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絶欲モンスター  作者: ジラフ
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決着


コタロウは辺りを見渡すが一面薄暗い瘴気に満たされて白い女などは全く見えない。


「あんまし時間はねえんだけどな」


早くもコタロウの体は朽ちつつあった。


「ソロも適当なこと言いやがる。白い女ってなんだよ雪女かよ」


愚痴を言うくらいの体力はまだ残っている。余裕たっぷりというわけにはいかないが。


そう言いつつも視線は抜け目なく、やがて白を見つけた。


「あれか」


たしかに真っ白な女だった。


なにもかもが白い、否、なにもかにもが白く塗りつぶされていた。


見るとわずかに擦りむいた手首からにじむ血液さえ白かった。


「確かにこりゃあ白い女だわ」


コタロウは両手を合わせた。


世界が動き出す。


突然目の前に現れた始祖にガルシュの脳内処理は追いつかない。


それ以前に太陽神が現れた頃からずっと放心状態であったのだ、追いつくわけがない。


「お前に頼みがある。少し手伝ってくれ」


「え……あ……え!?」


抵抗らしい抵抗もできずにコタロウに引っ張られて行くガルシュ。


驚くほどスムーズにソロ達のいた場所へと合流することに成功した。


「おかしいな……妨害の一つもない?」


「あの……始祖様……ですよね……」


「ん?そうだが」


「ああ……!!感激ですう!!」


突然ソロの声が響く。


「冬堂くん!!こっちに来ちゃダメだ。僕は攻略された!!」


「攻略ってお前……ああなるほどな」


ソロは五体をバラされ、離れた場所で串刺しになっていた。


頭だけで喋っているのだ。


串の代わりになっているのはおそらく脇差のような形になった瘴気であろう。


「流石に三回目からは動きを封じるように動き始めてね、流石に僕でも避け続けることは出来なかったよ」


「でも死なないんだろ?」


「まあね。今はヅヴァロが囮をしてるけど限界がくるよ。どうにもあの勇者にしろ太陽神にしろ相性が悪い相手ばっかりでね。ヅヴァロには運がないね」


「何言ってんだ。お前と一緒にいられる間が幸せなんだからそこで全部使ってるんだろうきっと」


「まさか……」


一瞬だけソロの顔が曇る。


「そんなことよりも早く【白愛】で瘴気消してくれたら嬉しいな」


「だそうだ。お願いできるか?」


「は、はい。始祖様の仰せのままに」


ようやく状況を見始めたガルシュは自分の周りが黒に満たされている事を認識した。


すっと瞳から人間味が失われていく。


機械のごとき瞳で瘴気を見つめる。


「くろい……くろいくろいくろい……嫌だ。……しろにしなくちゃ……清く正しい幸福の白に」


白の侵食は速やかに始まった。


「はやくはやくはやくっ!!」


瘴気が白に食いつぶされていく、


「そうだ、くろはしろにならなくちゃいけないんだ!!」


瘴気の範囲はみるみる狭まって瘴気はひとかたまりになり鬼となった。


同時にヅヴァロがその場に倒れた。液体のはずの体は傷つき色は蒼白である。


「ガああああああああああ!!!!!」



その体を刀で突き刺し鬼が吠えた。瘴気を失ってなお勢いは止まらない。


「黒は……白にいいい!!」


【白愛】といえど鬼を白く染めることはできず、拮抗状態とならざるを得ない。


「ガぁああああああああああ!!!」


「黙れ」


静寂がやってくる。


音はコツコツと響く足音だけだ。


これはコタロウの仕業ではない、体を復元したソロの威圧感によるものだ。


永劫を生きた始まりの魔王は久方ぶりにその姿を少年ではなく大人のものへと変えていた。


「……キレたか」


「そんなことはないよ。ただ少しばかりお灸を据えてやろうかと思って」


「それをキレてるっていうんだよ」


「そうなんだ。冬堂くんは僕に詳しいなあ」


仮面のような笑いを貼り付けたソロはすでに【結晶記憶】を展開していた。


「手助けはいるか?」


「いらない。僕だけでやる」


「そうか……」


「ガァッ!!」


不可解な動きで鬼はソロとの距離を無にする。


そしていつのまにかその刀は振られていた。


起こりはない、終わりもない。


ただ当然に水が流れるように刀の連撃がソロを襲う。


これこそが武人シズカが生み出した奥義が一つ。


【水連華】


「静さんの足元にも及ばないね」


全く同じ正反対の動きである。


ソロは鬼以上の精度、鬼以上の速さ、鬼以上の力で真っ向から手刀によって迎撃した。


結果は当然鬼が弾かれる。


「ッ!?」


距離を取った鬼は刀を鞘にしまう。


居合の体勢である。


あまりにも遠間、銃の間合いでその手を柄にかけた。


「次は【(とどろき)】かい?」


「ガァああああ!!」


刀はたしかに空を斬った。


同時に雷鳴の如き音が響く、それは空間の軋み。そうして斬撃はソロへと届く、間合いの意味を消失させる絶技である。


「未熟もいいところだ、僕でさえ八割まで到達できたというのに。直接の弟子が半分も至っていないだなんて」


斬撃を受けたのは鬼であった。またしても同じ技を自分以上の威力で返されたのだ。


「そして次はとうとう出すんだろう?初歩にして究極の技【天地】をさ」


ソロとの鬼は同時に刀を大上段に構えた。


ソロの場合は術式によって構築された魔力刀であったがそれは鬼の刀そっくりであった。


「すー……はあ……」


【天地】には大仰な術理など存在しない。ただの上段からの一振りである。


自然のままに定められた軌道をなぞるだけの剣術とも呼べぬような基本動作である。


ただし、それは一切の無駄なく、一切の過不足なく、一切の思想なく、全てを投げ捨てた境地にのみ極致へと至る。


防御など、回避など、迎撃など、全ては無駄。


究極の一刀の前にはただ受ける以外の選択肢など存在しない。


「ふう……終わりだよ」


故に。


鬼が倒れ臥すことになんの不思議があろうか。


全てを一刀で削ぎ落とされたのだ。


「全く静さんが見たらなんて言うか……」

















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