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英傑襲来

強さ最上位ランクキャラの登場回です。

一行は逃げ延びることが出来るのでしょうか。



街道を進み大きな川を目指す。

そこから川沿いを南下して目的地の港湾都市に向かう。


もし村人が保護を求めるなら、治安の行き届いたこの街だろう。

生き残りがいればだが。。。


「なあ、アイン」

「お前、街に知り合いはいるのか?」

カイルが聞く。


「。。。知らない」

そりゃそうだ。

俺が知る限りでも、親戚や知り合いの類の話は聞いていない。

山間の小さな村と交易があったというだけの細い縁だ。


「そうすると、街に保護してもらうことになるか、うーん」


「そんな心配はいらんよ」

老魔術師が口をはさむ。


「その子には、わしにも少なからぬ縁がある」


ナージャは少年の髪をやさしく撫でる。

「それに、その子の黄金色の髪。わしらの言い伝えと何らかの関係があることは疑いようもない」


「伝説の子そのものなのかどうかはわからんが、見極めは必要であろう」

「何より、バカ弟子の息子じゃ。わしにとっては孫みたいなものじゃしな」

笑みを浮かべて言う。


「お師匠様それじゃあ」

ミリーが笑顔で問う。


「ああ、これからも一緒じゃ。ミリーもその方がうれしかろう?」

にやにやと弟子をからかう老婆。


「。。。」

赤くなって黙り込む少女をアインは、不思議そうにみつめた。


一行が街道を進むと、おおきな川が見えてきた。

「おー見えてきたぞ。あれがレッドリバーだ」


対岸が見えないほどの長大な川幅を持つその川は、圧倒的な水量を湛えていた。

海と見まごうほどの広大な水の奔流に目を奪われる。


「なんで紅いレッドリバーなの?」

アインが素朴な疑問を口にする。


「この辺りは、夕方になると真っ赤な夕日が沈むの」

リタが説明してくれる。

「そうすると、この川の河面のすべてが見事に赤く染まるのよ」

「。。。ま、そういうこった」

カイルの歯に物の詰まった言い方が引っ掛かった。

子供に聞かせられない逸話もありそうだな。



街道を南に下ると、街が見えてきた。

ようやく目的地に着けると一行が息をついたその時、


街の方角から一人の男が歩いてくるのが見えた。


冒険者風のその男は旅装束ではなく、今から戦に出る戦士のいで立ちで一行に接近してきた。

なにか嫌な感じがする。


身の丈は優に2メートルを超える大男。

鋼のような筋肉をむき出しにし、首筋や肘、膝などを覆う部分鎧を着けている。

頭髪は無く目つきは鋭く、肉食獣を想起させる。

武器は持っていないようだが、その肉体そのものが凶器であることは疑いようもない。

その五体こそが、長い年月をかけて完成した、最も洗練された暴力の形を現わしていた。


一行が、素通りしようと軽く会釈して横を通ると。


「待て」

男が威圧的に声をかけてきた。


「。。。何か俺たちに用か?」

カイルが外套の中で剣に手を伸ばす。


「お前たちに用はない。」

「用があるのは、その金髪の子供だけだ」


「どういう意味だ?」

カイルの問いには答えず、男はアインに話しかける。


「お前、ヒャクガ村にいた金髪の小僧だな?」


「っ!」

アインは緊張に身を固める。


「やはりそうか、お前には悪いがこれも仕事なんでな」

男がそういい終わる前に、カイルはショートソードを抜き払って横なぎに斬りかかる。

カイルが動くと同時にリタがアインの前で壁になる。


男はその斬撃をよけようともせず、そのままじっとしている。


グン!

