27話「第一部・完…光輪の下に降臨」
いよいよ、キツネビト達の神である地下の巨大メタルフォックスとの死闘も決着。
5人が新たに手にした力、切り札とは?
五体のホーリーアーマーが全身を輝かせ宙に浮く。
それらは水平姿勢を保ち上昇、それぞれ頭を中心に向けて並ぶ。
見ていたキツネビト(通常の人の姿に戻っている)がこの光景を見て一言洩らす。
「こ、こりゃ一体…?」
田村からもう一つ指示が飛ぶ。
『続いてこう叫んだ早理華、ファイブ・ワン・ミッション!』
【ふ…ファイブ・ワン・ミッション!】
少し戸惑いながら叫ぶ早理華。
すると、グルグル回転しながら五体は頭部から一つに合体、五本の棒が1点で繋がった回転体のようになった。
【ファイブ・ワン・ミッション…開始…】
各機体から声が響く。
回転が早くなり、回転が収まる頃にはそれは一体の巨大人型へと変形完了していた。
その人型には背中に翼が生え、ヘルメット?の下から長い金髪を風にたなびかせていた。
そして顔面のカバーが開くと美少女顔が現れた。
どことなく早理華の顔に似ていた。
「おおお…」「な、何と、美しい…」
その姿を見たキツネビト達は口々にそう言っては手を胸の前に合わせ、跪いた。
『見たか!これこ五体合体ホーリーアーマーこと、ホーリーエンジェルだ!』
田村が自慢げに叫んだ。
「ホーリー、エンジェル…」
早理華はコクピットのメインモニターに映るその姿を見ながら呟いた。
『早理華、ホーリーエンジェルの操縦担当はアンタのそのコクピットで行う、アンタがホーリーエンジェルのメインパイロットだ!』
「私が…メインパイロット…」
早理華の顔が引き締まった。
【ホーリーエンジェル…降誕します。】
ズウウウン…。
静かにホーリーアーマーは地上へ降り立った。
「何で早理華ちゃんが?」
『今のホーリーアーマーは基本形態、基本形態はタクティカルシスターズである早理華のホーリーアーマーが核となる、ただそれだけの理由だ。』
「基本形態って事は他にも形態があるのかい?」
『まだ知る必要はない、今回は訓練も無しの緊急事態だから基本形態を使うだけで精一杯だ。』
「田村先輩〜、俺らのホーリーアーマーはタクティカルシスターズのオマケって事っすかあ〜?」
『まだ説明する必要すらない。』
「取り敢えず早理華以外のシスターズや俺達男連中は何すりゃいいんだ?」
『唯一もっともな質問をありがとう剣護。』
「いやいや、…で、答えは?」
『必要になればその都度教える、以上。』
田村は面倒臭くなったらしく、ここで通信を切った。
「「「「「え…?」」」」
呆気に取られた5人。
その隙にドスドスと近寄って来た鎮守の神呼ばわりされていた巨大メタルフォックス。
全高100メートルの剛腕が天に伸び、そして鋭い爪が合体したとはいえまだ全高50メートルという半身程度な体躯のホーリーエンジェルへと振り下ろされた!
「ふん、そんな攻撃がこのホーリーエンジェルに効くとでも…」
早理華がそう言い切る前にホーリーエンジェルの頭頂部に爪が炸裂する。
ガアンッ!!!
ガガガ…!
ダメージによる衝撃でホーリーエンジェル内部の全てのコクピットが激しく揺らされた。
「「「「「あわああああ〜っ?!」」」」」
続いて巨大メタルフォックスからの二撃目。
ガツウン!!
ズガガガ〜ッ!!!
激しくふっ飛ばされ地面を削るホーリーエンジェルの機体。
巨木の群生がクッションとなり100メートル程度の後退でそれは収まった。
「な、何やってんたよ早理華〜?!」
聖姫が不満の声を挙げる。
「な、何故避けないの早理華ちゃ〜ん?!」
涙目で頭を押さえる久里亜。
ソレに対して早理華はこう返した。
「…あれ〜?合体して強くなったんなら腕力任せな通常攻撃くらい何ともないんじゃ…?」
【…機体全体ノーダメージ。】
【戦闘続行可能、ただしダメージを受け続ければ装甲への金属疲労が発生するため全て回避されたし。】
「おい、機体からクレーム来てるぞ早理華?」
「クレームって言わないでください剣護さん!まるで私が仕事でミスしたみたいじゃありませんか?!」
「いや、ミスだろ、どー考えてもさ。」
「ミスじゃありません、ちょっと勘違いしてただけです!」
グォっ!!
今度は巨大メタルフォックスの口から炎が放射された。
「今度はちゃんと避けます!」
バサッ!
