鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【12】
「有り難う御座います、有り難う御座います__」
わたしは思わずカスモさんの手を取って、何度も何度も上下に振っていた。
「レ、レジェナ様」
カスモさんも何だか驚いてるみたい。
「家臣であるわたくし如きにそのような__」
いいの、いいの。
譬え相手が誰だろうと、お兄ちゃんの行方を捜してくれるんだったらもう、感謝感激雨霰ですがな。
有能で忠実なる家臣に恵まれ、レジェナは誠に感無量であるぞ。
「レジェナ様」
ミアキスが、何やら温かく気心の通じたような微笑みを見せた。
「お任せ下さい、うちの宿屋は元サウロロフスの家臣の人達がちょくちょくお泊りになられるし、その人達が仲間内での情報とか消息も聞かせてくれるんです。て言うか、父にそう言った情報を託していくんですよ。父も元は情報将校ですもの、見かけによらず頼りになりますから、どうぞご期待下さいな」
またまた、やったー!
「ね__」
ミアキスの、ちょっと悪戯っぽい笑顔に、わたしは幾分照れながらも、何とも頼もしいものを覚えていた。さすが女の子同士、ミアキスには、どうやら私の気持ちが全て理解できるようである。重ね重ね有り難や、こう言う時、やっぱ頼りになるのは同性だよ、ホント。
「それでは、自分は連絡の付く限りの同志に声をかけまして、王女……レジェナ様のご意向を出来る限りお伝え致しますゆえ、このようなむさ苦しく世話しない場所では御座いますが、せめてそれまではご遠慮無く御逗留願います」
はいはい、何日でも待ちますよ。
それに、ここに泊まってれば、どうやら三度のオマンマに事欠いたりしないだろうし。
「それじゃあ、お願いします」
「いえいえ、レジェナ様__」
元気良くお辞儀して見せたわたしに、カスモさんはまたまた落ち着かない様子で、まるで競うような勢いで頭を下げた。