鳴かぬなら、ジッとガマンの女の子 【10】
「如何に男勝りのご気性とは言え矢張り妙齢の女性で御座います、加えて、この度の暗殺未遂ですっかりお気を患われまして」
男勝りのご気性ね。
「こうして旧サウロロフスの家臣団の方々を頼らんと、事ここに至った訳で御座います」
カスモさんも澱み無く話すマニのペースに何となく引き込まれて行っているように見える。
この、マニという男は見かけによらず饒舌である。否、普段はおっとりと、何も言わずにニコニコと愛想の良い微笑を浮べているだけだが、いざ喋り出したら立て板に水と言うか、当たりの柔らかな話術で相手を話に引き込みながら、巧みに自分のペースに持っていくのだが、その能弁ぶりは見事と言う他無い。ロクに定職にも就かず、辺りをほっつき歩きながら、行く先々でお布施をせしめて食い扶持を稼がねばならない放浪の修行僧としてはこう言った交渉も大事な処世術と言う訳ですな。
「成る程、左様でございますか」
マニの話術にすっかり魅了されたのか、カスモさんはいやに親しげに頷いた。
「そうでしたか、王女さ……レジェナ様がお一人でお家を。いやいや、我々家臣の者としては頼もしい限りで御座いますよ」
見守るような視線で温かくこちらを見詰めるカスモさんに、わたしは曖昧な愛想笑いで答えた。
「それで、早速で申し訳御座いませんが、中将殿に一つ、御無心を申し上げてもよろしいでしょうか」
「ええ、構いませんよ」
今やすっかりマニの事を信用したのか、カスモさんは何とも心安い笑顔で答えた。
「実は、レジェナ様の兄君の事なのですが」




