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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
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第51話 なぜだか海の家で台風に遭う。(4)

     ◇◇◇◇◇



「――そうくん? どうかした?」

「っ……な、なんでもないよ」

「そう? それならいいけど」


 かおりの声で現実に引き戻された。


 とりあえず応急処置をしたのはいいがこのままではまたいつ穴が空いてしまってもおかしくないので、さらにその上に段ボールを重ねて補強する。


「とりあえずはこれで大丈夫かな」


 同じ作業を三回ほど繰り返したところで、区切りをつけて濡れた畳に布巾を押えつけた。


「……寝ようか」

「うん」


 俺は一つため息を吐いて布団に入る。

 もちろん、ちゃんとかおりの布団とは間をあけてだ。


「かおりってさ」

「ん?」

「昔から雷が苦手だったんだな。少しだけ思い出したよ」


 降りしきる雨の音が響く部屋の中で、俺たちは小声で会話を始めた。


「そうくん、思い出したの?」

「ちょっとだけだけどね」

「もう、そうくんってば昔の私のことまっっったく思い出してくれないから、いい加減昔の話でも聞かせてやろうかと思ってたよ」

「ごめんごめん」


 かおりが転校してきてから二か月くらい経つけれど、俺が思い出せているのは断片的なものばかりでしっかりとした思い出のようなものを思い出せたのは今回が初めて。


 かおりにそう思われてしまうのも無理はなかった。


「でも、良かった。少しは思い出せそうで」

「俺もちょっと安心してるよ」


 屋根に降り注ぐリズミカルな雨音に導かれて、そのままうとうとと眠りに落ちそうになる。


 しかしもう落ち着いてきたかと思われた雷が時折鳴り響いて、かおりが隣でビクンと肩を跳ね上げたのを感じた。


「……ねぇ、もうちょっと布団近づけてもいい?」


 心細そうに尋ねてきたかおりに俺は黙ってうなずく。


 かおりは布団を元あったようにくっつけて、布団に入り直した。


「なんだか、昔に戻ったみたいだね」

「……」


 すぐ隣にかおりの体温を感じて、鼓動が早くなる。


 考えてみると、なにをするでもなくこうしてかおりと二人きりでいるというのは、初めてのことかもしれない。


「おやすみ……」

「おやすみ」


 雷が鳴る度にすり寄ってくるかおりにドギマギさせられながら、俺は静かに目を閉じた。


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