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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第三章 帰宅と疑惑と捜索 5



    5



乾物の食材を入れる戸棚に、ましてや冷蔵庫に入れるワケにもいかず、弟に見せるワケにもいかない(藍はこの時に両親より弟を気遣った)のでテーブルに置いておくこともしなかった。

なので、ビニール袋に入れたまま、キッチンの脇にある燃えるごみのダストボックスに突っ込んだ。

そして直ぐに自室に戻った。

―明らかにワザとだよな。

藍も若い女性なので、少女らしい潔癖感はあった。

両親の性に触れてしまうというタブーの怖さもあった。

だが、なにより、あの、自分の母親がどう考えても、避妊具を実の娘に見つけさせたという事実こそがおぞましく、気持ち悪かった。

これは母親を貶しているワケではないが、藍は母親を平凡な女性だと思ってきた。

藍が知る限りの情報だと、藍の母親、旧姓・時田倫は大学の時に、姉の紹介で出会った、麻井延彦と付き合い始めた。

延彦は外資系の不動産会社に大学卒業後、新卒で就職したため、多忙だった。

倫は忙しい延彦に合わせるかのように派遣会社に登録し、延彦に合わせる働き方をして、実際にそのおかげで二人は結婚までこぎつけたのは、二人が二十五歳の時だった。

結婚の二年後に藍が生まれ、その三年後に昭が生まれた。

就職をしたことなく結婚した倫は、藍から見てもお嬢様っぽい世間知らずや常識外れはあったが、娘にコンドームの箱を見せつけるような暴力じみたことをするような女性ではないのだ。

―いや、そもそもうちの母親の言動は、おかしいトコがあったのかも。

弟・昭の心境の変化を無視したり、過度な夫への甘えは周囲の母親と呼ばれる人種と比較した時に齟齬が生まれていたのだ。

ところが、入浴と夕飯のために居間やキッチンに藍が出て来ても、母親に変わった様子は見られなかった。

夜、母親がいないのを確かめて、ダストボックスをチェックしたが避妊具の箱は無くなっていた。

―そそっかしい母親の天然ボケの可能性があるかもな。

それは違った推論だと藍は直ぐに気づくことになる。

「藍ちゃん、何か私に聞きたいコト、あるんじゃないの」

振り向くと母親がいた。

しかも薄ら笑いを浮かべて。

藍は直ぐに、「無いよ」と云って、自室に戻った。

倫が故意に仕掛けたことはこれで明らかとなった。

どうしたものか、と藍は思った時に、ふと藍の伯母、それは倫の姉である、(るい)のことを思い出した。

何故に思い出されたのか、その時の藍には自分のインスピレーションが理解できなかった。

母親・倫の一つ上の類は倫と違う大学だった。

そこで類と延彦が知り合い、女子大の倫と会って交際が始まった。

家事と庭いじりが趣味の類は未だ独身で、趣味は読書と旅行、歴史と海外の小説という共通の趣味を持つため、藍とは仲が良かった。

今は22時。

その関係性から電話しても許される時刻と藍は判断した。

「類さん、夜更けに電話して、ごめんなさい」

藍は、最近の母親・倫の不信感を話した。

さすがに避妊具の箱の話まではしたくなかったので、避けた。

それによって、間の抜けた話になり、焦点が定まらない問いになった。

それは「母の様子がなんとなくおかしいので、姉として心当たりありますか?」というものになった。

対する類の答は「一緒に住んでいる藍が判らないなら、私にも判らないよ」というものだった。

「でも、類さん、私とはたまに会ってくれるけど、母と会うこと少ないですよね」

「今年の頭にも実家で会ったじゃん」

「違いますよ。二人きりで会わないですよね」

「そりゃ、趣味や嗜好が違うからわざわざ会うことないからさ」

そうなのだ、と藍はこの時に初めてこの姉妹の不可解さに気づいた。

この姉妹は仲が悪いのだ。

怒鳴り合いや罵り合いをしたこと見たことないから、仲がいいと思い込んでいただけだ。

いや、初めて人生で見る姉妹がこの二人だったから、そういうものだと思っていたのだ。

「それでも趣味や嗜好なんて話のトバ口にしか過ぎないでしょう、って、類さんが昔からよく云っていましたよね」

実家で会う時にも藍の祖父母であり、姉妹二人の両親に、仲が悪くないことをアピールする素振りをずっとしてきたのだ。

そして、更に藍は気づいた。

―その実家での集いに、夫婦で時田の祖父母で会う時に、会わないようにしていたのだ、父と類さんは。

「類さん、父と何かありましたか」

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