涙の真相、ドンデン返し 【34】
「い、いや、ただ単に、お兄ちゃんは飽くまでお兄ちゃんだと言う事が判っただけで……」
「いいですよ、別に」
そっぽを向いてしまったミアキスに、何とか誤解を解いてもらいたかったが、どうもそれは難しいようだ。
はあ__。
「それでは、お世話になりました」
宿を引き払う時、お兄ちゃんはカスモさん以下、バージェスの面々に丁重にお礼を述べた。
「いえいえ、こちらこそ、遠い所をわざわざお呼び立て致しまして__」
あの、カスモさん。わたしのヒガ聞きかも知れないんですけど、妙に言葉にトゲが有るんじゃないスか?
それから、お兄ちゃんはマニとも挨拶を交わした。
「それではマニ殿、いいえ、タルキア殿」
「恐れ入ります__」
マニは相変わらず恭しく頭を下げる。
「兄君様の御武運をお祈りいたしております」
「こちらこそ、恐縮です」
男同士は清々しく、言葉を交わしたのであった。
うー、泣かせるねえ。
「それではタルキア殿、これからも王女様の御傍に在って、色々支えとなって頂きたい」
「大役、謹んでお受けいたします」
かー、ホント、カッコ良いよ。
「それから__」
お兄ちゃんが、わたしの方にも何やら温かくもイジワルっぽい視線を走らせた。
「兄としても、妹を宜しくお願い致します」
な、な、な__
何言うのよ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんまで、そんな事__
「こればかりは、タルキア殿のお気持ち次第では御座いますが__」
ちょっと、そこまで言う事ないでしょうに。
マニは答えず、わざとらしくそのガッチリした肩を竦めておどけて見せた。
なに、アンタ、その態度。
男どもは、わたしの方を見詰めると声を揃えて笑い出した。
もう。
何なのよ、一体。