第39話 タヌキ衆の秘密拠点、です!です!
薄暗い通路の先に、いくつもの道が枝分かれしていた。
「うわ、どこ行きゃいいんだよこれ!」タケルが頭を抱える。
すると、どこからともなく元気な声が響く。
「ようこそ! タヌキ衆秘密拠点へ!」
次の瞬間──壁が回転し、目の前に広がったのは奇妙な空間だった。
ドラム缶や提灯で飾られた、やけに賑やかな“秘密基地”。
その中心には、ちびっこサイズのタヌキ衆たちが十数匹たむろしていた。
壁際には、手作りの“スイッチらしき何か”がずらりと並んでいる。
「こっちは落とし穴ボタンです!」
「こっちは……たぶん爆発しません!」
「たぶん!?」タケルのツッコミが響く。
「なんだここ……遊園地?」
「いや、“やかましい洞窟”って感じだな」アキラが冷静にツッコむ。
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子分タヌキ衆のリーダーが──天井から吊り下げられていた。
逆さまのまま、もがきながら必死に声を張り上げる。
「オイラたち、清掃ボランティアです! 幻影迷宮の安全点検中です!です!」
「……って、まずお前が危ないだろ!」タケルがツッコむ。
「くっ……罠のテストをしています! 現在、絶賛点検中ですぅ!」
「それ、本当に点検か⁈」
足だけがバタバタと動くその姿に、サクラは目を輝かせた。
「ちっちゃくてかわいい〜!」
「いや、言葉づかいも仕草も完全に悪党見習いだろ」アキラが突っ込む。
「どう見ても悪そうな顔してるけどな!」タケルが警戒を緩めない。
リーダータヌキは動揺して、逆さのまま帽子を押さえた。
「なぜバレた?です!です! じつは」
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チビっ子タヌキリーダーが胸を張る。
「親父タヌキ殿の命令で、侵入者を惑わせる訓練中です! ……だったのですが!」
タケルが眉をひそめる。
「なるほどな。でも今のお前ら、どう見ても惑わせる側じゃなくて迷ってる側だろ」
「くぅ……返す言葉がないです!」リーダーが涙目でジタバタ。
よく見ると、リーダーは天井から吊り下がった網にすっぽり絡まっていた。
足だけがバタバタと動いている。
「くっ……罠のテストをしていたら、オイラが引っかかったです! 脱出できないです! 助けてくださいですぅ!」
「おい、自分で試して自分で捕まるなよ!」タケルが叫ぶ。
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仕方なく、タケルたちは救出に協力することにした。
リリーフェアがふわりと舞い、淡い光で周囲を照らす。アキラが仕掛けを分析。
モチがプルプル震えながら小石を拾い上げると、幻術の壁がパーン!と消えた。
「解除成功!」
「助かったです!ですぅ〜!」
感極まった子分タヌキたちが一斉に抱きつく。
「うわっ、ちょ、毛が多いっ!!」タケルが悲鳴を上げる。
「ふふ、かわいいじゃない」サクラが笑う。
「いや、これはもはや毛玉地獄だろ……!」タケルがもがいていた。
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ようやく解放されたリーダーが、肩で息をつきながら言った。
「恩に着ます! 助けてくれたお礼に……ヒントをあげますです!です!」
「お、正解の道を教えてくれるのか?」タケルが身を乗り出す。
「それは──教えられないです!」
「ですよねー!」タケルがズッコケ。
が、後ろの子分が素直に指差した。
「あっちの道です!」
「お前、正解言うなです!です!」リーダーが頭を叩く。
「だってリーダー、困ってる人は助けるっていつも言ってる!」
「ぐぬぬ……墓穴掘ったです……行っていいです!」
「ありがとな」タケルが笑うと、サクラが優しく微笑んだ。
「なんか、いい子たちね」
タヌキ衆リーダーは涙目で敬礼。
「次こそは、立派な悪党になりますです!ですっ!!」
「目指すとこそこなの!?」
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こうして、騒がしくも憎めない子分タヌキ衆との邂逅を経て、
タケルたちは再び奥の幻影迷宮へと足を踏み入れる。
──待つは、親分タヌキとの本戦。
そのころ、迷宮の最奥。
親分タヌキは鼻をぴくりと動かし、にやりと笑った。
「ほう……子分どもが、やらかしたようじゃのぅ。
ふふ、上出来じゃ。これで退屈せずに済みそうじゃな」
静かな笑い声が、迷宮の奥へと溶けていった。




