【足跡のない資料室】報告書は長い
事件が片づいた翌朝、警察署では清宮が珍しく機嫌の悪い顔をしていた。
机の上には報告書の山。
その中には、区民ホールの資料室で起きた件が、細かい書類として積み上がっている。
「砧、お前、報告書まだか」
「書いてますよ」
「遅い」
「現場の整理が多いんです」
「現場の整理より先に、上への説明が必要なんだ」
「上は何をそんなに気にしてるんです」
清宮は小さくため息をついた。
「再開発の件だ。ついでに、あのホールの件は、議会側が妙に神経質でな」
「神経質?」
「ああ。どうやら、資料室の書類の順番まで気にしてる人間がいるらしい」
砧は眉をひそめた。
「……それ、事件より面倒じゃないですか」
「面倒だ。だからお前がやれ」
「俺一人でですか」
「七五三田も今回いただろ」
「いましたけど」
「なら、依頼の一部アフターフォローとして手伝ってもらえ」
砧は頭をかいた。
どうやら、事件の裏で警察内部もずいぶん揉めていたらしい。
そこへ、古沢から連絡が入った。
砧は受話器を取る。
「どうしたんですか」
「お手柄だったな」
「コンサルが入っただけですよ」
「だが、七五三田とはうまくやってるらしいじゃないか」
「ええ、だと良いのですが」
「依存しすぎるなよ。飲み込まれるぞ」
「紹介しておいて何言ってるんですか。まだやること残っているのでもう切りますよ」
電話を切った砧は、しばらく天井を見上げていた。
思い浮かべるは今回も解決に尽力してくれた人物。
先輩からの忠告により不安がかげる。
しかし、ふとこの後の片付けのことを思い出しテンションが下がる。
何よりこの後あのお金大好きコンサルをどう手伝いに繰り出させるか。
目下の悩みにより、先輩の電話から生まれた不安はどこかに霧散していた。
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上司に命令されたの日の午後、砧は優奈と喫茶店で向かい合っていた。
彼女は通帳を見て、満足そうに目を細める。
「やっぱりお金はいいわね」
「お前、結局そこか」
「当然でしょ。仕事は金よ」
「身もふたもないな」
「人間そんなもんよ。考えているようで人は考えないものなの」
「そうか?」
「今回の事件だって、たかが紙一枚で人を動かした」
砧は苦笑した。
「もう行くわ。いつでも高額報酬事件はウェルカムよ」
「結局そこに戻るのか」
「愚問ね」
砧はため息をつき、それでも少しだけ笑った。
次会うことがあれば、それはまた面倒な事件になるのだろう。
だが、こうして終わったあとに少しだけ笑えるなら、今はそれでいい。
窓の外、いつも通りの日常が流れていく。




