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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
一章 少年との出会い

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黒梟襲来

一行は森人エルフの里へ馬車を走らせる。


馬車は、草原の向こうまで続く轍の跡を頼りに進んでいた。

草地に刻まれた傷跡は旅人が通る標であり、人々の往来を示す。

森人エルフと交流があると言う長の言葉は本当のようだ。


しばらく進むと前方に人影が見えた。


カイルが目を凝らすと、外套ローブを着た人間、男のようだ。


こんなところに人が?

「人影が見える」

皆に知らせる。

老婆は目を凝らし、それが追手だと気づくと、すぐに馬車の速度を上げるように指示する。

「急げ、あれは追手の本隊じゃ、今までより手ごわいぞ」


ナージャは、以前接触してきた男が所属している部隊を思い出す。

黒梟、特に疾爪と呼ばれる特別班の任務達成率は99%と言われていた。

評議会の中でも戦闘力は1,2を争うほどで、個別の能力においても群を抜いている。


気安く手を振るその男は、猛スピードで通り過ぎる馬車を見送る。

馬車は男から遠ざかり、なお速度を上げた。


カイルが男との距離を離したと安心したその時。


「ひっどいなぁ。挨拶してんだから、止めてくれてもいいじゃんか」

友人のように語りかける男の姿が御者台にあった。


「なっ!」

その男は驚いたカイルを突き落とし、馬車を止める。

すぐに走り出せないように、動物の頭を模した風防を蹴り飛ばし、魔法の火を消す。


一行は馬車から飛び降りて、男との距離を置く。


お互いに対峙し緊張が走る。

突き落とされたカイルが心配だ。

リタは相棒の安否を気にして辺りを探すが見つからない。


「よそ見してんなよ、ねえちゃん」

耳のすぐそばで男のささやきを聞き、戦慄してナイフを振るう。

その切っ先は男の姿を捉えられず空を切る。


いつの間にか元の位置にいる男に不気味さを感じるリタ。

「あんた、何者なの」

皆を背にして男に問いかける。


「魔術師評議会、黒梟部隊、疾爪」

「っ!」

その名は冒険者仲間に聞いた事がある。


魔術師評議会お抱えの殺し専門班。

「噂に聞く皆殺し部隊かい」


ザジはおどけて訂正しようとする。

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。そんな物騒な噂がたってるのか?」


「ああ、女子供も容赦無く殺すって有名だよ。違うのかい?」

リタは時間稼ぎで会話を続ける。


「こっちはただ任務を真面目にこなしてるだけなんだがなぁ。ただ目撃者を出さないためにやりすぎるってことはあるがな」


巷の噂の多くは悪名である。

それはこの集団が戦闘に卓越し容赦がないことを意味する。


「そろそろ準備はいいか?」

「お見通しかよ」


リタはナージャに声をかける。

「ばあちゃん、手伝ってくれるかい」

「この程度お主らだけで追い払ってみろ。それができなきゃ、これから先辛いぞ」


「舐められたもんだぜ」

とは言うが、ザジの内心は婆さんが参戦するかハラハラしていた。

手を出すつもりがないと聞いて、顔には出さずに歓喜した。


リタは老婆をあてに出来ない事に舌打ちして、

「アイン、練習通りやれるかい?」

「うん!」


「じゃあ、いくよ!」

リタの陰に隠れて、翆脚鞭すいきゃくべんの準備は完了していた。

翆緑色の鉄槌がザジに向けて突き刺さる。。。はずだった。


「おせぇよ」


アインが跳躍したその瞬間を狙って、ザジが蹴る。

少年の体が吹っ飛び、地面に叩きつけられる。


「アイン!」

ミリーが駆け寄る。


リタは油断せずにザジの動きを追う。

彼女は内心焦っていた。

作戦では、背後に死角をつくり、翆脚鞭の弱点である初動の溜めの時間を稼ぎ、死角から叩き込むはずだった。

相手が動いても前衛のリタが牽制して邪魔させないのが、この連携のポイントだ。


