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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第七章 春、藍、十七歳 5



    5



「それでも生きていかなきゃいけないからさ、私も昭も、お母さんも、勿論あなたも」

藍はいつの間にか、お父さんではなく、〈あなた〉と延彦を呼んでいる。

その延彦は今頭の中で、〈血〉と〈恥ずかしい〉がこだましていた。

「だから、私は類さんの家に行く、そこで受験して大学へ行く。アルバイトも始める。奨学金もいい運営を捜し始めている。類さんは断るけど、私は家賃と生活費を自活したら返す予定」

「僕にも出させてくれないの?」

「うん、ありがとうね。でもそれじゃあ、意味がないんだよ。負担じゃなくてさ、自分の子どもの面倒が見られなくなるというのがあなたへの罰だから。それに、さっきの報告書読んで判ったと思うけど、今けっこうなコネクション持っているから、そこで稼ごうと思う。あ、それは、援助とかパパ活とは絶対に違うから安心して」

この時に藍がどれくらいのレベルで洋二に頼ろうとしていたかは藍じしんでもよく判らないことであった。

類はかわいくて・頭のいい姪っ子と一緒にご飯食べたり、暮らしたりするのが楽しみであったから、家賃と食費は貸しではなく負担するつもりだった。

母親・倫も受験勉強のために親戚の伯母のところに居候するという、なんとも世間体のいいシチェーションだから、受諾し、その上、貯金を切り崩して藍に仕送りすると言ってくれた。

それから倫は、後に契約社員だがアニメ会社でフルタイムで働くことになる。

藍は既にアルバイトの面接を、夕方から夜のラーメン屋と土日それぞれ五時間のショッピングモールの清掃のパートの面接を受ける予定を作っていた。

勉強は今の順位を落とさなければ、受験には合格するという算段もつけていた。

洋二がいなくとも生活できて、進路を変えない算段だ。

それが甘い考えという可能性だって大だ。

それならば、浪人しながら、又チャレンジすればいいし、その時は高校を卒業しているから、アルバイトである必要はない。

ちゃんと就職して、それが天職だと思えたら進学せずに、続ければいい。

藍はそういうことを確実にやってのける自信が、メンタル的なものも含めてやってのけるという自信はあった。

イヤな言い方だが、洋二という万能な存在をほのめかしたのは、頼るというより、父・延彦に最後通牒の意味合いが強かったのである。

「判った、判ったよ。ランの意思が硬いのは判った。言い訳と聞こえてもいいよ。確かに悪いことを僕はした。けれども、それがなんだって言うんだ。いや、開き直っているワケじゃあない。私は家族は大事にしてきた。他所の女性には悪いことしてきたのは認めるが、ランたちを大事にしてきたことは認め欲しい」

「安奈さんって、妊娠したんだよ。どう対処したの?」

藍は安奈が自分を襲撃し、早苗が昭に家庭不和を招く酷いことを云ったことを云いことはなかった。

これから先も藍は父・延彦にそれらを云うことはない。

―この男は、自分は脇が甘くないから、家族に迷惑かけずに遊んだだけだと言っているのだな。

「あれはウソだろう。それに、仮に、父さんが堕胎費用を出せば、それを認めたことになる。そうしたら、家族が壊れる」

「虐待ってさ、家族を崩壊するためにやるヤツはまずいないんだよ。むしろ家族を維持するためにやるヤツしかいない。あなたのやったことは虐待以外の何物でもない」

「僕といて、僕と暮らして、そんなにイヤだったか、藍は」

「昔さ、私がプールで昇級した時、家族で銀座の中華レストラン行ったよね」

「ああ、行ったなぁ」

「私さ、食いしん坊だから、食べに食べて、帰りのタクシーで吐いちゃったじゃない。憶えている?」

「うん、あったな」

ここで延彦は今の状況を忘れたかのように微笑を浮かべた。

「あの時にタクシー内で私の嘔吐物、手ですくってくれたじゃない。何で、ああしたの?」

「せっかく、良い成績をのこせて、家族で美味しいもの食べて、最後に女の子がゲロして車内を汚して、怒られたらイヤな思い出になると思ったから」

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