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ゲートの向こうへ

人は時々、

「もう限界だ」と言いながらも、

笑って働き、

期待に応え、

壊れそうな心を隠しながら生きている。


誰かに認められるほど、

責任は重くなっていく。


“できる人”ほど、

弱音を吐けなくなる。


これは、

そんなひとりの男が、

“終わり”ではなく、

“その先”へ向かう物語。


もし今、

あなたが誰にも言えない苦しみを抱えているなら。


この扉は、

あなたのためにも開いているのかもしれない。

苦しみは本当に必要?そんなことを考えながら書きました。

最後まで読んでいただけると幸いです。

カランカラン、と鈍い音が鳴った。


薄暗い店内の奥から、ひとつの影がゆっくりと近づいてくる。


「お待ちしておりました、石守様。」


黒岩の姿が灯りの下に現れた。


「あなたが……電話をくれた、黒岩さんですか?」


「はい。

 受話器越しに、少し重たい空気を感じまして。

 もし差し支えなければ、何があったのかお聞かせ願えますか」


成皇は言葉に詰まった。

本当に信用していいのか。

そう思った瞬間、


「大丈夫ですよ」


黒岩は穏やかに言った。


「……あなたほど、無理を重ねてきた方も珍しい。

 よほど、頑張ってこられたのでしょう」


その言葉を聞いた瞬間、

目頭が熱くなり、堪えていたものが静かに崩れた。


(……よく、やってきたよな)


気づけば、涙が一筋、頬を伝っていた。


(この人なら……分かってくれるかもしれない)


そう思うと、成皇は口を開いた。


「会社では、エースと呼ばれていました。

 期待に応えたくて、必死でした。

 でも……マネジメントがうまくいかなくなって……」


言葉が途切れ、視界が滲む。


「上司には責められ、取引先にも……」


涙が止まらなかった。


「……あなたは、本当によく頑張ってきましたね」


黒岩の声は、深く、静かだった。


「ずっと思っていました。

 責任の重さと、自分の心が……どうしても一致しなくて。

 それが……辛かった」


子どもに戻ったかのように、嗚咽が漏れる。


「もし、あなたが望むなら」


黒岩は一歩、前に出た。


「あなたの経験を、買いましょう。

 その経験を終えた先の世界に、興味はありませんか?」


「……どういう意味ですか?」


「未来へ行くのです。

 ――アフターラインゲートへ」


その瞬間、

店の奥にあった扉が、淡い光を帯びて開き始めた。


成皇は半信半疑だった。

だが、もしこの苦しみを置いていけるなら――


そう思い、扉に手を伸ばす。


光の向こうに、人影があった。


月城莉音だった。


「お迎えに参りました。

 ……行きましょうか」


成皇は一歩、光の中へ踏み出した。

人は、

傷ついた経験を「失敗」と呼ぶ。


けれど本当にそうなのだろうか?

彼らの物語を見守ってください。

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