神は笑顔で見守っている
「ははははははははははははは!!!面白いなあ!!【原罪】【魔王】【勇者】【災】その他にも存外あっちの生き物も楽しませてくるじゃないか!!」
「アースお前……やっぱり愉快犯じゃないのか?」
「そんなわけないだろう?私は徹頭徹尾地球のためを思って我が子のためを想っているともさ」
「そのようには全く見えないんだが……そんなことはいい。あのリンゴは流石に看過しきれないぞ、あれは明確な侵略兵器だろう。あんなモノを持った奴は即刻送り返すか殺すのがルールだ」
「まあ待ちたまえよ。ラセンの言うことももっともだ。あれはまさに侵略者の兵器。あれを持った転生者などインベーダーに他ならない」
「で?そこからどう言いくるめる気だ?」
「言いくるめるなど神聞きの悪い、私は純然たる事実を伝えるだけだ。あれは侵略の目的で使われるわけではない」
「ふん……聞かせてもらおうか」
「これを」
アースが指を弾くと同時にラセンの手に一枚の紙が出現する。
どうやら侵略兵器の概要らしい。
「まさか……お前……こんなことが許されるのか!?」
「現に私は今ここにいる。許されないならば私たちの創造主に消されているはずだろう?」
「ぐ……こんなことが行われれば片方の世界は完全に崩壊するぞ!?」
「だがもう片方は生き残る。存続する。より強靭な世界となる」
「だが……!」
「なあに私の子らは負けないさ。生き残り続けた最高傑作なんだから」
「本当にやるのか……」
「やるさ、私は地球とそこにいる愛しい我が子のためならなんだってやる」
「アース……!」
「さあ続きを見ようじゃないか、これから【勇者】達が戦いを始めるようだ。約1名使い物にならなそうだがね。【原罪】もよくやったものだ、まさか最高戦力になりうる【勇者】の一角を崩すとは」
「いや、あの鬼は壊れない、壊れていない。なぜならあの中に入った魂は……」
「ん?何か知っているのか」
「知っている、今でも思い出せるさ。あの魂の設計をした時のことは。あれは壊れかけが最も強くなるように設計されている」
「なるほど……今がベストコンディションということか」
「そういうことだ。相手は気の毒だな」
「さて、【原罪】によって不覚醒した【災】はそう簡単には終わらないと思うが……」
「見てれば分かる、鬼ならお前のとこにも居ただろうがあれは別格だ」
「鬼なんてすぐに滅んでしまったよ。高い身体能力も数と知能の前には無力だった。そんなに良い出来なのかあの鬼は」
「見てれば分かると言った」
「ぬう……何故だか負けた気がする」
見守る二柱の神の顔は我が子を見守るそれであった。
その時にちょうど【勇者】と【地災】の戦争が始まった。
「ーーーーーーーーーーーーーー」
【地災】は鳴かない、されどその口からは重圧感を伴った波動が出ていた。
圧倒的巨体を誇り歩くだけで世界を更地にしうる【地災】である、生半な攻撃など意味はなく半端な実力など毛ほども役に立たない。
故に。
【地災】の前に立つのは三人。
先先代【勇者】である騎士団長。
魔王二体を滅ぼしあまつさえその理外の力さえも操る孤高の男。
先代【勇者】剣聖
鬼の内乱を自らの手で終結させ己以外の鬼を滅ぼした修羅。
今やその精神は白痴に近くただひたすらに剣を振る機械と化した。されどその冴えは絶技。哭く鬼の通った後には何も残らない。
そして今代の【勇者】ウェルス・ビー。
全てを手中に収めるが如く振る舞い、事実全ての争いを自らの手を使わずに終わらせた怪物である。
ちなみに彼が単独で戦場に立つのはこれが初である。
つまり。
「先輩方……どうして私を拉致して【地災】の前に連れてきたのですか!?準備も何もしてないじゃないですか!?私はあなた方と違って単身突っ込んで全員の首を落とすようなマネはできないんですよ!?」
慣れない状況にこれ以上なくテンパっていた。
「しかも先代の精神状況はあまり良くないですよ」
今の剣聖はぼうっとした顔で涙を流し続けている、ときおり呻くようになにかを言うがそれを聞き取ることはできない。
「ああん?んなことぁ分かってんだよ。それでも俺たちがあれを殺さにゃあ、俺たち以外が更地にされちまうんだよ」
「しかし!!」
「うるせえ、しのごの言わず戦え。俺を誰だと思ってんだよ。お前が戦えることなんざお前が赤ん坊の頃から知ってるっつうの」
「いや……それは、あれを使っても…」
「つーか、剣聖なら今がベストコンディションだ。見てろ」
騎士団長は剣聖へ向かって一言言い放った。
「お前から奪ったのはあのデカブツだ」
「あ…ああ……ああああ……ああああああああああああ!!!!!」
絶叫。
跳躍。
抜刀。
「ーーーーーーーーーー!?」
刀は刃渡りを超えるものを斬ることはできない。
そんな常識など。
剣の聖の前にはあまりにも脆い幻想に過ぎない。
「嘘だろ……」
【地災】は胴を縦に裂かれた。
巨体だろうが、なんだろうが、意味はない。
斬れないものなど存在しない。
それが今の剣聖である。
「これで終われば話は楽なんだがな」
しかし【地災】は死なない。
傷などなかったかのようにまた歩き出す。
「あれな、接地してる部分がある限り死なねえし止まらねえ。剣聖がどんだけ刻んでも無駄だ。俺でもあれを全部持ち上げるなんざできやしねえ。それはこの世界を持ち上げるのと一緒だからな」
「それじゃあどうしようもないじゃないか……!!」
「違うだろ、お前ならできるから連れてきたんだろうが」
「はあ!?いやいやいやそんなことできない無理無理無理!!私の力は予測することと計算通りにすることだけ……いや待てよ」
ビーの思考が加速する、あの巨体を浮かせることができないならどうすれば良いか、一つの答えを導きだした。
「落とすか」
「大正解だ後輩」




