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旅は道連れ、世は情け無エ…… 【Last】


「だけど……」


わたしは釈然としない思いだった。


「何で偽王女なんて担ぎ出してまで即位の礼なんかやるんだろ?」

何か拘ってるようで嫌だけど、気にはなるよ。


「さあ」

マニは首を捻った。

「わたくしは事情を良く存じ上げませんが」


何、何なの?

「これは推測です。サウロロフスの内情については兎も角、極在り来たりな、一般的で良く有る話に照らし合わせて見ますと……」


ふむふむ。


「今、サウロロフスは国民投票による大統領が治めている筈ですよね」

そんな風には聞いてるけど。


「しかし、例えばそれは飽くまで建前の上の話で、実際には大統領による悪政が国民を苦しめている__」

成る程。


「そうなりますと国民は大統領の退陣を求め、或いはかつての王族を呼び戻すと言った事も考えられます。国民ではなくとも、大統領の反対勢力がレジェナ様を担ぎ出すかも知れない」

有るかもねえ。


「そうなっては面倒なので、先手を取って自分の言いなりになる女性を王女に仕立て、本物を人知れず葬ってしまえば一応そう言った形式による政権交代は予防できると__」

そう言う事か。


「或いは、何か派手なイベントを開催する事によって国民の関心を引く事が目的かも知れません。その際にも、やはり自分にとって傀儡になってくれるかどうかもわからない本物よりも、確実に言いなりになる替え玉の方が」

良く思いついたわねえ、アンタ。


「まあ、単なる一般論に過ぎませんが……」

いや、結構だよ。


「ありがと、マニ__」



成る程ね、そう言う事か。

確かに、命を狙われるのはおっかないけどさ、私にとっては重要な問題ではない(とは、流石のわたしも言い切り難いものが有るが)。物は考えようじゃん、これを逆手に取る事も出来るよ。


人間、前向きに生きなきゃ。


わたしは意味も無くクルッと身を翻すと、力強く上を向いて歩き出した。目の前に広がる青空は、まるで今の私の心を写し出したかのように澄み切っていた。


「レジェナ様?」

「行くよ」


そう、お兄ちゃん。


もしもわたしが、愛するレジェナが命を狙われたって事になれば、きっとお兄ちゃんも心配で居ても立っても居られない筈だよ。きっと心配でわたしの元に戻って来てくれる。


ピンチをチャンスに都合良く変えるのも、ヒロインの必須条件なのだ、わははははは。



「サウロロフス王朝……」

「エ、何、何か言った?」


私が振り返ると、マニはいつもの掴み所の無い微笑を見せた。


「いいえ」

マニの笑顔は些かの拘りも感じられない、いつもの穏やかで透明な微笑だった。

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