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原 神太郎 短編集  作者: 原 神太郎
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雨と唐傘

思う気ままに書こうと思います。コチラは普段感じた事を書きます。フィクションもあれば、ノンフィクションもあります。どれがフィクションでどれがノンフィクションか、一話の中にあるどこがフィクションでどこがノンフィクションかも、考えながら読んでいただけると幸いです。

本日も雨。先日も雨。明日も雨。私は梅雨が嫌いである。私にとって、雨は天敵以外何者でもない。しかし、それは先程までの話だ。

私は傘置き場にて私の傘がないことを確認した。誰が言ったのであろう。日本は世界一治安が良いと。日本人はモラルを重んじると。皮肉めいたことをブツブツと言いながら、私は雨の中を歩く。途中、私の鼻に、とても甘味な匂いが漂った。私は反射的に、匂いの方向を振り返ってしまった。そこには、女が立っていた。それも着物姿である。手には唐傘を持っている。私はその女から目が離せなかった。大都会東京には、あまりにも奇妙である。しかし、私には数多くの真っ赤な薔薇やアネモネの中にたった一輪だけ咲くワスレナグサのように思えた。淡く、とても寂しいが、美しい。私は一目惚れをしてしまったのだ。しかし、彼女はどこかのお嬢様であろう。現代の東京で着物を着ることの出来る家庭なんて、裕福な生まれの者以外何者でもない。対して私は、貧乏学生である。それも、五流の。そう思うと、何だかどうでも良くなってしまった。しかし、私の気持ちは既に冷静ではなかった。

三日前に引き続き本日も雨。相変わらず私は、傘置き場に私の傘がないことを確認する。なぜ私の傘だけ盗まれるのか、そう考えながら、また私は雨の中を歩く。私の鼻に甘味な匂いが漂った。私は驚いた。振り向き彼女を見た。先日の彼女である。私の心はとても踊った。彼女を見ることが出来ただけで、私は歓喜する。雨の日が来て、私の傘が盗まれる度に、彼女を見ることが出来た。

しかし、私の傘が盗まれなくなった。これはとても良い事のはずである。しかし、私にとっては不運な事であった。私が傘を盗まれなくなった日から、彼女に会うことが出来なくなってしまった。学校、家、いつも立ち寄る店においても、私は彼女の事だけを考えていた。私は彼女のこと以外考えられなくなってしまっていた。彼女が愛おしい。せめて、私のこの心の乱れを正常に戻すために、いっその事、振られて吹っ切れてしまいたい、と思う程である。

ある日再び傘が盗まれた。私は辺りを見渡した。仮に本日、彼女がこの場にいるならば、私の思いも伝えよう。彼女には迷惑なことかもしれない。しかし、私は思うもう自分の気持ちを抑えるだけで精一杯であった。

私の鼻に甘味な匂いが漂った。私はその方向へ走り出していた。

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