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016 スカラベと「何もないところ」へ進む道 その1

 スカラベが14:00にログインして、ぬっと神殿の祭具作成室に打ち込んだ杭から出てくると、フリカッセの声がした。


 「スカラベさん、もしN40に行くおつもりなら、いろいろと話しておくべきことがあります。」


 「何故、わかった?」


 「死と龍の山脈や爆雷鳥の巣を見ていました。」


 「どうやって?」 


 「私はこれでも変転神の神官です。ありとあらゆるものが私の視界に変転し、その変転は誰にも気づかれることはありません。これは、自然なことです。例え、事務作業をしていても、それは遠くを見ることを邪魔しませんし、逆もまた然りです。私が昔住んでいた都市では、誰もが似たようなことができました。別の都市で有名だったいたずら小僧はいたずらをする前にしようとしていたことを当てられ、一ヶ月もしないうちに良い子になりました。いくつもの都市で指名手配された犯罪者は何もできず、ただの善良な市民となりました。」


 「なんて名前の都市だ?」


 「「混沌都市」それが私の生まれた都市で、何時しか姿を消した都市です。別名を変転都市といいます。N40には、その都市と交流があった都市があり、同時期に姿を消しました。名を「夢幻都市」、別名を矛盾都市といいます。」


 「ふむ?」


 「私達が当たり前に利用している杭というものは、混沌都市と夢幻都市の共同開発で生み出されたものです。今もなお、それらは動いています。つまるところ、それらの都市は見えなくなっただけなのです。私の変転する視界をも弾いている何かが、杭を動かしているのです。」


 「どういうことだ?」


 「昔から、夢幻都市や混沌都市には都市外部からの術的な干渉を防ぐ機構が存在していました。それらは、都市外部にも輸出され、例えば冒険者ギルドなどに設置されています。その機構は、杭さえも防ぎます。無理やり見ようとすれば、「なにもないところ」としか見えないのです。冒険者ギルドも、私の変転する視界には、「なにもないところ」にしか見えないのです。私は、狩った獣を何度も買い取ってもらったことがあります。つまり、正しい手順を守らずに干渉すると、そこは「なにもないところ」になります。そして、あなたが死と龍の山脈に飛んだとき、何も目につかなかったのは、同じような機構があちこちにあるからです。決して、飛んで横着をしてはいけません。飛んだら、何も見えなくなります。」


 「爆雷鳥が来たときに言っていたことと矛盾しないか?」


 「爆雷鳥は、ここに都市があることを知っています。あの鳥だけが、その機構をすり抜けられるのです。おそらく、あの鳥は人工生物です。複数の人間の魔力が、あの鳥に混ざっています。百羽狩って解剖してどれもそうでした。あの鳥は、自分にとって脅威となるものがない都市だけを滅ぼしました。もともと、龍はあの鳥を敵視していませんでした。あなたが引き受けた依頼は、あの鳥が最近調子に乗っているから、怖気づかせてやれという意図のものでした。爆雷鳥の巣の跡をよく見なさい。残留した魔力が、なにかを示している可能性があります。爆雷鳥の巣から、どこかを示す魔力の波を受け取ったことがあるのですが、不完全なものばかりで、復元できなかったのです。巣の跡に、それらの完全なものがあることは、十分あり得ることです。」


 「爆雷鳥が、どこかの都市で生み出されたものということか?」


 「新しく生き物を生み出すことは、優れた神官には容易いことです。現存する獣の半分近くが、人間の手によって新しく生み出されたものなのです。ただ、爆雷鳥に仕掛けられているであろうものは、他の獣には見られないものです。造った誰かは、相当に頭が切れるようです。習性上、迂闊に近づくことはできないあの鳥を殺せること自体がなにかの証明として機能し、迂闊に近づいた者はみんな餌になる。いくつもの力を高水準で持っていることが都市に入る鍵となるとか、魔法に長けた都市の上層部が考えそうなことです。しかし、あんな生き物を作っている都市の話なんて、聞いたことがありません。」


 「目覚めない旅人が、混沌都市や夢幻都市に入っている可能性はあるか?」


 「そうだとしても、私は恐らくそれに気づけません。あれらの都市の魔法技術力は異常でしたから。ですが、ここ第五世界の旅人で、別の都市に居住を移したものの記録はありません。」


 「第五世界?」


 「この世界のことです。これまでに五つ世界が生み出されましたが致命的な破綻をきたしていないのは、順番的に最後に生み出されたこの世界だけです。順番的に一番最後に生み出されたと言っても、それぞれが生み出された時期は一日も変わりません。ある日、第一世界への往来が出来なくなりました。その日から一ヶ月経たずに、他の全ての世界への道が閉ざされたのです。変転神に聞いてみると、それらの世界では旅人がどこかに消えてしまったとおっしゃるのです。それどころか、人の住めるところもなくなってしまったと。道が閉ざされたのは、破滅した原因の何かが、こちらの世界に来る道を閉ざすためだと。」


 「では旅人がその道を使った記録は?」


 「ありません。」

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