恋を占う
「新しい仕事には慣れた?」
「まだ。引っ越しや転職から1ヶ月経ってないから全く慣れないわよ。毎日クタクタよ」
「あら、それなのにこんなとこ来て大丈夫なの?」
「ちょっとぐらい息抜きさせて」
「まあ、いいけど。そういやここって前の職場に近いけど大丈夫?」
「やめてよ。縁起でもない」
「あら、ごめんなさい」
「マスター、何か甘いお酒がいい。うん、マスターのオススメで」
「マスターあたしにもおかわり」
「兄さん、というか、姉さん…ややこしいわ。今度から姉さんって呼ぶわ」
「それがいいわ。あたしの事も義姉さんって呼んでもいいのよ」
「冗談! 無理。あんたは雅志」
「だから雅志言うな! それで、ロージャン様がどうしたの?」
「ああ、うん。姉さんが紹介してくれた職場」
「いいとこだって聞いたわよ」
「うん。そうなんだけど……」
「どうしたの? 実はブラックだったとか?!」
「いや、それはない」
「じゃあ、なんなのさ。もったいぶってないでさっさと言いなさいよ」
「いい会社なの。いい会社なのはわかるの……でもね、出会いがない!」
「なんだそれくらい」
「それくらいじゃないわ!! いい! おっさんばっかなの! 珍しく若い人いると思っても、その人は既に結婚してるの!! ねえ、分かる!! 私の気持ち!!」
「……ロージャン様ったら過保護ね」
「過保護! 過保護って言っていいの?! 私たちアラサーよ! アラサーの女に過保護にする意味が分からない!!」
「やめて! まだ二十代よ!! そんなおばさん臭い言い方しないで! 仕方ないでしょ。あんたの方が先に死んだんだし、ずっと会えなかったのに、いざ会ったらあんたは変な男に引っ掛かった後だし」
「うっ……。それは、そうだけどさ、でも、新しい出会いが欲しいんですよ」
「……新しい家の周辺で探せば?」
「それも考えたんだけど、仕事慣れてない内から男漁りはしたくない」
「真面目か……いえ、職場で探そうとしてたから真面目ではないわね。不真面目でもないけど」
「だから悶々としちゃってここに飲みに来たのよ」
「そう、新しい恋が出来るといいわね。マスター、この子が新しい恋が出来るように雪国ちょうだい」
「素敵な恋が出来ますようにってマスターも願って!!」