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善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~  作者: 壱弐参


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「オークキングがやって来たぁ!?」


 事の顛末を話そうとしたら顛の時点でヴァローナが驚いた。宙でピタリと止まるくらいだ。相当驚いたのだろう。


「静かに、ディーナが起きちゃうだろうっ」

「そんな事言ってる場合じゃないだろう! それっていよいよコディーが魔王軍に目をつけられたって事じゃないか!?」

「こちらとしては、魔王軍に目を付けられるような事はしていないと思っています」


 俺のすっとぼけた弁明に、ヴァローナは呆れた顔で溜め息を吐く。


「はぁ……オークジェネラルの森を奪いとった時点で想像はついたが、ここまで事態が早いとは思わなかった。それで、コディー? この先一体どうするつもりだ?」


 ヴァローナは俺に聞いてきた。しかし、俺は聞き返してしまったのだ。

「お前はどうするつもりなんだ?」と。すると、ヴァローナは考える素振りを見せず、ずいと顔を近付けて言ったのだ。


「ん~? 何を言ってるんだ。こういう事を決めるのはコディーの仕事だろう。私はコディーに付いて行くと決めているからな」

「……い、いつ決まったんだ?」

「友達となったその日からさっ」


 言葉に詰まってしまった。確かに俺もヴァローナの事を友達だと思っている。しかし、己の生命の危険を感じてまでそう言い切ってくれる友達は、これまでジジしかいなかった。

 転生前だって友人はいたが、命の危険なんて中々あるものじゃないし、あってはならない世界だった。その友人たちに命を懸けられるかと聞かれたら、正直自信がない。

 だから俺は、ヴァローナのこの言葉が、単純に嬉しかったのだ。

 ディーナだっているんだ。俺も覚悟を決めなくちゃいけないだろう。


「……獣の世界は弱肉強食。確かそうだったよな、ヴァローナ?」

「そうだな」

「なら、仲間を集めよう」

「ほう、それなら(、、、、)手がない訳でもない」


 ヴァローナは薄目を俺に向け、ニヤリと笑った。八咫烏の彼がこう笑う時、頼もしくなってしまうのは、それだけ俺がヴァローナと組んでいるという事だろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「お外出るのー?」

「あぁ、昨日ヴァローナと話して決めたんだ。辛い旅になるかもしれないが、ディーナはどうする?」

「う~ん……」

「ここは俺の縄張りだから、魔物も他の獣も近づかない。臭いが消えるまでは安全だろう」


 勿論、これは嘘だ。現に昨晩オークキングが訪れてしまった。ヴァローナの話では、強者程こういった縄張りにも入れるそうだ。つまり、俺がこの森に入ろうと思えたのも必然なのかもしれない。オークジェネラルよりは強かったのだから。

 俺とオークキングとの実力差があるのか、ないのか。それは昨晩の時点で余裕を感じられた事で、こちらに分がある事はわかった。しかしオークキングは魔王軍の幹部と呼ばれる存在だ。その幹部クラスが二匹、もしくは軍を引き連れてここに来た場合、俺はここを追われる事になるだろう。少なくともこの森を守るという選択肢はなくなってしまう。

 ならばこちらも精強な仲間をこの森に配するしかない。

 昨夜ヴァローナは言った。「それなら(、、、、)手がない訳でもない」と。それはつまりこういう事だ。

 ――――俺が欲しかったのは友達。しかし、仲間が欲しい(、、、、、、)ならば話は違うという事だ。


「お外で何するの?」

「強い魔獣を見つけて従える」

「お友達じゃないの?」

「違うな。部下(、、)にするんだ」


 そう、これは獣界、いや、この野生の世界の法律。弱肉強食。

 つまり俺は、群れのボスと成るべく、この森を出る事にしたのだ。

 ディーナは不必要にここを出たがらない。しかし、俺と一緒ならば話は別だ。森の外に散歩に行った事もあるくらいだ。しかし、今回はいつ帰って来られるかわからない旅。俺が無理を言ってるのはわかる。

 しかし、ここは言わなければならない。「別にここにいてもいい」というのは建前であって、事実上、強制的な旅だ。


「うん、コデーがそう言うなら仕方ないよねっ!」


 だからディーナは付いて来るしか選択肢がない。狡い奴だと思われようが仕方がない。これはディーナを守るためでもあるのだから。

 俺はディーナの頭にポンと前脚を置き、出来るだけ自然に笑いかけた。


「よし、それじゃあ出発の準備をしてこい。森の出口で待ってるから」

「はーい!」


 いざ決断してしまえばディーナは行動が早い。すぐに準備を始めたのだ。

 ジジに貰ったショルダーバッグに色々な物を詰め、俺も森の出口に向かう。出口にある木の枝の上では、既にヴァローナが待っていた。

 ニヤと笑ったヴァローナは、指定席と言い張る俺の頭の上に飛び乗る。そして、後方からトタトタと走って来る音が聞こえる。


「来るぞ」

「最近よくやるんだ。活発な子だよ、ディーナは」

「とおぉおおっ!」


 ディーナは快活な声を出し、俺の臀部に両手を突き、跳び箱を跳ぶように俺の背中に乗った。


「えへへへっ、できたー!」


 ケタケタと笑い、万歳するディーナに苦笑する俺とヴァローナ。


「さぁ、それでは行こうか。目指すは南の密林だ」


 ヴァローナは羽を広げ進行方向を指差す。


「まぁ、そっちは崖があって進めないんだけどな」

「お、大回りすればいいのだっ」

「それをするのは俺だけどな」

「けんかだめー!」


 これから先、どんな未知に巡り合うかはわからない。けど、この道は間違っていないと信じて進むしかない。

 俺がディーナに笑いかけた後、ヴァローナもニヤリと俺に笑いかけた。


「よし行くぞ! 俺たちの旅はこれからだっ!!」

本日、別作品の、『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』第九巻が発売します。


後書きの下にリンク貼っておくので、機会があれば、是非読んでみてください。


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