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善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


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お久しぶりです。

更新再開です。

 ダニエルから聞いた新たな情報。

 それは、ジジが人間側の救出隊(、、、)としてこの楽園にやってくる可能性が高いという事。

 救出隊とは(すなわ)ち、ライオス国の王太子(ひめ)であるディーナをここから連れ去ろうとする部隊の事だ。

 ダニエルやアッシュは既に招集のため、ココの町の北にある首都ライオスに向かった。

 その間、ここの見張りは別の人間が受け持つという。

 しかし、その人間の情報を俺はおろかダニエルでさえ知らないというから、ライオス本国もかなり慎重になっている事がわかる。


『捕まえたぞ』


 ココの町を見据えながら立っていた俺は、背後から聞こえたゴリさんの声を聞き振り返る。ゴリさんの両腕には、二人の人間が抱えられていた。

 一人は若い女、一人は熟練そうな男。


「流石ゴリさん、仕事が早いね~」


 笑顔を撒き散らしながら言うと、ゴリさんはすんと鼻息を吐く。


『二人とも手練れだ。一人一人がニッサ程度の実力を持っている。私もコディーの指示がなければここまですぐに対処出来なかっただろう』


 という事は、冒険者ランクAに相当する相手だという事。

 シロネコを使った簡単な囮作戦(、、、)だったのだが、こうも簡単にハマってしまうのは、相手が俺たちを獣と侮ってくれているからだ。

 聖獣という俺とシロネコをちらつかせ、背後から気配を消した霊獣ゴリさんが近付き見張りを倒す。相手の最優先監視対象はディーナではあるが、俺たちの目をかいくぐる必要はある。

 ゴリさんは比較的監視が緩い。何故ならこの森には神獣が一匹、聖獣が二匹いるのだから。

 俺が森の北側で目立つように立っていれば、一人は俺を監視するはず。

 当然、俺はその視線に気付いていた。

 そしてその監視者の近くで、別の監視者がシロネコを見張る。何故ならディーナはニッサの小屋にいるのだから。小屋に一緒に住み、ディーナの警護をするシロネコ以外、監視者は情報を得る事は出来ないからだ。


『それじゃあ、その二人はお説教部屋に連れてってくれ』

『わかった』


 しばらく会話は全て獣での言語に絞っている。

 当然、相手に情報を漏らさないためだ。

 ニッサも日常会話くらいなら問題なく話せるため、楽園から外部にこちらの情報が漏洩する事はないだろう。

 因みに、ゴリさんに言った「お説教部屋」というのは、俺の家の事だ。

 そこでは口五月蠅く、喧しい神獣という名の八咫烏(やたがらす)が、こんこんとディーナの状況を伝える事だろう。


『さて、これで監視の目はなくなったな』


 俺は次の仕事に着手すべく、森の東側に向かった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 東側とはつまり、森の中にある川を隔てた対岸の事だ。

 そこでは数多くのゴリラたちが待っていた。


『お疲れ様ー』

『コディー、お疲れ』


 ゴリラの一匹にゴホホとそう言われ、俺は手を挙げて皆に軽い挨拶をする。


『誰か通った?』

『猪一匹、森を出てった。「家族連れて来る」言ってた』

『そか。一週間は通行止めになるって伝えた?』

『伝えた』

『よし、それならここも塞いじゃう(、、、、、)か』

『手伝うか?』

『んや、北側で見張りを頼みたい』

『任せろ!』


 ゴリさんの群の連中も強くなってきた。

 当然それは俺の魔力効果でもあるんだが、ゴリさんが直々に稽古をつけてるそうなので、今後益々強くなるのだろう。

 もしかしたら名もなき魔獣が誕生する日も遠くないかもしれない。

 俺はそう思いながら東側の獣道を大岩で塞ぎ始める。

 当然これは相手の侵入経路を絞るためだ。

 俺たち獣はいざとなれば散り散りに動く事は出来る。

 しかし、人間たちは違う。帰る場所は人里だと決まっているからだ。ならば人里に通じる道を塞ぐのは当たり前の事だろう。


『ふぅ、こんなもんかな?』


 積み上げられた岩を見上げながら、俺は一息吐く。


『うわぁ~……』


 聞こえたのは女の声。


『なんだよニッサ? 結界はもういいのか?』


 俺は振り返りながらそう言った。


『うん。コディーの力を抑える訳じゃないから簡単』


 Vサインを見せながらニッサが言う。


『それに、結界というより、これはただのカーテン』

『大分上手くなったね、獣言語』

『がなる時がつらい』

『ははは、あれは人間の喉には負担が大きいからね』

『たまに人間臭い事言うよね、コディー』

『気のせいだ』

『獣はそうやってはぐらかさない』

『さ、さぁ~ってとヴァローナの様子でも見て来ようかな~っと』

『そして、自分より弱い相手を前に逃げたりもしない』

『ぐぅ……』


 なんていう鋭い指摘なのか。

 まぁ、ぐうの音がでたんだ。そこまで気にする事でもない。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「わかったか人間よ! ディーナは自分の意思で戻らない事を決めているのだ!」


 帰るなりヴァローナの甲高い声が家を支配していた。

 頑丈なツタで両手両足を縛られた二人は、ぐったりしながらヴァローナの話を聞いていた。

 当然、ヴァローナ一人では心許ないので二人を連れて来たゴリさんもいる訳だが、どういう訳かゴリさんもぐったりとしていた。


「では、次のお説教だ!」


 ……まぁ、理由は察しがつくけどな。

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