ホーリーエンジェルは一瞬で上空へ飛翔した。
「ぐえっ?、いきなり飛ぶなっ!」
銃吾は強烈な縦Gに襲われ吐き気を催した。
「隙あり!」
ホーリーエンジェルが腕を眼下の巨大メタルフォックスへと向けた。
…………。
シーン…。
「あれ?」
何も起きないホーリーエンジェルの両手に早理華はキョトンとした。
「おい、何か攻撃するんじゃなかったのか?」
剣護もこの展開にはさすがにイラッと来たのか少し言葉にトゲが感じられる。
「いやあ〜、幾ら操縦桿のトリガー引いてもウンとスンとも…(笑)。」
早理華は冷や汗を掻きながら苦笑した。
そうこうしているうちに下から巨大メタルフォックスが今度は電光を発射。
「させない!」
久里亜が叫んだ。
無意識なのか、彼女のイメージ通りにホーリーエンジェルの眼前にシールドが発生しこれを防ぐ。
しつこく何発も電光による攻撃を受けたが、ホーリーエンジェルのシールドはこれを完璧に防いだ。
そこへ田村がまた脳天気そうに通信してきた。
『…あ、そうだ、いい忘れてた。』
『ホーリーアーマーが手ぶらだったようにホーリーエンジェルも手ぶらで武器付いてないからねー。』
これには早理華がキレた。
「そんな肝心な事早く言ってくださいっ!てかどうやって戦うんですか?!」
『…コホン。』
『勿論、ホーリーエンジェル本来の能力で戦うんだよ。』
「本来の能力?それは何ですか田村さん!」
久里亜が本来の能力、というワードに食い付いた。
『よく聞きなさい、ホーリーエンジェルは5人の生体プラズマを触媒に大気中のエネルギーを利用して物質を操ったり超物理現象すら引き起こせるんだ。』
「ちょっ…何か話しが大袈裟というか物騒なんだけど?」
聖姫は信じられないと感じた。
確かに何らかのエネルギー発振器くらいは装備していて、それを攻撃に転用…なんて予想くらいは聖姫だってしていただろう。
それに。
「物質操るとか超物理現象発生とか言われても、何をどうするかなんて想像付きませんよ〜。」
当の早理華がどのようにそれを生かすのか考えあぐねていた。
『ふ〜んそっかあ、そうだなあ…』
『…よし!ならここはエンジェルの名の通り天使らしい技とかでも使うんだね?』
「天使らしい…?」
早理華は天使のイメージを脳裏に浮かべた。
すると。
カアッ。
「おい、ホーリーエンジェルの頭上に輪っかが現れてるみたいだぞ?」
剣護の言う通り、ディスプレイ上のホーリーエンジェル頭上に光輪が発生していた。
「ホントだ。これがホントの天使の輪ってヤツかね?」
聖姫が冗談ぽく言った。
「…それです、聖姫さん!」
早理華は閃いた。
両手を頭上の光輪に翳すホーリーエンジェル。
すると光輪は両手へと移動した。
左手を離すと右手に移動した光輪。
しかし頭上にはまた新たな光輪が出現。
左手を再び頭上に翳すと、その新しい光輪もまた左手へと移動した。
その間、両手をシールド発生に使えなかった為かホーリーエンジェル前方のシールドは消えていた。
その機を逃さず巨大メタルフォックスが有りったけの電光を口内で収束させ、一気に発射した!
「このっ…?!」
早理華はホーリーエンジェルの両手光輪をその電光めがけて突き出した。
ズバッ!!
何と光輪は巨大メタルフォックス渾身の一撃を左右に切り裂く!
ズバババン!
電光は両断され消滅する!
「鉄槌を下します…!」
両手をふりあげるホーリーエンジェル。
「やああーっ!!」
早理華の気合いと共にホーリーエンジェルは両腕を振り下ろし、光輪を巨大メタルフォックスめがけて投げつけた。
フオオオオン…!
光輪は空気を切り裂き巨大メタルフォックスへと迫る。
それを巨大メタルフォックスは前足の爪に電光を纏わせ迎撃しようとする。
【エンジェル・クロス!】
早理華が名付けたこの技。
光輪は文字通りX字に巨大メタルフォックスを切り裂き、四つに分けた。
巨大メタルフォックスを切り分けて帰って来た光輪をX字にクロスした両腕で受け取り、背中を向けたホーリーエンジェルはスパッと左右に振り下ろす。
その背後でバチバチ火花を飛び散らせながら崩れ落ちる巨大メタルフォックスの残骸。
そして爆散。
ゴオオオオオン………!!!
