第37話 護りの森の戦い・変化タヌキ衆
巨木の根元に囚われていた白狐は、小さくも神秘的な存在だった。
その毛並みは淡く光を宿し、ただの動物ではなく“特別な気配”を放っている。
「……あれ、ただの狐じゃない」サクラが小声で呟く。
「守り神の使いかもしれないわ。村の祭りと関係してるんじゃ……」
アキラは目を細め、状況を見極めようとする。
だが、その前に数体の変化タヌキ衆が姿を現した。
数体のタヌキが人間そっくりに化けていたが、よく見ると尻尾がチラリとはみ出ている。
彼らは「子供」に見えたが、正体は人に化けるミラモン──変化タヌキ衆だった。
さらに、腹を大きく揺らして笑う親分タヌキが前へ出た。
「ケケケッ! 白狐の姫は我らの手にあり! ……どうやらキツネ衆にもバレたようだな」
親分は鼻を鳴らし、ニヤリと笑う。
「追手が来る前に、さっさと帰るぞ! もっとも──この幻影を抜けられりゃの話だがな!」
親分タヌキは腹をドンと叩いた。
次の瞬間、森の影が揺らめき、十数体のタヌキ衆が辺り一面を取り囲むように現れる。
黒い影が幾重にも重なり、森全体がタヌキ衆で埋め尽くされたかのようだった。
「ケケケッ! 追いたけりゃ追え!」
タケルが前のめりになりかけた瞬間──
「待て」アキラが鋭く制止する。
「幻影だ。冷静に見ろ」
嘲笑とともに本体のタヌキたちは白狐を抱えて、森の奥へと一気に駆け抜けていった。
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その時、森の反対側から静かな声が響いた。
「……ひと足遅かったか」
姿を現したのは、長い白髪を風に揺らす老人の姿。
しかし、その背後にはふさふさの狐の尾が揺れていた。
ただの人間ではない──《変化キツネ衆》の長老だった。
若い狐の戦士たちも駆け寄り、慌てて報告する。
「長老! 姫が巣にいません!」
「やつら、明日の祭りに向けてハルネ村に集まるのを知っていて、留守を狙ったんです!」
長老は静かに頷き、タケルたちへ視線を向けた。
「……そこの人間の子供たちよ。悪いことはせん。話を聞かせてもらえんか?」
タケルは戸惑いながらアキラに視線を送る。
「どうする?」
「彼らは変化タヌキ衆の事情を知っているようだ。行くしかない」アキラは即答した。
サクラも小さく頷く。
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巨木のそばに移動すると、長老が名乗った。
「我らは変化キツネ衆。この護りの森を守る者だ」
「ミラモンと会話できるなんて……!」サクラが感嘆する。
長老は真剣な顔で言葉を続けた。
「お前さんら、一部始終を見ていたのだろう。何があったか教えてくれ」
アキラが状況を説明すると、長老の目が険しく光った。
「……白狐の姫に加え、村の家宝まで盗まれたか。どちらもなければ祭りは成り立たん」
タケルは思わず声を上げた。
「何かすごい展開になってきたな!」
長老は深く息を吐いた。
「人間の子らよ、すまぬが姫救出に力を貸してくれんか? アジトの場所は分かっておる」
「もちろんだ!」タケルが勢いよく答える。
「家宝も取り返す。白狐の姫も助けるぞ」アキラも力強く言い切った。
サクラは笑顔で頷いた。
「人助けならぬ、ミラモン助けだね」
長老は目を細め、嬉しそうに笑った。
「ほっほ。心強い。では、案内役を……」
その瞬間。
木々の影から、小さな狐がぴょこんと飛び出した。
ひらりと宙返りし、人間の姿に変化する。
現れたのは──忍者装束をまとった小柄な女の子。
彼女は胸を張り、勢いよく宣言した。
「人間の子らよ〜! おちゃらけ、ちゃらけ♪ わたしにまかせるでごじゃる♡ ……ニンニン☆」
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つづく。




