努力してもできないことはある
なんやかんやあったが、なんとかなったな
これで俺は森に帰れる
『介入を無効化、正常起動します』
おや?
『処罰の再開準備を開始』
あるぇ?それは無かったことになるんじゃ……
『高次元神には勝てなかったよ』
ヤベエこれ!?最悪だぁ!!
『処罰決定、零番の試練【聖地巡礼】を開始します』
うわー、ヤダヤダヤダヤダ!!!
そうだ二面者で身代わりを作れば……
「え?」ガバァ!!!
肉がっ!?
あんのやろう確かに痛みはなんとかするって言ってたなあ!?
俺の身体素材にすんのは据え置きかよ!?
ほら見ろよ
皆さんポカーンじゃねえか!?
長男次男も魔王もだ
そりゃあそうだろ
いきなり目の前で人の肉が身代わり人形になったんだからな!!
『不可、身代わりは認めない』
だと思ったよちくしょう!!
「どうやら始まってしまったようです」
何も言わずに去るのも癪だな
「私はこれから試練を受けます」
『転送開始』
「それではご健勝であらせられますように!」
せいぜい恩返ししてくれよ!!
げえ!?なんかぐーらぐーらして気持ち悪い
これがワープかよ
三半規管強くねえとダメだな
まあ、吐こうと思っても何も出ないどころか苦しいだけだけど
『目的地に到着』
やっとか
で、どこだここは
まあ、目の前に光るピラミッドがあるからここが聖地なんだろうが
『聖墳墓ピラミダスにて、邪教の反応あり。殲滅せよ』
んん?
俺に戦闘力ないの知ってるよなあ?
それなのに?
殲滅?
無理ゲーにもほどがある
『なお、【聖地巡礼】中の死は許容。ただし故意の場合死後の待遇は保証しない』
自殺はダメってことね
わあってるよ。死後を握られてんのは辛えなあホント
「あら?私の家の一つじゃないの」
クリア今なんつった?
「家ですか?」
「そうあれは聖墳墓ピラミダス。聖人の墓で私の分霊を祀る祭祀場」
じゃあこいつに任せればいいか
「あの中になにかを感じませんか?」
「信仰の力を感じるわ」
「分かりました」
「あと炎も関係してるはずにゃ!!」
邪教で炎、拝火教かな?
「行ってみましょう」
猫とクリアでなんとでもできるだろ
と思ったのが間違いだった
聖人と呼ばれるものは奇跡を起こした聖なる存在のことだ
それには付随するものがある
信仰と迫害
理解されぬ聖人は迫害の対象となるのは必然
ある種の運命とも言っていい
受け入れる他ない理不尽
迫害は聖人の隣人だ
つまり、迫害に対して聖性は機能しない
それに気付くのは手遅れになってからだった
※※※
「行ってしまったか……あの者は本当に何者なんだ?」
天使となったルシファーは兄に尋ねた
「分からない、だがあの人間が背負っている神の加護はおよそ人に与えられるようなものではない」
「随分と恵まれているようだな」
どこか納得した風のルシファーをルシフェルは諌めた
「違うのだ、加護と言ったがあれは呪いに近い。人に与えられるものではないというのは人の身では人の心ではとうてい耐えられぬ苦痛だからだ」
「それはどういう……?」
「かの聖人は凄まじい節制を自らに強いている。だがそれは聖人自らが望んでやっていることではない」
ルシファーの目が驚愕に見開く
「そんなわけないだろう!!あんな誓約をやらされて平然としてるのは信仰ゆえのものだ。そうでなければありえない」
唐突に第六魔王が口を開いた
「いいえ、あの人は転生者。しかも私と同郷よ。あの国のあの時代にそんな強度の信仰はないわ」
「じゃあ……なんなんだ……なんで耐えられる、なんであんな風に他者のために動ける」
「私は彼を見たわ。彼の魂はがんじがらめだった、呪いと加護が入り混じっている迷宮よ。おそらく喋ってることもやってることもあの人本来のものではない」
二人の天使の瞳が細められる
「転生者よ……お前の世界の神はどんな神だ?」
「善き神か?」
「分からないわ。私だって会って数分でこちらに来たもの」
「なるほど……では質問を変えよう。その神は我が子を愛しているか」
「……分からない……でもあんなことをできるのは愛じゃない」
「……主は自らに似せて人間をお造りになった。お前の世界はどうだ」
「それは一緒のはずよ」
「人は神の玩具か?」
「違うわ」
「人は自らの意思を持つか?」
「ええ」
「その意思は奪われても良いものか?」
「いいえ」
「人はそのために戦うか?」
「ええ、自由のための闘争はいつだって有ったわ」
「……主よ今一度だけ勝手をお赦しください」
天使は二度翼を棄て地に堕ちた
一度は主への燃えたぎる憎悪によって
もう一度は一人の人間への仕打ちに対する義憤によって
しかし、二度目の堕天ではその光が失われることはなかった
人を救うための堕天を行ったためである
主は二人を赦された