タイヤを棒でたたいたような音。


「なっ!」

驚くことに、男の肉体は血を撒き散らすことなく、剣戟をはじき返した。


「!」

「そんなナマクラでは、俺の体に傷を付けることは出来んぞ」


悠々とそう言い放った男は、リタには目もくれずにアインを捕えようとする。


「くっ」

行く手を遮るリタ


男の目に向けて投げナイフを放る。

細く研ぎ澄まされた小さなナイフは男の腕の一振りで弾かれた。

弾く動きが予備動作につながり丸太のような豪腕がリタを襲う。


「ぐっう」


あまりの勢いに体ごと飛ばされる。


「リタ!」

横眼で追い無事を確かめる。


空中でバランスを取り直し着地した。

受ける瞬間に自分から飛んで衝撃を受け流したようだ。


男の前。アインは無防備に立ち竦んでいる。

邪魔がいなくなった男はアインの頭に手を伸ばす。


男の手が触れると、像が歪み、伸ばした手が素通りした。


「?」


幻影魔法


すべてが動き出した時に、ナージャの魔術が発動していた。


「ほう、魔術師か」

男が不敵に笑う。


少年の形を取っていた像は、その歪みを大きくして周りの景色まで歪み始める。

その魔法に触れた男は、自らの平衡感覚を失い、今地面に立っているのか分からなくなった。


「この程度の目くらましで俺は止まらんぞ」


そう言って、男は精神を集中させる。

自らの足に神経を集中することで、現実で立っている地面を把握する。

すべての力を足先の一点に向けて爆発させた。

特殊な体術により増幅した力が大地を抉る。


極技:砕踏崩地


水面に波紋が広がるように、衝撃が周囲に向かって走る。


幻影は霧散し、そこに巨大なクレーターができていた。

半径5mのすり鉢状に地面がえぐられ、その中心に男は佇んでいる。


大地はえぐられ不規則に隆起しており、人が成したと言っても誰も信じないだろう。


一行は突然の衝撃に立っていることも出来ずにいた。

それぞれ地に膝をついて支え合っている。


無茶苦茶だ。こいつホントに人間か?


「思い出した。あんた崩山拳の使い手、鋼のゴウライか」

カイルがその男の通り名を言い当てる。


「。。。俺の名を知るか小童」


油断せず相手を見据えながら言葉を吐く。

「東方世界で負けなしの英傑と聞いた」

「あんた程の男が子供の誘拐とはな」


カイルの嘲りに眉一つ動かさず男は獲物を定める。


アインはナージャとミリーに守られる様に囲われている。

目を細めてそれを見るゴウライ


剣を手に立ち上がりながらカイルは問う。

「聞かせろよ。子供一人のために、あんたの名前を貶める理由ってやつを!」


立ち上がる動きを跳躍に切り替えて数メートルの距離から強襲する。

この男の体に斬撃は効かない。

攻撃が通るのは鍛えられない目しかない。


顔を攻撃している間は防戦するしかないはず。


その読みは相棒にも伝わり、リタはいつでもナイフを投げられるように様子をうかがう。

しかし、歴戦の英傑は自分の弱点の対策をしていた。


ゴウライは手を顔の前で合わせ、祈りの姿勢を取る。

そして一歩また一歩とその姿勢のまま歩を進めた。

カイルは怯まずにショートソードを叩き込む。

目に届くその瞬間、軌道を変えられ斬撃は空を切る。

リタがすきを見て死角から放ったナイフも弾かれてしまう。


その動きは、視界を遮らず頭部を保護し、一分の隙もなく常に弱点を攻撃から守った。


カイルによる斬撃の手が止まる。

その隙を逃がさずゴウライの手刀がカイルの体にめり込む。


「カイル!」


リタがカイルに注意を向けたその時、ゴウライが地を蹴った。

前には魔術師2人。


このまま、圧し通るは容易いと軽んじての強襲。

しかし、すでにナージャの術式は完成していた。


土傀錬成ゴーレムクリエート


幻術の類は意味が無いと踏んでの力勝負だ。


10メートルを超えるボルドベアそっくりの土塊人形が現れ、声なき雄たけびを上げる。

その圧倒的な質量をゴウライにぶつける。


さすがの英傑も単純な力勝負は分が悪いと踏んで、仕切り直しを図ろうとする。

それをさせてはこちらが不利になる。

ゴウライが引くとそれに合わせて土熊ゴーレムが追う。


ゴウライは土熊ゴーレムの攻撃を受けながら冷静に戦闘の組み立てを行う。

戦士が復活するとこちらが不利だ。

早めに決着をつける!


土熊の攻撃を防いでいた防御態勢を解き。

打撃は打撃で応戦し、切り崩す。


崩山拳の極意。


打破連山崩


攻撃を攻撃で打ち返す自滅技だが、鋼の肉体を持つゴウライにとって戦いの趨勢を逆転させる得意とする技。


土熊ゴーレムが攻撃する。ゴウライがそれを打ち返す。轟音が響く。

土熊ゴーレムが攻撃する。ゴウライがそれを打ち返す。爆音が響く。

土熊ゴーレムが攻撃する。ゴウライがそれを打ち返す。亀裂音が響く。

土熊ゴーレムが攻撃する。ゴウライがそれを打ち返す。破砕音が響く。

土熊ゴーレムが攻撃する。ゴウライがそれを打ち返す。崩音が響く。


土熊ゴーレムが攻撃するたびにその形状が崩れ、辺りは土煙にまみれる。


土熊ゴーレムが完全に停止する頃に視界が晴れた。


そこに、金髪の子供と冒険者の一行の姿は無かった。


「。。。逃したか」

ゴウライはにやりと口元に笑みを浮かべ、つぶやく。


「なるほど、世界の危機とやらもまんざら嘘ではないようだ」


その意味するところは不明だが、自分をてこずらせる手練れが絡んでいるのは間違いなさそうだ。


東方の英傑は久しく忘れていた血のたぎりを感じていた。



危機一髪のところで何とか逃げ延びました。

一行はこの後どうするのか、お楽しみに。


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