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校長「私の名前は?」


作者「書いたと思ったら書いてなかった。もうこのままで校長で」


 ~校長~


「そう、景ちゃんも同じような意見か。それじゃ・・・うん、ありがとね」


 電話を切って部屋の椅子に乱暴に座ると、用意しておいたウイスキーをグラスに注ぐと、カランと氷が音をたてる。それを口に運ぼうとしては止めてまた飲もうとするが琥珀色の液体は一向に減る気配はない。


 先程は同級生の田村景子こと景ちゃんと彼のことで話し合ったのだが、お互いの意見は大体同じで”人を信用していない”に収まった。一見人当たりがよさそうな好青年だが、その実相手との距離感に敏感で一定以上近寄ろうとしない・・・だろうか。

 

 仮面をつけたいという申し出も恐らくだけど少しでも人と距離を取りたいっていう彼の心理からか?それでも年内には外す条件を素直に受け入れたのは本当に恥ずかしいからか?


 うーん

 

 歳をとると御節介になるのは私だけかね。

いや、景ちゃんも大概かな。彼女の会社の中でも1番優秀な護衛をつけるくらいだ、相当彼を心配しているんだろう。彼は自分で護衛を選んだつもりでも、彼女に仕組まれた選択になっていたに違いない。


「さてと、明日は一芝居打つとしようかね」


 もしかしたら彼を怒らせることになるかもしれないが、そこは私が甘んじて受けよじゃないか。

年寄りの御節介を甘く見るんじゃないよ?


 そうして手元のグラスを一気に傾けた。



 次の日壇上で軽く生徒達に発破をかけて彼の学校生活に刺激を与えようと思っていたのだけど・・・これは思ったより効きすぎたみたいだ。

 ちょっと悪のりが過ぎた感はあったけどここまで酷い光景を見ることになるとは思わなかった。

段取りを無視した彼の抽選結果に会場は既に地獄絵図と化している。


 本来ならクラスを離してする予定だったのだけどそれをする前に彼がおいたしたもんだから、もう滅茶苦茶だ。

こらこらそこで踊らない。祈らない。泣かない。嘆かない。・・・おっと、誰だい今お金出そうとした子は!!


 漸く事態が収拾したのは予定していた時間をかなりオーバーしてからだった。

それから細田先生を連れて応接室まで戻ると彼が直ぐに謝ってきたのにどう反応すればいいか一瞬迷ったが、ここまできたんだもういけるとこまでいこうじゃないか!



「ありがとうございます」


 彼との問答の後、彼から出た言葉に自分の御節介も役に立ったかと一安心したのもつかの間


「と言えばいいですか?残念ながらそんな言葉で心が揺れ動くほどやわじゃないんで」


 続いた言葉に私はもうこれ以上彼に伝えられる言葉を持ち合わせていなかった。ごめんよ景ちゃん。この子はもう手遅れかもしれない。

「そうか」としか言えなく私の出番はこれで終わり・・・そう思っていたら彼が細田先生の元まで歩いて行く。


 今更彼女に言うことなんてあるの?それとも彼女にも冷たい言葉を浴びせるつもりか!?

それだけは止めてほしい。今回の件は私1人の責任だ。文句を言い足りないなら私に言いな。そう言おうとして声が出かかった時、細田先生の袖を少しだけ摘まむ彼が目に入った。


 特に何かを言うわけでもなくただ袖を摘まんでいるだけ。

急に矛先が自分に向いたことで慌てている彼女に、何やらやりきれない表情で視線を泳がす・・・


 なんだ


 ちゃんといるんじゃないか。


 私の視線にバツが悪そうに顔を背ける彼を見ながら思ったことがある。






 私の目の前でイチャイチャするな!!




 ~細田 瞳~


 校長先生からのご紹介で会場の生徒さん達が少しざわついたが、特に問題もなく私の出番は終了。

壇上を降りながら生徒達を見渡すと、1人だけ他の生徒と違う色を持つ生徒で私の視線は止まる。


(あの感情は、敵意?まではいかないけど私に良い感情は持ってないみたい。だけど初対面のはずなんだけどなあ。どこかで会ったっけ?はあ、私の学校生活大丈夫かしら?)



 その後の佐藤さんの紹介中改めて彼女を視てみると、昨日太郎さんと会った時に視えた”拒絶”の色は全く見えない。恐らく彼女の言った”男性嫌い”から自然と出た感情だろう。

異世界の男女の関係って本当一体どうなっているのだろうか?


