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ノルド・ドラゴン  作者: 本藤侑
10/15

10.アルシング2

 20年以上も前の全島集会アルシングにてとあることが決まった。


 ヴァイキングは異国から奪うことは出来ても学ぶことが出来ているのかという疑問から生まれた。


 世界で生きる人々は日々発展している。誇り高きヴァイキングさえも武器と知恵を発展させ、繁栄したことには変わりない。


 しかし、今を生きるヴァイキングは伝統を重んじるあまり、外界を正しく知ることが出来ていないのではないか。


 いずれ異国の民がヴァイキングに対抗して新たな兵器や戦術を発展させれば、今の繁栄は保つことが出来るのか。


そんな疑問から生まれたのだ。


 そんな時に隣国のソジャット王国からとある噂が流れた。


【魔物を倒す代わりに給与を受け、さらに承認している国ならどこにでも入国が出来る冒険者という職業があり、ソジャット王国がその冒険者を承認した】


 当初は聞き流すだけであったが、次第にこの職業の魅力に気づく。

そう、世界を自由に見て回れるのだ。

 世界を見て回り、それをヴァイキング世界に伝えることできっと繁栄を永遠のものに出来る。そう考えた。


 真っ先に行動したのはラウト族だ。ラウトはソジャット王国と同盟を結んでヴァイキングが冒険者業を営むことが出来るようにした。


ソジャット王国側は凶悪なヴァイキングたちに自国が襲われなくなる上、屈強なヴァイキングを冒険者として使えることにむしろ喜びを感じた。


 ただし、冒険者というのは危険な職業だ。自ら魔物に立ち向かうのは命知らずな行為である。


 異国の民は次々と冒険者になり、同じくらいのペースで死んでいるらしい。


 ヴァイキングが異国のロクな鍛錬もしていない貧弱な冒険者よりも弱いとは思わないが、命を賭けるなら名誉ある戦いを選ぶべきだ。けして無駄に命を散らす必要は無い。


 こうして全島集会アルシングでとあることが決まったのだ。


全島集会アルシングで各部族から冒険者志願者を募り、志願者同士の決闘大会を開催、勝者を冒険者として認めること。】


【冒険者となった者はヴァイキングの代表として5年の間世界を見て回り、その後はヴァイキング世界の発展に尽くすこと。】


 この2つの事柄が決まり、次の全島集会アルシングから毎年大会は開かれ、毎年1人ずつ冒険者が決まった。


 大会勝者はその大会で自身が屈強であることを示すのだ。いかなる時でも死なない力強さを証明するのだ。


 こうして選ばれたヴァイキングはやはりかなりの凄腕らしく、ソジャット王国ではかなり有名になった。


 ヴァイキング世界を異国に知らしめることにも繋がり、匹夫や野蛮な賊であるという認識を改めさせることにもなった。


 今では全島集会アルシングに視察団を派遣するほどに期待をしている。




 そういう経緯で開催されることとなった大会だが、現在では各部族の見栄の張り合いへと変化した。


 決闘大会ということは各部族の代表が争うということ。自分の部族が情けなく負けるのは誰だって嫌なものだ。


 こうして現在では冒険者になる資格があるか、ではなく、大会で優勝出来るか、に比重が置かれるようになる。


 今大会も冒険者志願の為に参加したのはリコネルだけであった。尤も、リコネルは女でありながら、男並みの実力も備わっていた。


 そんなリコネルに村長は期待をしていた。女だと馬鹿にしていた阿呆共をギャフンと言わせてやれと。


そんな大会が始まる。



 ソジャット王国冒険者組合から今年の視察団がやって来た。


 このあたりではかなり珍しいウェストゥ大陸型のカラベル船でフィヨルドに入って来た為、非常に目立った。

 何しろ20m程の長さとは言え、ロングボートよりも喫水線が高く、マストを三本も持っていたのだから。


「今年はどんな優秀な冒険者が生まれるか、とても楽しみだ」


「私もです組合長。っと船の固定が出来たようです。下船しましょう」


 視察団はソジャット王国の冒険者組合の組合長とその部下の職員、護衛の少数の冒険者で構成されていた。


 冒険者組合の視察団は悠々と船から降りて出迎えたヴァイキングと軽く挨拶を交わした。


 組合長は濃い口髭、広い額、太い眉、清潔な短髪を持った中年の男性であった。かつては冒険者であっただけに引き締まった筋肉質な大きな身体を持っており、力量と経験はヴァイキングたちに勝るとも劣らなかった。


