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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第三章 帰宅と疑惑と捜索 8



    8



「そんなこと信じられない」

それが父の子ども、つまり自分の弟を胎児の段階で流したと告発した女性への昭のレスポンスだった。

それは中学生男子にとっては、そうとうなダメージであった。

女性の肉体について興味がある時期であり、昭とて例外でないものの、男子校ということもあろうが、未だそのような欲望よりは、女性の騎士であることを選びたい年頃であるのも確かで、あの父親が他所の女性と不倫関係にあった上に、受精させ、それを処理していたということに、昭はダメージを受けていた。

同時に、そのような弛緩させる情報を投げつけて相手への身構えを解いていけないと思い出した。

そのような、心理の動きをしている中、昭は、谷口早苗を見失った。

雑踏の中を注視したが、もういない。

時間にして五分もなかったであろう。

しかし昭には長く、永く感じられた。

瞬間は永遠の因子、といったのは誰だったろうか。

「くせ毛柱殿、どうしたでござるか、キョロキョロしているとキョロ充に間違われるでござるよ。デュフフフ」

昭はくせ毛だった。

魂だけ持ってかれそうな地場から友人たちが連れて帰ってくれた気がした。

だからなのか、今の出来事を悟られたくなかった。

「皆で合流していたのか、マニア柱。ちょうどよかった、皆を探していたのさ」

隠す気がなかったワケではない。

ハナから友人たちには言うような話ではなかった。

それから四人は、浅草まで歩き、味玉子がやたら美味しい店で、つけ麵をすすった。

このようなことを昭は藍に語った。

―その谷口早苗が今朝の襲撃犯なのだろうか。

違いますよ、藍さん、今朝の人物は、飯田安奈です。

だが弟から話でしか聴いていない、その告げ口女性を藍は襲撃女性(飯田安奈)ではない、と感じていた。

根拠があるワケではないが、①話し方、②思いついて実行したような唐突感、③隠す気が感じられない態度から、飯田安奈とは真逆に感じたことを感じた。

そういう想念がめぐった後に藍が弟に尋ねたのは、①谷口早苗を以前から知っていたのか、又は少しでも覚えがあるか?②以降にその谷口早苗と名乗る女性から何らかのアクション、例えば、手紙を渡したてきた、とか、ストーキングされている気がするとかはあるか?③この話を両親、又は父母どちらかに話したか?ということ。

①と②に対しては知らないし、何もないと答え、③には父親にカマをかけるつもりで、帰宅時に「お父さん、毎日帰り遅いね、浮気でもしてるんじゃないか!?」と冗談めかして話したら、「お!アキは名探偵だな! 今日は久々に一緒に風呂入るか!」と云われたので、自室に逃げたそうだ。

―この話の中心にいるのは、父である。

今朝の襲撃女性、叔母・類、告げ口女性の谷口早苗、とたった一日で、田舎で石をどかした下から出た蟲たちのように、蠢いてでてきた。

いったい何を父は企んでいるのか、外資系と聴いている父の会社は何かスパイ活動でもさせているのか?とぐるぐる藍の思考は回った。

「谷口早苗って、名前は検索したの?」

「したし、二、三人は顔写真も出てきたけど、どれもあのひとじゃなかった」

姉弟はこの昭の自室のPCで再度検索したが、藍に見覚えのある写真はなく、父の会社と繋がりがある情報もなかった。

「昭さ、どうもおかしいことが続いているよ。それは最近始まったことじゃあない気がする」

「うん、その谷口早苗が声かけてきてから、昔を思い出すと、何か引っかかることがあったのを思います」

その引っかかりを無意識で意識しないようにしていたことでも二人の意見は一致した。

いちばんは母であった。

家族で旅行に行くと、わざとらしい程に、「楽しいねー、幸せだねー」と云っている母であるが、稀に自分ら家族が近くにいないと知ると、能面みたいに無表情でボーとしている時があった。

それを目撃すると直ぐに元に戻るのだが。

昭も藍も、母親の父への甘えやのろけが子どもであることからか、好きではなかったが、二人はあの夫婦が本当に好き合っているのかという疑惑が生まれた。

なにより父親である。

あの父、どういう人間なのか、よく判らないのだ。

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