 昔社長に聞いたことがある話だと


「満員電車の中で男性が女性のお尻を触ると・・・死ぬわ!社会的に!勿論男が!たとえ偶然だとしても・・・怖い世界よね異世界って」


 この話を聞いた時「まさか」と鼻で笑ってしまったのを覚えている。だけど社長の色に嘘はない・・・

この世界だと次の日からその女性は「男性にお尻を触られた運のいい女」として、それを一生の思い出として生きていくことすら出来るというのに。夜のおかずにも困る事はないだろう・・・私にはあの胸板の感触がまだ右手にのこ・・・んんんゲフンゲフン


 そんな思考も校長先生の人が変わったような挨拶によって一気に現実へと引き戻された。

この挨拶大丈夫かしら?ちょっと生徒たちを挑発し過ぎじゃないと思うのだけれど。生徒達のテンションが一気に上がった時、スピーカーから太郎さんの声が聞こえてきた。


 恐らくこの熱狂にあてられてついボールを取ってしまったのか、傍にいる田中先生に謝っていた。

それでも引き直しなんてしたらD組の子達の反乱は目に見えているのか、結局太郎さんは佐藤さんと同じD組への編入となったのだが・・・

 さっきより会場のボルテージが上がっている。おかしな方へ。

私も参加して何とか生徒達を教室へ帰して太郎さんがいる応接室へと戻ると、いきなり謝罪の言葉が飛んできた。

 勝手にボールを取ったことを謝っていたのだが、校長先生とのやり取りを聞く限りワザとあのタイミングで取ったらしい。どうやらあのスピーチへの意趣返しらしく些細な悪戯心が出たということにしておきましょう。


 それでもそこからの会話のなか、太郎さんの感情の色はどんどん大きくなっていく。

以前私が視たときよりも大きくて更に濃く体の外を渦巻いている。”人が嫌い”その言葉が正しいというかのようにその色は肥大していき、とうとう私に触れる距離まできた。


 痛い


 イタイ



 前に触れた時も痛かったけど今回も酷く心臓のあたりが痛くなる。

その小さな体の中にどれだけの痛みを抱えているの?どうやったらその色を消すことが出来るの?


 声を出せずに唯々立っている事しか出来ない自分が悔しい。




「と言えばいいですか?残念ながらそんな言葉で心が揺れ動くほどやわじゃないんで」



 校長先生が差し伸べた手を振り払うかのように告げられた言葉にそれ以上何も言えなくなってしまった。

既に彼の心は壊れてしまっているのだろう。私なんかが少しでも彼を”彼の悪意”から助けることが出来るんじゃないかと考えたのも無意味だったんだ。


 少しの沈黙のあと、彼が私の方に歩いてくるのに気が付かないほど意気消沈していると何かが袖を摘まんでいるような気がしてそちらを見る。

 そこには先程より少し小さくなった色を纏った彼がいた。


 ついさっきの出来事との温度差に正常な判断が出来ないままでいると、校長先生と目が合ったきがした。

なぜ”嬉しい色”が視えるのだろうか?先程彼に否定されたばかりだというのに・・・


 不思議に思い今度は彼を視る・・・




 「あっ」




 今・・・一瞬だけど・・・



 視えた




 それがとても嬉しくて、涙が出てきそうな程嬉しくて、無意識に空いている手を彼の指に重ねる。

 


 最初は彼の色に恐怖した。人の形をした”色のお化け”かと思った。



 次の日にはその色から守りたいと思った。それが私の仕事だと言い聞かせて。



 コロコロ変わる彼の色に興味が沸いた。彼とのやり取りが楽しく感じれた。



 そして今思う。


 さっきの色で彼を染めてあげたい。もっと楽しい色があることを彼に教えてあげたい。その色の向かう先が私じゃなくてもいいなんて言わない。それは私でありたい。他の誰にも譲れない。 




 そうして私は1人の異世界から来た男の子に恋をした。












 私はちょろ・・・・・・い!!





作者の小話⑥


職場の後輩から「ぷっちょ」を貰ったのですが、久しぶり過ぎてて気が付かなかった・・・自分がキモイ食べ方をしていたことに。


「作者先輩、ぷっちょまだ食べてるんですか?」


「ああ、最初にかみ切らないように歯で平らにしてから舐めてグミだけにする。んで、今グミを食べてるところ」



「キモ」



えっ?ああ・・・うん・・・キモいですごめんなさい。

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