進行
その後大隊はテントを設営て一夜休息を取り、負傷兵を後送した後また行軍を開始した。
クレマン達は三つの中隊で構成された大隊に所属している。クレマン達の中隊は第三中隊だ。指揮系統は各中隊に中隊長、それを束ねる大隊長という構成だ。
クレマン達の大隊はエンディカを離れ何日か行軍していた。目的はゾンゼンの国境を守っている砦の攻略だ。
先日の戦闘はエンディカの動きを察知したゾンゼンの迎撃部隊との衝突だ。
クレマン達は先日の部隊の大半が逃げおおせたことが気になっていた。砦の防衛に加わっている可能性があると考えたからだ。
「エルドレッド。あの部隊は砦の防衛隊と合流していると思うか?」
「ああ、やっかいだな。あの部隊と俺達の隊の戦力はだいたい同じだった。俺達は砦の防衛部隊分不利だ。」
「クソッ!あの時もっと数を減らせたら…」
「落ち着け、一応大隊長は本国に応援を要請しに伝令を送ったはずだ。それに今さら悔やんでももう遅そうだ。あれを見ろ」
エルドレッドが前方に顎をしゃくる。
クレマンがエルドレッドの指した方向を見るのと誰かが叫ぶのが同時だった。
「砦だー!!」
その声で全ての兵士に緊張が走る。
「第一中隊は拠点の構築!第二、第三中隊は前方へ展開し、敵の攻撃に備えろ!!」
「第一中隊!拠点設営始め!」
「第二中隊前へ!」
「第三中隊前へ!」
大隊長の指示を各中隊長が復唱する。
クレマン達第三中隊は第二中隊と並び敵の攻撃を警戒する。
ゾンゼン側も気付いているようで砦の門が閉じられている。国境の守備ましてやエンディカのある方向を任されているだけあってその砦は大きかった。砦の城壁の上には弓を構えた兵士がずらりと並んでいる。
クレマン達が砦を睨んでいる間第一中隊が後ろで木を切り倒し、指揮所テントと食料などの物資を積んだ荷馬車を中心に置いて周囲を囲む様に防衛拠点を作っている。
「兵糧攻めするんなら早くあの砦の後ろに回ったほうが良くないか?」
焦った様子でクレマンがエルドレッドに問い掛ける。
「無駄だ。昨日戦ったのを忘れたのか。あの時の部隊が知らせてとっくに敵の伝令は出ているよ。その証拠に門は俺達が来る前に閉まってた」
「って言うことは時間との勝負か」
「ゾンゼンとも戦うけどな。とにかく増援なんかが来たらただでさえ分が悪いのにさらに戦力差がつく。」
拠点の建設が着々と進み、手の空いた兵が攻城兵器の組み立てに取り掛かる。
「俺達か第二、どっちか応援に出なくていいのかよ?」
「いや、大隊長の命令は各中隊長の理解を得た上で出されている。俺達は指示に従っていればいい。
それに第一中隊の奴らずいぶんいい腕をしている。」
エルドレッドは第一中隊の作業の早さに感心していた。彼らは相当訓練されているのだろう。
第一中隊が作っている攻城兵器は二種類。
一つは破城槌四つの車輪が付いた移動できる小さな小屋の様なもので、中には丸太が一つ吊されている。この小屋を城門の前まで押して行き、あたかも神社の鐘を鳴らす様に丸太で門を叩き破るのだ。小屋の屋根は弓を防ぐためのものだ。
もう一つは投石機と言ってその名の通り石などを遠くへ飛ばす兵器だ。その構造は簡単に言えばシーソーの様なもので片方に箱の様なものを作って重りを入れて、上に上がったもう片方を手動で下に引っ張って固定する。固定を解くと今まで下に傾いていた方が勢い良く上に振り上がるという仕組みだ。物にもよるが石を投げる部分はスプーンの様になっているのではなく。先にロープが付いていて一端は結び付けているが、もう一端を引っ掛けるだけにすることで一番飛びやすいときに物を離すことができる様になっている。
攻城兵器は他にもあるが今回エンディカ側が使うのはこの二つだけだ。
やがて投石機二台が完成すると攻撃が始まった。
「放てー!!」
この度、ヴァルハラの戦士達をお読み頂きありがとうございます。
この小説における改善点を募集しています。私は文章を書くのに慣れていないため誤字や文章並びがおかしい部分などがありましたらコメントを残していただけると幸いです。
これからもがんばります!