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第15話 Boooon!

 

 異世界に来てからすでに一週間。


「ふぅ、これで一通り在庫の使い道が分かった感じかな」

「そうだな。結果として悪くない取り引きだったぞ、ゴリョウ」


 神楽襲撃によって受けた損害を不問としてもらう代わりに、在庫商品(地球アイデア産)の使い方をレクチャーする、という取り引きは幸い船長も納得の結果となったようだ。


 売り方のアイデア出しとかもしたけど、マーケティング云々以前に、この世界の常識すら曖昧な俺の意見が役に立ったのかは正直分からない。でも商人としても百戦錬磨っぽい犬耳船長が「悪くない取り引き」と言ってるからには、何かしら商機を見出してはいるのだろう。


「俺的にはエログッズの説明が地味にキツかったけどね。なにが悲しくて、異世界で船長オッサンたちに電○コケシやピン○ローターの解説しなきゃならないんだって」


 在庫のなかに結構な数のアダルトグッズがあったせいで、それの説明をしてる場面は酷いものだった。なんせ犬耳オッサンどもに囲まれながら、ソレっぽい二股の木に電○コケシを当てて「ヴーーン!」してる光景は控え目に言っても地獄絵図でしかなかったから。


 当然ながら未成年……なんて定義があるのか知らないが、大人のオモチャにはまだ早いデューとハドリーの2人は、その時は外出させていたのでコンプライアンス的な問題はありません、はい。


「まぁそう言うな。ジ・エラ大陸(ここ)ではエログッズなんてそもそも一般的じゃ無いからな。これはこれで間違いなく商売として成り立つと思うからよ。あの地獄の時間も無駄にはならねぇよ」


 何はともあれ、これでひとまず船長に対する借りは無くなった。まぁ、今日まで寝食を世話して貰ったりとかの恩義は別としてね。


「ようやくこれで神楽かぐらを探しに行けるってわけだ」


 在庫商品のレクチャーだけでなく、今後この異世界でどう行動してくかも当然のこと考えていた。


 俺の大きな目的は二つ。

 一つ目は地球への帰還方法を探すこと、そして二つ目は神楽と会ってもう一度話し合うことだ。


 神楽と会って何を話すのかはぶっちゃけ決めてない。ただこのままお別れじゃ、スッキリできないことだけは確か。

 それに神楽のヤツなんか色々知ってそうだから地球への帰り方も知ってるかもしれないしね。逆に帰る方法は無いって言われるかもしれんけど……


 とにかく地球に帰れるのかどうかハッキリしないと、今後の身の振り方にも影響が出てくるってもんだ。その為にも神楽を探して、あわよくば○○を△△して□□に××するのだ……ごくり。


「なんかアホなこと考えてんだろ、ゴリョウ」

「いやだな船長。いま考えてたことがアホなことだったら、人類全員アホの子ってことになっちゃうから」

「ほんとに何考えてたんだよ……ったく。で、カグラを探すにしろ元の世界に戻るにせよ、まずは情報集めのために王都に行くってのは予定通りか?」


 兎にも角にもまずは情報収集ということで、定番だがヒトモノカネの集まるここウェスタリア王国の首都に行くことにした俺。


 それに結局はデューとハドリーの2人も俺と一緒に行動することになった。


 ハドリーは記憶喪失でありながら、秘密のありそうな自らの生い立ちを知るため。それには、この先も神楽が関わってきそうだし、その時に俺といた方が交渉の余地がありそうって考えも持ってるだろう。その期待に応えられるかは分からんけど、まぁそこは頑張るしかない。


 デューの方はもっと単純。ド田舎だった故郷の島を出て、広い世界を見て回りたいってやつだ。困ってる俺やハドリーの力になってやりたいという性格もそうだが、若者らしい純粋な好奇心が行動原理の根っこにあるから、この国で最も栄えてる王都に行くことに興味を持たないわけがない。


 まぁ色々と考えてみたが、なんのことは無い。

 それぞれ目的はあってもその手段があやふやな、根なし草の俺たちがやれる事は『とりあえず王都に行ってみるか』くらいしかないのである。


 行き当たりばったり感は満載だが、他に良い案も浮かばないのでしょうがない。


 俺は神楽に貰った収納アイテムの腕輪を、ポンと叩きながら船長に言った。


「船長の好意で旅に必要な準備も出来たしね。こういうのは勢いも大事だから、とりあえず出たとこ勝負してみるよ」


 王都までの道のりは遠いが、有り難いことに食糧などは船長が船旅用の保存食などを融通してくれた。そういったものをこの収納アイテムに入れてあるのだ。


 あとは途中の大きな街で冒険者になって、日銭を稼ぎながら何とかしていくつもりだ。ちなみにここ港町クィナもそこそこ大きいらしいが、軍が幅を利かせてるせいか冒険者ギルドは小さな出張所みたいのがあるだけで登録とかは出来ないらしい。


「そうか。それなら王都までは行かねぇが、途中のエスロイまで行く〈ドッグスター商会(ウチ)〉の隊商キャラバンがあるから、その馬車に乗ってけばいい。道中で雑用やらはしてもらうがな」


 そういって船長は勝手に、だがこちらにとって有り難い提案をしてくれた。


 ツンデレ気味だけど犬耳船長ってマジで面倒見が良いよね。


「ありがとう。雑用くらい喜んでするよ」

「まぁワイバーン倒しちまうデューなら道中、魔物が出た時には護衛にもなるだろうしな」


 そういや聞いてなかったな。ワイバーンってこの世界ではどんな存在なんだろう?


 軍船にいた魔法使い達が何匹か倒していたから、人類にとって絶望的な相手ってことはないだろうけど。それにしたって個人が徒手空拳ステゴロで倒しちゃうなんてのは普通にありえるのか?


「ワイバーンの強さがどんなもんか、だと? ありゃ冒険者でいったら青銅級のパーティがなんとか倒せるくらいじゃねぇのか。むろんワイバーンは単体って条件でな」


 冒険者はその実力に応じてギルドからランク分けが為されているという。


 そのランクは強い方から、


『聖龍級 > 黄金級 > 白銀級 > 青銅級 > 緑石級 > 黄土級』


 という順番の区分けだ。


 とは言え、身体的・魔術的な強さは目安であって、運良く功績が積み重なり、ランクが上がることもままあるらしい。当然、その逆もまた然り。


 ただ世間一般で一人前プロの冒険者と見なされる境目が青銅級とのことだ。そして運で成れるのもこの辺まで。


「俺も詳しくはねぇが。そもそもワイバーンと一対一タイマン張ろうなんざ、白銀級とか、そういうヒトとして一線越えてるようなヤツらじゃねぇと、普通は考えもせんと思うぞ?」


 どうやら白銀級以上ってのは、冒険者として見れば一流。だが人として見ると(ちから)や頭のネジがぶっ飛んでる、ちょっと近寄り難い存在みたいである。


 戦闘時の条件とか得手・不得手で色々変わんだろうけど、それでもワイバーンを単独で撃破したデューの強さはハンパじゃないってことだ。


 果たして俺の方はどうなんだろうか?

 冒険者として成り上がることが目的じゃないけど、やはりそこは男として気になる。


(最強無敵の天下無双なんてガラじゃないけど、やるからには一端いっぱしの冒険者にはなりたいよな……あとチートだってワンチャン諦めてねぇし!)


 俺は船長へ大いに感謝を述べながら、徐々に動き出した異世界ライフに少しだけワクワクしてるのを自覚するのであった。


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