第14話 はじめての討伐前夜!三代目カレーと新たな依頼
三人は意気揚々と、町の裏通りにある食堂へ足を運んだ。
看板には大きく──《三代目福ちゃんの味》と書かれている。
「ここかぁ……思ったより古びてるね」タケルが首をかしげる。
「外観はボロいけど……いい匂いする!」サクラの鼻がぴくぴく動く。
「ほら行くぞ。腹減って死にそうだ」アキラが先に扉を押し開けた。
中に入ると、スパイスの香りがふわりと広がる。
店内はがらんとしていて、客はほとんどいない。
カウンターの奥に立っていた青年が、元気よく声を上げた。
「いらっしゃい! 三代目の福です!」
浅黒い肌にターバン風の布を巻き、笑顔が爽やかな青年だ。
年は二十代前半ほどだろうか。
彼が差し出したメニューは、一枚の紙切れに「カレー(50ミラ)」としか書かれていなかった。
「……潔いな」アキラがぼそっと呟く。
「えー! 一種類しかないの!?」サクラが驚きの声を上げる。
「でも、うまそうだ……!」タケルはもうよだれを垂らしそうになっていた。
三人が席につくと、間もなく大皿のカレーが運ばれてきた。
香辛料の香りが立ち上り、食欲を直撃する。
「いただきますっ!」
サクラが一口食べて目を輝かせた。
「おいしい! でも……なんか、あと一歩?」
「確かに味は悪くないな。けど“絶品”って感じじゃない」アキラも分析するように言う。
「うん……おいしいのに、完成しきれてない感じがする」タケルはスプーンを止めて首をひねった。
すると、カウンター越しに三代目が苦笑した。
「……やっぱり分かっちゃいましたか」
三人が顔を上げると、彼は少し声を落として語り始める。
「一年前までは“スパイスボア”の肉を使ってたんです。あれがうちの看板だったんですけどね……」
「スパイスボア?」タケルが聞き返す。
「はい。山に群れで住むイノシシ型のミラモンです。臆病なやつらで……一匹でも危険を感じると、すぐ群れごと姿を消してしまうんです」
福の表情は少し寂しげだった。
「一年前、見慣れない奇妙なミラモンが現れてから、スパイスボアはぱったりと消えてしまって……。肉がなくなってからは、客足も遠のいて……」
三人は無言でカレーを見つめた。
美味しいのに、完成していない味──その理由がわかった気がする。
サクラはスプーンを握ったまま目を輝かせる。
「絶対スパイスボア、見つけたい!」
アキラはふっと鼻で笑った。
「ふん……なるほどな」
タケルはため息まじりに呟く。
「肉がなきゃ……完成しないよな」
やがて、福は気まずそうに笑った。
「すみません、お客さんに愚痴っちゃって。でも……もし山に行くことがあったら、スパイスボアを見つけてやってください」
三人は顔を見合わせ、言葉を交わさずにうなずいた。
心の中で、どこか引っかかるものを感じていたからだ。
「……よし、腹も満たされたし、ギルドに戻るか」アキラが立ち上がる。
「スパイスボア……いつか絶対見つけたいね!」サクラは拳を握る。
「とりあえず今は、次の依頼だな……」タケルは胸を高鳴らせながら扉の外へ歩き出した。
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再びギルド。
受付嬢が依頼票を差し出すと、モンマスが〈ピコン!〉と光り、画面に文字が浮かぶ。
【新規依頼:町外れに出没するリーフラット討伐】
【対象:草食系ミラモン(群れで作物を食い荒らす)】
【推奨:新人パーティ】
「リーフラット……なんだそりゃ?」アキラが依頼票を読み上げる。
「名前は可愛いけど……やっかいそうだね」サクラが首をかしげる。
〈ピコン!〉
【リーフラット:草ウサギ型ミラモン。群れで行動し、畑を荒らすため農家から討伐依頼が多い】
「いよいよ……初めての戦いか」
タケルは無意識にモンマスを構え直し、仲間たちと視線を交わした。
「……行くぞ!」アキラが歩き出す。
「うん!」サクラも笑顔で続く。
「俺たちの初バトルだ……!」タケルの胸は高鳴っていた。
そして三人は、胸の奥に小さな緊張と大きな期待を抱きながら──次の冒険へと歩みを進めた。
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次回「はじめての討伐! 三人の連携なるか!?」




