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なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。  作者: 鞘月 帆蝶
第1章 なぜだか隣の家の転校生の好感度が高すぎる。
40/152

第40話 なぜだかお隣さんと駄菓子屋へ行く。

      ◇◇◇◇◇



「やっぱプール帰りのゲリゲリくんは至高だねー」

「ゲリゲリくんって、いかにもお腹下しそうなネーミングだよなぁ」


 市民プールで一時の涼しさに癒された帰り道で、溢れる汗をコンクリートに垂らしながらソーダ味のアイスをかじる。


 アイスにもこの照りつける陽射しは酷なようで、汗のかき具合は俺たちの比ではない。


「そうだ、あそこに寄っていこうよ」

「あそこ?」

「うん」


 聞き返した俺にかおりは一言だけ返して、狭い路地に入った。


「日陰はちょっとはマシだなぁ」

「ちょっとはね」


 重い足をなんとか引きずって、奥へ奥へと進む。


 左右を建物に囲まれているおかげで日陰だった小道に陽が差している場所に出ると――。


「良かった、まだあって」

「駄菓子屋……?」


 そこにはまさに老舗という言葉がふさわしい、昔ながらの駄菓子屋があった。


 きっとこのお店は優しそうなおばあさんがやっているんだろう、とそう思えるような外観だ。


「こんにちはー」


 昭和な雰囲気が漂う店内に入っていくかおりの後に俺も続く。


「おやおや、いらっしゃい」


 店の奥からゆっくりと出迎えてくれたのは予想していた通りのおばあさんだった。


「おばあちゃん、久しぶりー。私のこと覚えてる?」

「……さなちゃんだったかな? こんなに大きくなって」

「違う! さなじゃないよ! かおりだよ!」


 どうやらおばあさんはかおりのことをすっかり忘れているようで、必死に訂正するかおりをぽかんと眺めている。


 かと思ったら、「あぁ、さなはうちの孫だったわい。歳を取るとこれだからいけねぇな」だとか言って、がっはっはと大げさに笑い始めた。


「……そうくん、欲しいものあったら私が買ってあげるよ。ジュースのお返しってことで」

「それはどうも」


 とは言ってもこの歳で駄菓子を食べたいとはそこまで思わないので、適当に二、三品、味付きのジャーキー系のお菓子を選んでかおりに渡す。


「私はこれとこれと、あとこれと……」


 結局かおりが会計を済ませたのは、それから五分ほど後のことだった。


「またいらっしゃい」

「はーい」


 店の外のベンチに座っている俺の横に、十何種類もの駄菓子を買って満足げなかおりが腰を下ろす。


「これだけ買っても五百円しないんだもん。やっぱり駄菓子屋はいいね。はい、これそうくんのラムネ」

「ありがと」


 俺は差し出された緑のラムネのビンを受け取り、コルクの栓を開けて一気に半分くらいまで飲んだ。


 パラソル型の屋根がついた日陰のベンチで飲むキンキンに冷えたラムネ。屋根には風鈴がぶら下がっていて、可愛らしい音を鳴らしながら時折揺れる。


「なんか……あれだな。エモいな」

「そうくん、覚えたての言葉無理に使おうとするの田舎者っぽいからやめた方が――」

「いや、誰がなんと言おうと俺もかおりも田舎者だからね?」


 言い直すとするとあれだな。

 趣がある。いとおかし。


 俺は残りのラムネも飲み干して立ち上がった。


 太陽にラムネのビンをかざすと、透明なビー玉が反射して煌めく。


「なぁ、これってどうやって取り出すんだろうな」

「あぁ、それは――」


 それは――、割らないと取り出せないみたいだよ。


 陽炎だろうか。一瞬だけ、タンクトップの小さな可愛らしい少女がそこにいた気がした。


「――割らないと取り出せないみたいだよ」


 まったく同じセリフをかおりが繰り返すように言う。


「最近はキャップ式とか取り出せるのが主流だと思うけどね」


 そう付け足したかおりは、少女の成長した姿そのものだった。


少しでも気に入って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると更新の励みになります!

夜の更新は少し遅れるかもですm(_ _)m

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