動けなかった。


リタはザジの動きを止めることが出来なかった。

いつの間にか死角に回り込まれ、アインの技を止めていた。


倒れたアインにミリーが回復魔法を掛けている。


ザジはリタに目もくれず少年を捉えようと近づく。

ミリーがアインに覆いかぶさって、ザジが伸ばす手から守ろうとしている。


リタがザジの背中めがけてナイフで突く。

ザジの体はそこにはなく、ナイフが体に吸い込まれたと錯覚する。


ザジは軽業師のような身のこなしで跳躍し、リタの攻撃を避けた。


そのままリタの背中を踏んで地上に降り立つ。

バランスを崩したリタはミリーのすぐ横に倒れこむ。


ザジが余裕をもって着地しようとした瞬間、草陰に隠れていたカイルが強襲する。

剣筋鋭く切り付けるカイル。

空中姿勢のままでは避けられない必殺の剣。


ザシュッ


ザジの胴が真っ二つに両断される。

手ごたえのなさに、驚くカイル。

ザジの体が草の束に代わり、辺りに草が舞う。


「変わり身って言うんだ。おもしれーだろ」


瞬間的な攪乱かくらんと陰影による姿隠しで一瞬の判断が狂う。

カイルは草の束を、切り付ける瞬間までザジと誤認した。


カイルが介入したことで、人数的に有利になったかと思われたが実力の差がありすぎた。

カイルはふとしたことに気づき、それを口にした。

「ちょっと待て、その草束ここに来る前にその辺に隠してたのか?」


「は、はぁぁぁぁぁぁ?!ち、ちげーし、隠してねーし」

ザジが、あわてて否定する。


本当はここに来る前に準備して馬車が止まることを計算していた。

まだ数本隠してある。


それを想像した一行は皆でそれぞれ突っ込みを入れる。

「え?わざわざそのために」

「それ東方の隠密術だよな。その中でも派手過ぎて使えないって。前準備もいる見世物用だって聞いたことあるぞ」

意外に愉快な性格らしい。


「うるっせぇーーーーー!てめぇら弱ぇくせに、がちゃがちゃ、うるせーんだよ!」

さっさとガキを捕まえてずらかるかと思った所で、少年の姿を見失う。


ザジが話し込んでいた隙に、回復したアインはゴンザに教えられた死角の支配を行っていた。

ザジの顎下に滑り込み、フェイントで視点をずらし視覚を混乱させる。


「っ!?」


背の低いザジが、慣れていない自分より背の低い相手に翻弄される。

左後ろの死角に回り込み、踏み込むと同時にザジの右ひざ裏を蹴る。


「くっ。こいつ!」


ザジもその反射神経は並みの戦士ではなく、膝を刈られる前に右足を上げて避ける。

アインの攻撃はそこで止まらず、さらに回転し重心を支える左足を刈ろうとする。

そこでもザジは驚異的な反応で左足のみで後方回転跳び(バク転)で回避した。


しかし、その卓越した身のこなしがザジの敗因になる。


アインは、そこで天を突くように地から伸びた一本の楔となる。

七星連結により鋼の強度をもってザジの背骨を砕く。はずだった。


その瞬間、ザジは自分がスローモーションのように動いているように感じた。

アインが狙った背骨を通過し、その鉄杭が貫いたのは、男なら絶対避けたい急所。


「が☆〇☆彡ぐぁ▽ぁT!」


声にならない苦悶の絶叫を上げ、泡を吹いて倒れた。


「うわぁ、えぐ」

カイルはその様子を見て、さすがに敵に同情する。


女性陣は

「キャー、アインばっちぃから早く手を洗いなさい」


ひどい。。。


一行の危機はこうして何だかわからないうちに過ぎた。


。。。


先ほどの闘いの推移を3人の追手が観察していた。

一行が走り去った後、姿を現し倒れたザジを回収しに向かう。


「おぉーい、生きてるかぁ」

つーんつんと指先でつつくサーニャ。


ジンライは結果に満足した顔をしている。

「なんともお粗末な結果になってしまったが、彼の実力は測れた。それと老師が敵対を是としないことも」


アル「。。。」


無言の戦士はその視線を遠く離れた馬車に向けた。

その口元は薄く笑ったように見えた。


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