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怪人と屋台

その後数日間、にゅうめんマンは傷をかばいながら、パビリオンに襲来するミョクミョクの手下たちを撃退した。手下たちは普通の人間よりは強かったが、にゅうめんマンの敵ではなく、怪我をしていても何ら問題なかった。にゅうめんマンは自然治癒力が高いので、傷も直に治るだろう。


にゅうめんマンは自分から敵の拠点に攻め込んで多人数を相手にすることには慎重になっていたが、敵たちがあまり強くないことが分かってきたので、怪我が治り次第こちらから攻め込んでもいいかもしれないと考え始めた。例の牛がかなり強かったことなどを考えると油断は禁物だが。


一方、ミョクミョクは手下たちに破壊活動を任せて自分は拠点であるエチオピアのパビリオンにこもり、全世界のレジャー施設を破壊する壮大な計画を立てたりしていた。だが部下たちの破壊活動が全然はかどらないのにしびれを切らし、自ら博覧会の施設を壊すため、とうとう拠点から外へ出た。


ミョクミョクは先日手下たちが壊し損ねたにゅうめんの屋台が何となく気になっていたので、パビリオンを壊す前にそちらへ立ち寄った。


* * *


にゅうめんマンがパビリオンの防衛に忙しいので、三輪さんは引き続き1人で屋台を切り盛りしていた。するとそこへ、朝日に輝くチャンピオンベルトを腰に巻いたミョクミョクがやって来た。ベルトはメキシコパビリオンの館長から正式に譲り受けたものだ。


屋台のそばにいた来場者たちは、ミョクミョクの不気味な姿を見るとみんなびびって逃げ出した。三輪さんもミョクミョクを恐れたし、一体何のチャンピオンなんだろうという疑問が頭をうずまいたりしたが、屋台を守るためその場に残り、なるべく落ち着いてミョクミョクに対応した。


「繁盛しているようだな」

 ミョクミョクは言った。


「はい。特性にゅうめんと特性にゅうめん大盛がありますが、どちらにしますか」

 多分にゅうめんを食べに来たのではないのだろうが、三輪さんは一応注文をとった。


「俺は食事に来たのではないではない。この屋台を破壊しに来たのだ」

 ミョクミョクは言った。やっぱり、と三輪さんは思った。


「壊すなんて言わないでください。この屋台の何が問題なんですか」

「俺は人の恨みや嫉妬から生まれた妖怪だから、栄えているものや人気のあるものが嫌いなのさ。繁盛している屋台も嫌いだし、お前みたいな幸せそうで美しい人間も気に入らない」

「博覧会を中止に追い込もうとしているのも、にぎわっているのが気に入らないからですか」

「そのとおりだ」

「なるほど……それはそうと、にゅうめんを食べたことはありますか」

「ない」

「それなら1杯食べてから屋台を壊しても遅くはないでしょう」


ミョクミョクが返事をする前に、三輪さんは、すでに発泡スチロール製の器に入った状態で用意ができていたにゅうめんを、有無を言わさずミョクミョクに差し出した。


「自分の屋台を壊そうとしている敵になぜ商品を差し出すんだ」

「どうせ壊されるんだし、最後の1杯をお客さんに提供したって罰は当たらないでしょう」

「そんなことを言って時間を稼ぐつもりじゃないのか」

「時間を稼いでどうするんです。あなたよりも強い人が助けに来るとでもいうんですか」

「……それもそうか」


ミョクミョクは三輪さんの言い分に一応納得し、いすもないので妖怪らしく (?) 地べたに座り込んで、割りばしを割り、顔面の中央の大きく裂けた口で、にゅうめんをすすり始めた。妖怪にしてはまずまず上品な食べぶりだ。


しばらくその様子を見てから三輪さんはたずねた。

「どうですか」

「うまいな」

「そうでしょう。安っぽい器には入ってますけど、うちのにゅうめんは世界一です」

「にゅうめんって国外にもあるのか」

「多分……」


やがてミョクミョクが食べ終わると三輪さんは言った。

「おかわりもありますよ」

「おかわりはいい」


ミョクミョクは顔の周りにごてごてくっついた目を屋台へ向けた。ついに壊すつもりだろうかと心配しながら、三輪さんはミョクミョクの方を見つめた。すると、何を考えているか分からない妖怪の顔で、ミョクミョクは三輪さんの顔をじっと見つめ返した。


「なにか白けてしまった。屋台はまた改めて壊しに来る」

「はい。できれば破壊者ではなくお客さんとして来てください」


それには答えず、ミョクミョクはチャンピオンベルトを輝かせて静かに歩き去った。

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