上掛け水車
俺とテツは、炉の温度を上げる方法をそれぞれに検討し、持ち寄って議論することを4日間繰り返した。
一回の打ち合わせで決められる内容ではない。
考えるべきことがたくさんあった。
検討の結果、まずは水車の増設を決めた。
動力の大きな水車を作り、鞴の能力を強化して送風能力を高めようというのだ。
水車自体が役立つので、たとえ鉄の溶融に失敗したとしても有効活用できる、という点が決め手になった。
失敗を見越した逃げ腰な計画、と思われても仕方ないが、そのくらい鉄の溶融は難しい課題だと認識している。
労働力の乏しいカツ村で事業を行うなら、この位の慎重さが必要なのだ。
村民の協力を得て、「作ったけど無駄でした。」、なんて事態は絶対に避けなければならない。
作るからには、必ず役立てなければならないのだ。
次に作る水車は、既存の水車をそのままコピーするわけではない。
今よりも大きな動力を得られるよう、方式を変更する。
既存の水車は下掛け水車と呼ばれる方式で、川に動輪を浸けただけのものだ。
川の流れに押されて水車が回る。
平地でも簡単に設置できるが力はそれほど強くない。
次に作ろうとしているのは、水車の上から水を掛ける上掛け水車という方式だ。
水の重みを利用するので、大きな力が得られる。
この方式は滝などの大きな段差があるところなら簡単に作れるが、平地で作るには水を持ち上げるための揚水水車が必要になる。
俺たちは上掛け水車を新規で作り、その上、既存の水車を揚水水車に改造することにした。
うまく行ったら専用の揚水水車を隣に建てる、2段階の計画だ。
俺達はまず、水車の模型作りに取り掛かった。
前回は俺一人で模型を作ったが、今回はテツとチク村の3人にも手を貸してもらった。
あれやこれや検討に参加することで技術は身に着く。
完成品を見るだけより身になるからチク村の3人にとっても良い経験になるだろう
鉄の技術だけでなく水車の技術も教えることになるが、チク村との関係は良好に保ちたいので、問題ない。
上掛け水車の特徴は、動輪の外周部に、水をためるバケットがついていることだ。
ここにできるだけ多くの水を溜め、長く保持する程水車から得られる動力は大きくなる。
当然ながらバケットは水の重みに耐えなければならないので、下掛け水車よりも強度が必要になる。
水の重み分と増える動力の分だけ軸に掛かる負担も増えるから、軸は当然太くなる。
水車の直径は前回と同じ2mを予定しているが、強度が増す分だけ難易度はかなり上がるだろう。
水車の模型は5日で完成した。
上から水を掛けると、スムーズに回転した。
バケットの中の水は半周近く保持されている。いい感じだ。
水車の形が決まったので、動輪部分の部品を実際の大きさで作った。
組み立てて固定するためのホゾや穴も付いている。
とりあえずは、動輪を構成する部品を各1個ずつだ。
後はこの部品をコピーすれば良いが、俺達だけだと時間がかかりすぎるので、村の何人かに協力してもらって、分担して作ってもらうことになった。
必要な材料と道具は支給する。
ただし、軸の部分だけは俺達で作る。
水車の要となる部分だし、今回は難易度が高い。
冬の間に部品を全て完成させて、春が来たら組み立てる計画だ。




