鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【23】
そして、問題はマニであった。彼も正直言ってこの宿屋から見れば厄介者で、しかもわたしの従者と言う以外サウロロフスとは縁もゆかりも無い男だが、さりとても追い出す訳にも行かず扱いに苦労していた。一応宿屋の仕事は手伝うし、当人を前にした時には彼の独特の波動に当てられて親しみを感じてはいるが、矢張り現実的には居られると困るようである。見るからに異国風の出で立ちは、如何に宿場街とは言え人目に着くので世を憚って王家再興を目指す活動家としては有り難くないようなのだ。それはまあ良い、目立たない服装に着替えさせれば済む事なのだから。しかし、何故か宿の人達はマニの為の日常の普段着を用意しようとしない。その意図は大体判らないでもない。
「まあ、数日くらいならば外国からのお客様と思って周りも疑いはしませんでしょうし」
そう言う事だろうね、やっぱり。
こいつは図体の割には小食だから経済的にはさほど負担にはならない筈だのに、カスモさんたちも出来ればマニが自発的にどこかへ行ってくれるのを願っているようだが、当然口に出しては言えない。しかも、マニと来たら自分は修行で野宿は慣れているので寝泊りは、屋根さえあれば納屋でも土間隅でも構わないなどと言う物だから、相手は面食らって余計に気を使うのである。どうやら冗談でも、向うにプレッシャーを掛ける為にわざと言っているのでもなく、本気らしかった。まさかホントにそんな扱いも出来ないのでマニにも一室宛がっているのだが、でも仕方が無い。マニを追い出すんだったらわたしもその時は出て行くよ。仮にもここまでわたしに付いて来てくれた大事なお供、大切な仲間なんだから。まあ、ヒマを見つけては王家再興の大願成就を祈る御祈祷なんかをやってくれたりするモンだから、ご利益が有るのかどうかは別としてソレナリには有難がられてはいるようだけど。