辺りは火の海と化した。
「いけない…!」
久里亜がホーリーエンジェルの光輪を天に翳す。
すると光輪はブルーに染まった。
途端に雷鳴が轟き雨雲が発生、豪雨が降り注いだ。
森の火災は一瞬にして鎮火する。
光輪が消えて、雨は止んだ。
「奇跡だ…」
「天使…いや、神の御使い様…」
「あれこそ天の神が遣わされた方達だ!」
ワーワー、とキツネビト達から大歓声が上がる。
「…なあ、もしかして、これ…」
銃吾が嫌な予感とばかりに四人に話しかける。
「ああ…私ら、祭り上げられてないかい?」
聖姫も同感だった。
「剣護君?こういう場合、昔の人は、言いました。」
「久里亜さん、もしかしてそれって」
コホン、と咳払いしながら早理華がその後を続けた。
「三十六計逃げるにしかず、ですね?」
ヒュウウウン!!
ホーリーエンジェルは空の彼方へ消え去った。
………………。
結局、5人は翌日から学園に姿を現すことは無かった。
5人はあの里?であまりにも有名になり過ぎたのだ。
用務員先輩の田村もちゃっかりDDS本部に帰還していた。
「えー、つうわけで挨拶が遅れたが、」
「私はここの研究開発責任者だから、みんなそのつもりで。」
「そ、そんな偉かったんすかあ先輩…?」
「なんだ?私がお偉方と分かった途端口説く気が失せたか銃吾。」
「ぜ、全然そんな事ないっす!」
「そうか、私はめげないヤツも嫌いじゃないぞ?」
「う、嬉しいっす!」
どうやら銃吾に春が訪れたようだ。
彼は年上好きなのだろうか?
二人は和気あいあいと本部の会議室から出て行った。
「…で、結局あの百合生徒は何だったんでしょう?」
「ただの百合好きだったんじゃない?私らに変な催眠かけてくっつけようとしてただけだったようだね結局。」
早理華と聖姫はいつの間にか耳元に催眠音波のイヤホンをつけられていた。
ソレが有効なエリアで電波を拾うとそれぞれ②催眠がかかる仕掛けだったらしい。
本部の探知器でそれが判明した。
「久里亜さんの方は神父とかに変な事されなかったのか?」
「ん?別に?」
「それより変な事って何?私の事心配してたのかな〜剣護君(笑)♪」
「そ、そりゃ仲間の心配くらいするって!」
「ホントに〜?それだけなのかな〜?」
グイグイ質問する久里亜。
これがイチャイチャしてるように見えたのか聖姫と早理華は面白く無かったようだ。
「それより久里亜さんは今回ちょっと反省してもらわなければいけませんよね?」
「そーそー、チームワーク乱したんだから特訓してもらわないとな!」
聖姫と早理華はガッシリと久里亜の両脇を掴んだ。
「ちょ、ちょっと二人共何するの〜?!」
「さー今日はとことん私達に付き合って貰いますよ久里亜さん?!」
「そーういう事、今夜は寝かさないからなー(笑)。」
「ホントに特訓なの?変な事しないでしょうね?!」
怯える久里亜に対し、二人はニヤニヤするだけだった。
「あ〜ん、助けて〜剣護君〜(汗)」
チ〜ン♪
「ご愁傷さまです。」
剣護は手を合わせてソレを見送るのだった。
「…さて。」
「あのホーリーアーマー、そしてホーリーエンジェル。」
「それにここの贅沢過ぎる程に整った施設。」
「ホントにDDSってどんな組織なんだ?」
「そもそも早理華達は明らかに普通の人間とは違う。」
「メタルファントムと錠剤…それに関係すると思える何らかの団体が存在するようだが…」
「一体、この世界で何が起きてるんだ…?」
剣護は沢山の謎に身震いした。
何か大きな渦に巻き込まれている事に気が付いたのだ。
だが今はまだ何もわからない。
「やるしかない、よな。」
剣護は得物を手にして会議室を出た。
そして決意を新たにした。
タクティカルシスターズである彼女らを護り抜くという決意を固めたのだ。
(俺は必ずオマエらを護る。)
(信じてますよ、剣護さん♪)
お気楽そうにそう答える早理華が彼の脳裏に浮かび、剣護は口元を緩めるのだった。
………第一部・完………
絶大な威力を発揮したホーリーエンジェル。
しかしまだまだその力は未知数。
一方で学園での任務から解放された5人。
次に彼らを待つのは何か。
そして暗躍する敵対的存在とは?
様々な謎を孕んだストーリーですが、ここで第一部完、とさせていただきます。
ご愛読ありがとうございました、第二部以降の連載再開についてはまだ全くの白紙です。
しばらくは一般作の別作品連載に注力させていただきます、ご了承ください。




