涙の真相、ドンデン返し 【9】
それから、パキケファロさんが腕を振るった料理を囲んで歓迎会を催したのだが、その時にもお兄ちゃんはわたしの事を王女様と呼び続け、まるで壁を作っているかのように頑なな態度を取っていた。
「それでね、お兄ちゃん」
「はい、王女様」
「__」
わたしは一瞬言葉に詰まった。
そうだよね。
みんなの居る前だもんね。
兄弟として育ったんだから、他の人に比べて余計にわたしに対して、親しげにはできないんだよね。
プレッシャーに耐えきれず、思わず沈黙を飲み込んだわたしを、みんなが心配そうに見守っていた。
「テリジノ殿__」
カスモさんがやんわりと、こだわりを感じさせないよう配慮した声音で言った。
「レジェナ様は、余り王女様と呼ばれる事を好まれぬご様子で御座いますれば、できればテリジノ殿もお名前でお呼び申し上げて頂ければ……」
「左様で御座いましたか」
お兄ちゃんは丁寧に叩頭した。
「これはレジェナ様のお心も察する事適わず、何とも不肖の家臣で御座いました。どうか御無礼、ご容赦の程__」
お兄ちゃんは椅子から降りて、またまた身を低く頭を下げた。
わたしを取り囲む一場の空気は益々重苦しく、何よりわたし自身の心が締め付けられてゆくようだった。
どうして?
どうしてなの、お兄ちゃん。
わたしには何も分からなかった。
お兄ちゃん__テリジノが、何を考えているのか。
そんなわたしを、マニは傍から黙って見守ってくれていた。