涙の真相、ドンデン返し 【26】
「それではお話致しましょう、わたくしのこれまでの生い立ちを__」
はいはい、お話して頂戴な。
「あれは__謀叛がおこる一年、いいえ、半年ほど前でしょうか。当時王家の重臣の一人であったベラノドン・タルボ・アーケオプテリクスは政情の悪化を危惧し、自分の末子を、伝手を通じて東洋に修行に出したのです。危険を避ける為に。あの短剣は、父が国王陛下より賜った物を、息子に託したのです」
あらら。
「本来ならば、国王陛下の重臣として息子のわたくしもまた、騒乱に身を投じねばならない所でした。しかし、臣下としての忠誠心よりも親としての情の方が先に立ったのでしょう、父はわたくしをサウロロフスの政変の戦火も及ばない東洋の寺院に預け、難を逃れたのです」
そうだよねえ、親だったらそうするでしょ。
「子供ながらに周りの空気は何となく感じ取っていたわたしですが、矢張り親元を離れて遠い異国に赴くのは不安でした。わたくしも、両親と供に戦うなどと言った所で所詮幼子の妄言、正直言って右も左も判らぬ異郷に行く事が怖かったのです。それに、家族が心配でもありましたし」
うんうん、そうだよねえ。
「そうして、不安と供に寺院で修養の日々を過ごしていたわたくしの元に、遂にサウロロフスに謀叛の火の手が上がったと言う噂が届いたのです」
……。
「只でさえ、全くの別世界に放り込まれて、貴族の子弟として何不自由の無い生活から、只の小坊主となって追い使われ、不安な日々を過ごしておりましたわたくしは、両親の身を案じて居ても立っても居られないという想いでした。そうして、寺院を抜け出してサウロロフスに戻るとむずかったわたくしは、師に諭されました」