鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【25】
「申し上げた筈ですよ、レジェナ様。わたくしはレジェナ様に御仕えする従者ですと」
「__」
「レジェナ様がわたくしを召し放ちになられるまではこの先、ずっとレジェナ様に着いて参りますと」
「マニ……」
今一度、マニは澄み切った微笑みを見せた。
「約束いたします、レジェナ様」
「……」
「必ず戻ってまいります、レジェナ様の元に」
「マニ__」
わたしは、それでも何だか吹っ切れない表情でマニを見詰めた。
「判った」
わたしの言葉に、マニは小さく頷いたような気配があった。
「わたし__信じるよ」
「レジェナ様」
「マニの事、信じる」
マニは再び無言で頭を下げた。
しかし、判らない。
何でマニは、今になって出て行ったんだろ。何か目的でも有るのかな?まさか、あいつ、ホントに私の事放っぽらかして……いや、そんな事無い。あのヘラヘラと面の皮の厚い男が、少々居心地が悪いってだけの理由で愛するレジェナ様から手を引くとは思えない……多分……きっと……。
ええい、迷ったって仕方が無い。信じるって決めたんだ、マニの事。
その日の昼食時、わたしはマニがちょっと出かけた事を宿屋のみんなに告げると、予想できた事だが宿屋のおかみさん、つまりカスモさんの奥さんと男性陣は一様に、特にスピノはほっとしたような気配を見せ、彼の事を案じてくれるのは悲しいかなミアキス一人であった。
「マニさん、どうなされたんですか?」
ミアキスがわたしに聞いて来た。
わたしにも判らない。
だけど信じてるよ。
マニ、あんたは必ずわたしの元に戻って来るって。
そして、五日後。
「只今戻りました、レジェナ様」
「マニ__」
何で?
どうしてあ奴のニヤケ面見ると、こんなに安心できるんだよ?
わたしに気が有るのはアイツの方で、わたしにはお兄ちゃんが居るってのに。
「どこ行ってたのよ、アンタ」
マニは黙っていつもの微笑を浮べたのだった。