ヴァイキングたちが唯一真の戦士だと認めている異国の民でもある。


 組合長は誰に対しても親切に明るく受け答えしてくれたが、船内でもラウト族の村に着いても一人でいる時は眉間に皺を寄せ何かを深刻に悩んでいるようであった。


 同伴した組合の職員はそんな組合長を不思議に思うのだった。こんなにも素晴らしい祭典に来たというのに。


 護衛の冒険者は比較的若い青年で構成されていた。彼らは名目上は護衛任務の為だが、実際はヴァイキングの戦いぶりを見学する為に来ていた。


 遅れて来た冒険者組合の視察団もヴァイキングの族長たちとの話を済ませ、平原にて組合のテントを設営した。他のヴァイキング同様全島集会(アルシング)の間はそのテントで生活した。




 全島集会アルシング2日目、1日目は準備で終わってしまったので実質今日からが本番である。


 2日目は平原に設営された会場で各ヴァイキング部族たちの運動会だ。


 ハンマー投げや槍投げ、射的など様々な競技が行われ、それぞれの技量を競い、褒め称えた。



 そして2日目が終わった。

 いよいよ明日、3日目が視察団にとっての本番だ。ヴァイキングの冒険者志願のための決闘大会。視察団はこの為に来た。


 勝者の技量を直接見てその能力を判定、資料作成、そして本国への宣伝。大事な仕事だ。明日から忙しくなる。


 護衛でついてきた本職冒険者はヴァイキングの技術を目で見て奪い、自分の技術とする為に努力するのだった。


 組合長は何度も視察に来ていただけに今年はどんな優秀な冒険者が生まれるのかとワクワクしていた。心を蝕むこの不安を解消してくれるような、そんな素晴らしい冒険者を強く期待していた。



 決闘大会に出場するヴァイキングは最終調整へとはいっていた。



【ソジャット王国冒険者組合ヴィーンナゴレ砦支部局長ラッセルより本部組合長ウィリアムへ報告】


 先日、魔物の討伐難易度が更新され、魔物の危険性が上がってきていることが改めて人々に報せられた。


 そこで、私はソジャット王国に冒険者組合が出来てからの24年間の魔物の討伐、生態調査などの膨大な資料を照らし合わせた。その結果、この傾向は年々加速していると判明した。


 調査の結果が以下の通りである。


・ゴブリン、オーク、複眼竜(正確には竜に分類されていない)など約12種類が過去24年の間に討伐難易度が1ランク上昇。Aランク以上の魔物の増加。(12種の種類と討伐難易度は同封の資料1に掲載、Aランク以上の魔物リストは資料2に掲載)


・一部の竜種の討伐難易度が1ランク及び2ランク降下。又、10年以内で野生のドラゴンの個体数半減。(詳しい種類と討伐難易度は同封の資料3に掲載)


・プライミーバル種の魔物の目撃情報の減少。(竜種と違いそれといった証拠は無いがおそらく個体数は減少していると考えられる)


・未だ正体不明のシャドー化現象の目撃情報や被害情報の回数が5年前から昨年にかけて14倍に増加、討伐依頼回数も3倍に上昇。


・冒険者の死傷者数が昨年から今年にかけて既に倍に増加。


 竜種や太古のプライミーバル種は衰えているものの、全体的にノルドの人々を脅かす脅威は大きくなっている。より強力な魔物が減少していることで"身近な危険"が大きくなっている為だ。


 さらに魔物は年々強力になっており、その上加速的に強くなっている。危険性が増し、今では冒険者不足が顕著に表れている。これ以上この事実を見逃せば、人類への脅威は冗談では済まされなくなる。


 一度王国軍と共同でかつてないほどの大規模な討伐隊を編成し、魔物の頭数を減らすことを進言する。


 ことは深刻である。賢明な判断と素早い返答を求む。








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