戦死者
戦闘が終わり、多くの男達が駆け寄って来た。
すると彼らはクレマン達を囲んで戦果を称え、騒ぎ出した。
「見たぜ!凄いなあんたら!」
「奴らしっぽ巻いて逃げてったぞ。ハッハッハ!」
身動きも取れず、クレマン達が戸惑っていると中隊長が現れて指示を下した。
「何をしている。休んでいる暇はないぞ!総員、死体の処理と身元確認の作業にかかれ!」
中隊長の指示で周りに集まって来ていた男達がしぶしぶといったふうに作業をしに散って行く。
クレマン達も遺体の処理に向かう。何よりも知り合いの安否が気になっていた彼らは早急に作業を終わらせたかった。
別々に死体の処理にあたっていたクレマンとエルドレッドはしばらくして作業が終わると合流した。彼らは二手に別れて死体の処理をしつつ、生き延びて同じく死体処理にあたっている兵士に見知った顔が無いか探していたのだ。もちろん自分が運ぶ血だらけの死体の顔も覗き込んだが、とてもいい気分ではなかった。
「どうだった?」
エルドレッドが問い掛けるとクレマンは暗い顔をして首を振った。
「だめだ。ルードルフもヴァレリーも見当たらない」「こっちもだ…」
「…」
「じきに点呼だ。早めに中隊長の所まで行こう。もしかしたらそこで会えるかも知れない」
「ああ…」
エルドレッドの言葉にクレマンは最悪な結果を想像しながら相槌をうった。
クレマン達は作業をしている時に聞かされたが今日はここで野営することに決まっていた。他の部隊がテントの建設をあらかた終えており、すでに各隊のテントの位置が決まっている。
自分達の所属する中隊のテントの前に点呼の用意をする中隊長が居て、すでに何人か列を作っている。クレマン達も並んでいる兵士の顔を確認した後、列に加わる。
この点呼は中隊長の前に一列に並んだ兵士が順に自分の名前を言っていき中隊長が隊員のリストに印しを付けていくというやり方だ。これで印しが付けられなかった兵士は戦死となる。
クレマン達は自分の点呼が終わると列の中に知り合いがいないか探し始めたが、結局最後まで見知った顔が現れることはなかった。
嫌な予想は当たりつつあった。青ざめるクレマンにエルドレッドはまだだと声をかける。
「野戦病院へ行こう。あそこでまだ生きているかも知れない」
クレマンはエルドレッドに言われるまま付いて行った。
野戦病院に着くと血生臭い臭いが漂って来ると同時に痛みに苦しむ痛々しい悲鳴が聞こえて来た。テントがいくつかあるが収容し切れず多くの兵が野ざらしにされている。
エルドレッドは適当な人物に声をかけた。
「ここにヴァレリーやルードルフという名前の奴は居るか?」
「俺は知らんがそこのテントに運ばれて来た連中の名簿が吊してある。まずそこから探せ」
そう言ってその兵士は野戦病院の一番大きいテントを指差した。
「ありがとう」
エルドレッドは礼を言ってテントの所に行き、中に入るとテントの骨組みにぶら下がっていた名簿を手に取ってヴァレリーとルードルフの名前を探し始める。クレマンはその間テント内を見回していた。
しばらく名簿を見ていたエルドレッドがついに名前を見つけて声を上げた。
「…ヴァレリー!」
「いたか!」
その声にクレマンも歓喜して名簿を見たが二人の喜びは長く続かなかった。なぜならヴァレリーの名前の横には『死亡』と書かれていたからだ。 結局ルードルフの名前も見つからず、クレマン達はその場を離れた。
しばらくの間クレマン達は沈黙していたがクレマンがその沈黙を破った。
「クソッ!クソクソクソッ!ゾンゼンめ!あの野蛮人め!」
クレマンが近くにある物に当たり散らし大声でゾンゼンへの恨みを叫んでいる。
その間、エルドレッドは拳を強く握り空高くにある雲をただひたすらに見上げていた。




