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原 神太郎 短編集  作者: 原 神太郎
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バイクと月

僕はこの一夜を迎えるまで、バイクに乗ったことがない。いや、正式には乗る機会がなかっただけだ。しかし、僕はたった一夜で、このバイクというマシーンに魅入られた。

夜に出かけるため、電車は通っておらず、バイクを運転する知人の後ろに乗るはめになった。知人は乗って5分もしない間に、明らかな速度違反の速度を出していた。自動車免許を持っているからこそ分かるが、明らかに公道で80km/hを超えている。僕は最初、死を覚悟すらした。しかし、乗っている間、僕はこのバイクというマシーンの凄みに気づいた。車と車の間を越え、路地裏の細い道すらも通り抜けた。そして、何より僕が生きていることを体感した。車と違い、スピードを早く出せば出すほど、体に負担がかかる。同時にその風という負担は、僕の心を高揚させた。

台風の日に僕が外に出る時と同じである。僕は幼少の頃、台風の日に外に行ったことがある。大抵の人間はそれを危険な行為と考える。しかし、僕はその時、異様な興奮を覚えてしまった。この風は生きている。そして、その風を感じられる僕もまた生きている。幼いながらも、その様に僕は感じた。そのため、台風の日に出かけることが今でもある。僕にとって、風は自らの生を感じ取れる手段の一つであった。その風をこのマシーンは感じさせてくれる。僕にとって、バイクは生を感じさせる媒体と成った。その一夜の体験は、今の僕を構成する一部となった。

今、僕は、生を感じている。

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