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善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


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 あれから俺は黒砂糖を使った料理を沢山作った。

 パウンドケーキ、サブレ、プリン等々。どれも「おかわり」を要求される程の人気で、魔王の間に持って行き、俺が跪く前に空になった。


「ぷぅ、余は満足じゃぞ……コディー」

「あぁ……何という甘露……」


 悪魔(デーモン)姉妹はどちらも満足したようだ。

 そりゃ、これだけ食えばな……と、空になった器の山をじとっと見つめる俺。

 まぁ魔族も糖分に屈する事がわかったのは収獲だ。何せ相手は魔族のトップ――魔王なのだから。


「ようやくわかったぞ、コディーの狙い」

「おわかり頂けましたか」

「つまり、この菓子は……余へのご褒美なのじゃな!?」


 全然ちげーよ。


「あー……えー、つまりですね、この菓子に使われている重要な食材、黒砂糖を魔界の名産品として人間界と貿易をするという事です」

「何っ!? こ、こんな甘くて美味い物を……売るじゃと!? そ、それはならんぞ! 余の分がなくなってしまう!」

「なくなりません」

「ならば許そう!」


 まったく、完全に中毒者だな、あれは。


「当然、金やミスリルも合わせて特産物として扱います」

「ふむ、じゃがその代わりに何を望むのじゃ?」

「人界の通貨を。そしてゆくゆくは魔界に貨幣制度を導入したく存じます」

「確かに、余やコディーが与えたものばかりでなく、配下たちが欲しいものを欲しい時に得られるというのは非常に有益であると考える。しかしそれは本当に必要なのか? ノレイス国の通貨があれば事足りるのではないか?」

「そうはいきません。我々は独自で生き抜く事こそ出来ますが、人間がそうであるとは限りません。ノレイス国の経済が傾けば、それだけ魔界の経済にも影響が出ます。それを緩和させるのが別の通貨という訳です」

「ふむ、つまり通貨の価値を保つ目的があるのじゃな」


 なるほど、そういうところはわかるんだな。

 しかし謎だ。この頭の回転があって何故リバーシが弱いのか。これは永遠の謎として残るかもしれない。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「さて、サトウキビの栽培はオークたちに任せるとして、次は調印式の準備だな、ミザリー」

「陛下はあの場から動く事は出来ません。閣下、やはり調印式はあの魔王の間で……?」

「それしか方法はないだろうな」

「あの場で作業した場合、陛下へのストレスが大きいものになるかと」

「あぁ、だから可能な限り準備は外で行う。調印式の前日に幹部たちでそれらを中に運べば、陛下の気苦労も減るだろう」

「かしこまりました。ではそのように計らいます」

「それと、魔法の扱いに長けた者を集めてくれ」

「すぐに手配致します」


 そんなやり取りの後、魔界はノレイス国との調印式に向け動き始めた。

 取りそろえるのは全て一流の品々。テーブルから食器、同盟の約定書に王印、ペンに至るまで、全て作らせた。やはり魔界という事もあってかそういった文化は一切なかったようだった。まるで人間と接する機会など絶対になかったかのように。



 この時から俺は、この世界の構造について疑問を抱き始めていた。

 そう、何故世界はこのように作られていたのか。こういった歴史を辿ったのか。そんな疑問を抱かずにはいられなかったのだ。



 ◇◆◇ ◆◇◆


 調印式の前日。

 夜、俺は魔王リザリーの下を訪れていた。


「陛下、お待たせ致しました。鬼人王(オーガキング)レジンの渾身の作です」

「おぉ、出来たか。いや、すまなかったのう。急遽デザインを変えさせて」


 デザインとは王印(おういん)――(すなわ)ち、王の印鑑の印影のデザインの事。

 当初のデザインは【神杖(しんじょう)ミストルティン】を掲げる幼女……もとい魔王を(かたど)ったデザインだったのだが、完成後リザリーは首を捻った。

 そして、俺と話を煮詰め、出来上がったのがこれだ。


「陛下の指に合わせております。まずはご装着(、、、)を」


 王印が入った木箱を差し出すと、リザリーはくすりと笑ってから王印だけをとった。


「ふふふ、見事なものじゃ」


 紐状の金とミスリル。この二本を捻り縄状にし、丸めて指輪(リング)と成す。丁寧に削って磨き中央の土台は二つの金属の合金。土台にある魔王リザリーの考えたデザインこそ、王印。そう、これは指輪型の王印なのだ。

 指輪を掲げ、まじまじと見つめるリザリーはどことなく嬉しそうだった。


「コディー、はめよ」

「え、私がですか?」

「この場には余とコディーしかおらぬであろう?」

「は、はぁ……かしこまりました」


 何故、俺は幼女に向かって指輪をはめなければいけないのか。

 そして何故、リザリーは左手薬指のサイズをレジンに注文したのか。

 指輪を装着したリザリーは、再び左手をあげて指輪を掲げる。

 身びいきなしに言っても、やはり絵になる程……可愛く、美しい。

 ここが魔王城の魔王の間で、リザリーが魔王でなければ……の話だがな。


「陛下、試し捺しをなさりますか?」

「よい、今はこれを外しとうない」


 ふふりと笑うリザリーの笑みの理由は、翌日になってもわからないままだった。

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