最弱から最強に至った帰還者
少し余裕ができたので新作開始しましたが、まだまだ不慣れなのでご迷惑をおかけすると思います。
今回は大好きなスクエニへの応募作品です。
無数の稲光が飛び交う、暗雲に覆われた空からは数千の稲妻が大地を襲い、大岩が爆風で宙に巻き上げられ、全てを薙ぎ倒す勢いの暴風が吹き荒れる大地の上で、その二人は戦っていた。
一人は藍色の髪と深い紺色の瞳を持った十五歳ほどの少年で、白銀の部分鎧でその身を守り、両手に刃渡り四十センチほどの片刃の短刀を持ち、宙を駆けるように縦横無尽な攻撃を加えていた。
もう一人は白銀の長い髪をした深い紅色の瞳を持った二十代後半の女性のように見えたが、ただその額には長さ二十センチほどの二本の角が生え、犬歯はまるで獰猛な獣のように尖っていた。
彼女は大岩の上にその身を置いて、身長を二メートルを超える長さの鎗をやすやすと振り回し、少年を捉えようと、その先端から雷や大火球、氷槍などの魔法を次々と発動させていたが、その魔法は少年に当たる寸前で、まるで吸い込まれるように消滅していた。
「それって、ズルくない?魔素吸収する防具って、どう考えても反則だよね。」
鎗を振り回しながらも、落ち着いた口調で話す彼女の声は、この戦闘の場面には相応しくないと思えたが、
「仕方ないじゃん、魔素を吸収するのは僕の能力で、この防具はそれをアシストしてるだけだから、それをズルだ。防具が悪いって言われても納得できないよ。」
その彼女と普通に会話を続ける少年の感覚も少しズレていると言えた。
少年の振るった刃を鎗で弾き、背中に四つの羽を生やして自らも宙へと駆けた彼女が、その膨大な魔力の全てを身体強化へと注ぐと、その光輝く姿はまるで地球の大天使のように見えた。
「頭に輪っかがあったら、まるでミカエルみたいだね。」
二人の空中での乱戦で、地上には破壊の嵐が巻き起こされていたが、二人はごくごく普通に会話を続けていた。
「はぁっ?ミカエル?それって何者なの?」
「僕が暮らしていた世界の神様の使いのトップの人だよ。会ったことはないけど、絵で見たことがある。」
「どうせ腐れ外道の神の使いなんて、こちらから願い下げだね。」
「神様に会ったことがあるの?」
「…昔ね…」
その少年の質問に少し思う所があったのか、彼女のしんみりとした感情を感じながらも、少年は休むことなく刃を振り続けていたが、上空で戦闘が続けられている下の大地では地面が大きくひび割れ、至る所からマグマが噴き出し、そこから流れ出た溶岩流が周辺に広がっていくのが確認できた。それを視界に捉えた少年は覚悟を決めたように彼女に告げた。
「キリがないから、これで最後にするね。この攻撃が届かなかったら僕の負けで良いよ。勝負に勝ってもこの世界が消滅してしまったら、何の為に戦ったのか判らなくなるしね。」
少年が己の内包していた魔力全てを二本の刀に注ぎ込むと、それはまるで小さな太陽のような光を発し始めた。そして、少年はその二本の刀の先を彼女に向け、その身体ごと全速で特攻した。
「…なんで?」
全く無防備なまま、何の抵抗もせずにその少年の刃を迎えいれ、心の臓あたりを貫かれた彼女を見て、思わず発した少年の声に、口から血を噴き出しながらも、彼女は鎗を消し、その両手で少年を抱きしめていた。
「私はもう疲れ果てていたのだよ…私なりにこの世界を護ろうと神に反旗を翻し戦い続けていたが、その思いとは裏腹に世界はどんどん望む物とはかけ離れていった…それでも慕う者達を無下にすることはできず生き続けてきたがそれも限界にきていた…そして、このまま壊れるしかないなと考えていた時にお前が来た…お前の生き様はまるで昔の私を見ているようだった。お前に殺されるなら仕方ないと思う…」
そんな彼女の言葉に少年は涙を流していた。既に何度も何度も闘いを繰り返し、彼女の人となりは理解していたと思っていたが、彼女とはもっと深い所で繋がっていたんだと理解していた。
「…そんなこと言うなよ…いつものように皮肉たっぷりに叱ってくれよ。」
そんな少年の言葉に口元を緩め、微笑むように彼女は応えた。
「…私はもうすぐ消える…が、この私の魔素や神素をあの腐れ外道の神に返すつもりはサラサラない。お前に受け取ってもらいたい…」
その彼女の言葉に、少年はコクコクと首を縦に振った。
「ありがとう…」
そう言うと彼女の身体は、徐々に白銀の光へと変わり、少年の身体に吸い込まれて消えていった。
先ほどまで抱きついていた者が消え去り、行き場を失った両手を呆然と眺める少年の上空では、いつしか暗雲は消え去り、空には真っ青な空が広がっていた。先ほどまで荒れ狂っていた荒れ果てた大地は、それまでの姿が嘘のように静まり返り、暖かな陽光が降り注いでいた。
いかがでしょうか?なんとか読み物になっていたでしょうか?できれば評価など頂けると有り難いです。




