054
「まず、表に出てる魔力を思い切り凝縮する」
ニッサの説明通り、俺は精一杯魔力をコントロールしてその凝縮に努めた。
「ぬぐっ、ぐぐぐぐぐ……!」
「魔法使いはまずこれが出来ないと魔法が使えない」
「はぁ!? 一番最初が一番難しいのか!?」
「だから無理って言った。コディーの魔力大きすぎる」
くそ、初期段階から躓いてられるかよ! ここが俺のターニングポイントなんだ!
これをミスると魔王との交渉は失敗に終わる! ならばやるしかないだろう!
「ぐぎっ! ぐぎぎぎぎぎ……!」
お、魔力が何とか掌サイズの球体になったぞ。何かちょっとだけどす黒いけど、この調子なら――――、
「だ、だめ! そんなに強引に凝縮すると破裂――いえ、爆発しちゃう!」
「お、おぉおおおおおおおおおおおぉおぉぉおおおおおおっ!! ぬかかかかっ!!」
「こ、こらコディー! ダメだってば!」
「ふんぎぃいいいいいいいいいいいいっ!! ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
「あっ!!」
瞬間、俺たちは光とも闇とも思えないような灰色の光に包まれた。
◇◆◇ ◆◇◆
「…………ん~?」
「これ、何……?」
ニッサの「もうこれダメかも」って感じの絶望感溢れる顔も面白かったが、今の顔の方が面白い。俺の前に浮かぶ灰光とも呼べるような灰色の球体がぷかぷか浮かんでいる。ニッサは渋面になりながら小首を傾げている。
凄い。ニッサの新たな顔発見、って感じだ。
「で、この後どうするの?」
「普通は、こうならない」
「ん?」
「これ、完全に魔力が結晶化してる」
「それって、魔力が物質になったって事?」
「ほら」
ニッサは自身の頭程の大きさの球体を、細い人差し指でツンと触れる。
すると、まるでゴムまりのように動いたのだ。だが、すぐに俺の正面に戻ってくる。
「へぇ、俺もやってみよ」
「あ、だめ――」
「――へ?」
俺の爪が球体に触れた瞬間、灰光は漆黒に染まり、闇が破裂したかのように嵐を呼んだ。
「「っ!?!?」」
球体からバチバチと漏れ出る黒雷。吹き出る突風。今にもニッサは吹き飛ばされそうである。こ、これは……まずい!
「ふんぎぃいいいいいいいっ!」
再び魔力を込めて押さえ込もうとすると、心なしか暴走が収まったような気がした。
「さ、さっきと同じ要領だな! 多分! むぎぃいいいいいっ!!」
瞬間、俺たちは光とも闇とも思えないような灰色の光に包まれた。
◇◆◇ ◆◇◆
「どこかで見た光景だな」
まるでデジャブのようだ。
まぁ、ニッサのアホ毛は先程より増えてるけどな。
「…………けほっ」
「怒ってる?」
「……怒ってない。でも、そんな鋭い爪で突いたら破裂しちゃう」
「なるほど。じゃあこれどうすればいいの?」
「正直、魔力の結晶化なんて初めて見るから、わからない」
「これを投げつければ強いのでは?」
「考えたくないけど、強いどころじゃないと思う。多分、ココの町とか、一瞬で消し飛ぶ」
え、なにそれ? 怖い。
「……え、俺これいらない」
「そういう問題じゃない。でも、結晶化したって事は、別の用途が考えられる」
「というと?」
「結晶から魔力を吸収……とか?」
「え? 元々俺の魔力なのに吸収出来るの?」
すると、ニッサは首を横に振った。
何だろう? 言ってる意味が理解出来ないだけなのか? 俺が獣だから?
「魔力は最大量を超える事はない。でも、使ったら減る。そういう時回復出来る……感じ?」
「あぁ、つまり魔力回復ポーションみたいな感じ?」
「そう」
ニッサは深く一度だけ頷く。
「じゃあ、あと何個か作っておけばいいのかな?」
「まだ魔力……あるの?」
「うん」
「……魔力馬鹿」
最近ニッサが辛辣です。
まぁ、魔力が多いのは自覚している。今更言っても仕方の無い事である。
さっきの要領なら、なんとなく覚えてるし、いけるところまでいってみるか。
「あ、でもコデ――――」
「――――ぉおおおおおお!!」
◇◆◇ ◆◇◆
「おぉ~、何かラスボスって感じがするな」
俺の胴体をX字に浮遊し回転する球体。数にして二十。
「気持ち悪い」
「おい! 今の酷くない!?」
「それ、どうやって維持するつもり?」
「え? 別に今は魔力使ってないぞ?」
「違う。少しの衝撃で破裂する。それ、とても危険。それだけで、ココの町、二十個消し飛ぶ」
「やべえ、忘れてた」
「ヴァローナ並み」
「ちょ! いくらなんでもそれはあんまりだ!」
「動くと、危ない」
「これいらない!」
「近付かないで」
「何その拒絶!?」
「普通逃げる。ここにいてあげるだけでも、私はとても優しい」
「くそ! ぐうの音も出ない!」
しかし、一体どうすればいいんだ?
無駄に作りすぎちゃったし、強い衝撃は与えられないし、一つ一つが強力だし。
「あ」
「その『あ』! 待ってました!」
「解決にはならないけど、その魔球の外殻を分厚くすればいい」
「つまりもっと硬くしろと?」
「うん」
「どうすればいいの?」
「もっと」
「へ?」
「もっと圧縮する」
ニッサがすんげえ怖い事言い出したぞ?
今回はギャグ回だったかもしれない
本日、別作品の「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第12巻が発売致しました!
よろしくお願い致します!




