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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
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第49話 なぜだか海の家で台風に遭う。(2)

     ◇◇◇◇◇



「これから雨はどんどん強くなるみたいだから、二人とも早いうちにホテルまで戻った方がいいよ。親御さんとは連絡取れる?」


 二階から戻ってきた日奈さんが日向姉弟に向かって言った。


「あ、はい。電話してみます」


 日向はすぐに席を立ちあがって、スマホを持ちトイレの方へ行く。


「そうだ、昼飯でも食べる? 一応ガスは生きてるから作れるけど」

「あー……じゃあお願いします」

「あいよ~」


 日奈さんは引き出しから一本ろうそくを取り出すと、机に置いてあったライターで火をつけて厨房に向かった。


「なんかもうすぐそこまで車で迎えに来てるらしいんで帰ります。お邪魔しました」

「ん? あぁ、じゃあそこの棚の一番下にカッパが入ってるから、それ使いな」


 焼きそばを作り始めてしばらくすると、両親と連絡が取れたらしい日向が厨房に入っていく。


「いいんですか?」

「いいよいいよ。安物のやつだから。こんな雨の中をそのまま歩いて行ったらびしょ濡れになっちゃうでしょ」

「すみません。ありがとうございます」


 日向は申し訳なさそうに棚からビニールのカッパを引っ張り出して、翔くんと二人で服の上に羽織った。


「じゃあ私たちは行くけど、二人はバイト今日までなんだっけ?」

「あぁ、明日の昼前にはこっちを出る予定だよ」

「そっか」


 パチパチとカッパのボタンを留めて準備ができた二人が入り口の前でこっちを振り返る。


「じゃあ、またね」

「長居させてもらってすみませんでした」

「二人とも気を付けてね」

「またね~」


 息をひとつ吐いて、日向たちは大雨の外に出て行った。


「――また停電になるかもしれないから、電気使えるうちにシャワーは浴びちゃうようにね。私はもう帰るから、なにかあったらケータイに連絡して」

「分かりました」


 夕方になると、少しだけ雨が収まってきて日奈さんが帰っていった。


「また夜にかけて強くなるんだよね?」

「らしいね。とりあえず部屋にいこっか」

「うん」


 階段を上った先の寝室には、昨日と同じように布団が仲良く隣り合わせで敷かれていた。


「またわざとらしい……」

「あっ、そうだ。夕飯用のイカ焼き、持ってきちゃうね」


 かおりは厨房まで作り置きのイカ焼きと白米を取りにいき、すぐにまた戻ってくる。


「ちょっと早いけど夕飯にしちゃうか」

「うん。私もちょうどお腹空いてきてたし」

「実を言うと俺も」


 昼食が少し早かったこともあってか、お腹がぐぅと鳴いた。


 俺は部屋の隅にあるレンジで白米とイカ焼きを温めて、その間に折り畳み式の小さい机を畳の上に出す。


 二、三分で温めも終わりかおりと向かい合って手を合わせると、もうすっかりお馴染みになったイカ焼きに手をつけた。


 日奈さんが主食がずっと焼きそばだとさすがに飽きるだろうと言って白米を持ってきてくれたので、イカ焼きをおかずに久しぶりの米を堪能する。


「ふぅ、食ったくった」

「ごちそうさまでした!」


 やっぱり日本人は米に目がないようで、俺たちは五分もしないうちにすべて平らげてしまった。


「そうくん、先にシャワー浴びちゃっていいよ」


 少し食休みをしているところに、かおりがそんなことを言ってくる。


 密室に二人きりの状況でその台詞って、なんかちょっとえろい。


「分かった。じゃあ先に浴びさせてもらうよ」

「うん。いってらっしゃーい」


 俺はお言葉に甘えてバスタオルと着替えを持ってシャワー室まで行き、数分で全身を洗い終えた。


「シャワー空いたよ。俺はちょっとお皿洗ってくるから、かおりも浴びちゃいな」

「うん。ありがとう」


 部屋に戻ると夕飯の乗っていたお皿を手に取って、シャワーを浴びに行くかおりについてまた一階へと下りる。


 厨房まで行って食器用の洗剤をスポンジに垂らして泡を立てて。


 夕飯で使った食器を一通り洗い終えたときだった。


「キャッッッ⁉」


 再び、落雷の音とともに電気が消えた。


「かおり? 大丈夫?」


 さすがに人のものとは思えないほどの叫び声が聞こえたので、シャワー室の前まで行って声をかける。


「……無理」

「え?」

「無理! そうくん部屋まで連れてって!」


 そう言って内側から扉を開けたかおりは、バスタオル一枚のあられもない姿でへたり込んでいた。


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