方を教えるよ。じゃあ、実際にやってみよっか! 私の言葉を真似してみて」
ミラッチ「オープン!」
タケル「オープン!」
タケルが声を出すと、腕のモンマスが〈ピピッ!〉と反応。光が広がり、バインダー型へ変形した。
「おおっ……!」タケルは目を丸くする。
「次は──リード!」
タケル「リード!」
本型へ変形し、光のページに古代文字が浮かぶ。
ミラッチ「いいね。次はアクセス!」
タケル「アクセス!」
今度はタブレット型に。ステータス表示やミラモン管理画面が浮かび、フィールドに呼び出す準備もできる。
「そして最後は──エンド!」
タケル「エンド!」
光が収束し、元のスマートウォッチ型に戻る。
「……本当に、生きてるみたいだ」タケルは息を呑んだ。
ミラッチはウインクしてまとめる。
【モンマス展開まとめ】
• オープン! → バインダー型(カード管理・発動)
• リード! → 本型(記録・解析・調査)
• アクセス! → タブレット型(ステータス表示・バトル支援・ミラモン管理)
• エンド! → 収束しスマートウォッチ型に戻る
さらに、ミラッチは意味ありげに微笑んだ。
「……でもね、これで全部じゃないんだ。モンマスにはまだまだ秘密が眠ってる。冒険の中で、自分で見つけるのも楽しみのひとつだからね!」
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◆ ミラモンプレゼント
「本当ならここで、“最初のミラモン”をプレゼントする決まりなんだけど……」
ミラッチは首をかしげて笑った。
「ごめんね、タケル。今回はまったく引っかからなかったにゃ。……だから頑張って捕まえてね!」
「えぇぇ……!」
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◆ 始まりの扉
「これで準備は完了! さあ、始まりの町へ向かうんだ。君の冒険はここからだよ!」
ミラッチが羽を大きく広げた瞬間、空間が虹色の光に包まれた。
足元に輝く道が伸び、巨大な扉がゆっくりと開いていく。
扉の向こうには見たこともない光景が広がっていた。
石畳の街道、遠くに城壁の町、空に浮かぶ大陸、虹色の滝──。
光と音が渦巻き、世界そのものが輝いていた。
その入り口に、アキラとサクラの姿があった。
「タケル!」
二人が手を伸ばす。
タケルの胸が熱く高鳴る。
(ここから……俺の道が始まるんだ!)
その時だった。遠くから獣の咆哮が響いた。
「……今の、何だ!?」タケルが身を固くする。
ミラッチは小さく笑った。
「ふふ、着いてからのお楽しみ!」
タケルが一歩を踏み出す。
その身体は白い光に包まれ、扉の向こうへと吸い込まれていった。




