17.傍にいてね
「ん、んん~!」
伸びをした亮太。
(ようやく帰れるな…)
今日一日は最悪だった。睡眠不足で授業は頭に入らないわ、それで教師に二度怒られるわ、掃除当番で階段を踏み外すわ…
(帰って寝るか。)
校門を出る亮太。
「ん?」
すぐ脇に、秋絵が立っていた。
「どうしたんだ?」
「少し、話さない?」
並んで歩く二人。
「昨日は大変だったよなー。」
「ホントね。予想もしてなかった状況だったし。」
「死を覚悟するなんて、この先の人生でもありえないよな。」
「アンタが勝手に覚悟したんでしょ?」
あんな状況で、助かるほうが奇跡的だよ…。心の中で突っ込む亮太。
「…秋絵。」
「なに?」
「お前…本当に力なくなっちまったのか?」
亮太の問いかけに、寂しそうに手を見つめる秋絵。
「朝起きたら、神霊石がなくなってたわ。神霊石ってね、持ち主の力が滞ると消えるんだ。」
「じゃあ、やっぱりなくなっちまったのか…」
うん。俯いて答える秋絵。
「気にしないで。アンタを助けるためとはいえ、私が勝手にやったことなんだから。」
「その原因を作ったのは俺だからなぁ…。手放しにしておくわけにはいかないよ。」
「気負いしないの。生きるか死ぬかだったんだから、つべこべ言わない。」
そう言われてもなぁと、返事に困る亮太。
「…。」
「…。」
二人の間に沈黙がおりた。歩みを止めることなく、進む二人。
「あ、あのさ…」
「な、なに…?」
亮太が口を開いた。
「あ、あの時にさ…約束事決めたじゃん。」
「…あの時って?」
「ほら…、秋絵と付き合ってることにしなさいってやつ…。」
「あっあの時のが…どうしたのよ…」
「も、もうやめるのかなって…」
学校の霊は、これで全て鎮めたことになる。これでもう、俺は秋絵とお別れだ。
「あ、あれは…別に…」
「もう…手伝うこともないんだし…。おっ俺はどっちでもいいけど…」
自分の意思を伝えられず、言葉選びに困る亮太。
「べ、別に続けてもいいわよ。…今更、別れたなんていうのも面倒くさいし。」
お互い、相手の目を見れずに困惑する二人。
「あ、アンタこそ…」
「なんだよ…」
「わ、私と付き合ってるって思われるのは…嫌じゃないの?」
「…。」
以前なら、他の男子にイジメられるかも知れないと考えただろう。
「…いや、」
今日は違った。そんな感情はなかった。
「嫌じゃないよ。」
ふっと笑った。折りしも秋絵と目が合う。
「…。」
「…。」
恥ずかしくなり、また目を見れなくなる二人。
「あ、あのさ…」
「な、なによ…」
「その…秋絵が嫌じゃなければさ…」
「はっきり…言いなさいよ…」
「も、もし嫌だったら断ってくれてもいいからさ…」
腹を決め、秋絵の方を見つめた。意識することなく目が合う。
「お、俺と…つ、付き合ってよ…」
「えっえと…」
立ち止まる二人。
(やっぱり…だめだよな。)
まだわからない…まだ…。沈黙の間に、希望と絶望が入り混じる。
「しっ仕方ないわね…」
「えっ!?」
キッと前を向き、再び歩き出す秋絵。
「し、仕方なくだからね!…他に、適当な人がいないからだからね!」
「わ、わかった。それでいいから。」
言葉こそ優しくはなかったが、亮太の心は嬉しさで一杯になった。
「それじゃあ…また明日。」
「うん…。あ、そうだ!」
亮太に向き合う秋絵。
「明日の七時二十分、私の家に迎えに来なさい!いいわね?」
「はい、お嬢様。」
誰がお嬢様よ?バカにしないでよ?
「それじゃあ、明日ね。」
「ああ…。」
秋絵を見送り、角を曲がる亮太。
「…ふぅ。」
(仕方なく、か。)
自分の傍に秋絵がいてくれる。それだけで、亮太は嬉しかった。
―完―




