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第五十九話 気配

第五十九話 気配


☆森の神殿キャンプ


 早朝


 サトウの奴隷娼館で真奈美によるご奉仕プレイ入浴編の講習が行われていた。

 真奈美の従者である、リスティ、ソフィア、ディアナ、フローラ、ゼシカの五人は鎮痛な面持ちで日本の風俗産業に於けるソープランドと入浴プレイとデリバリーヘルスのローションプレイの実地研修を受けている。

 ついでと言ってはなんだが、ジルとクリス、エアリス、そしてグレイスとセダム、さらには奴隷の教育係としてグレイスに雇われたローズと呼ばれる元娼婦兼奴隷冒険者も見る羽目になった。

 当然そこにはセダムが買い入れた奴隷娼婦十人とグレイスが下働きに雇った五人も含まれている。


 グレイスとセダム、ローズは皆の後ろからその様子をジッと伺っていた。時折顔を引きつらせながらではあるが……


「グレイス……あの男は何者なんだい?」

「ごめんなさい、ローズ、雇っておいて申し訳ないけどそれを私に聞かないで。この娼館を引き受けて私も死ぬ程後悔してるから」

「……ローズさん、あの男を理解しようとするのはやめた方がいい。時間の無駄だ」

 

 ただ、ローズの印象は少しだけ違う。

(この衆人環視の中、あんなに嬉しそうに臨戦態勢になれる男は珍しいんだけどねぇ。それに真奈美とか言う女もよく躾けられてるよ。大したもんだとは思うんだけどね。性格は最悪だろうけど。まあ、相手にする女次第なんだけどさ)


 ただ、とんでもない奴だとの認識はこの場にいる全員の相違だろう。

 史上稀に見る自己中男なのは間違い無い。



 だが──それを伺う気配があった。

 それはエルベで壊滅されられたアサシンギルドの中でも、市井に紛れて情報収集にあたる別働隊である第十二番組[霞]の頭領──スグリである。


「……何をやってるんだ?」


 複数の草と呼ばれる間者を放ち、外でその情報を受け取った時、半ば呆れ顏でそう呟いた。


 サトウとてアサシンギルドからの追手が掛かっている事くらい当然理解している筈──なのに

「……舐められてるのか?」

 今のサトウの行動はとても正気の沙汰とは思えなかったのだ。


(命が惜しく無いのか、それとどこかもおかしいのか?)


 セラヴィ率いる五番組を壊滅させられたアサシンギルドの幹部達は、慎重には慎重を期し、先ずはサトウを調べ上げ始めたのだが、課せられた使命はそれだけでは無かった。


(セラヴィの奴! 余計な手間を掛けさせやがって!)


 その所為で今すぐ手を出す訳にはいかなかった。

 何れにせよ冒険者ギルドと商業ギルドとアサシンギルドには不干渉を貫く事が暗黙の了解となっており、少なくとも今この場で行動が起こせる訳では無い。無いのだが──それでもまともな神経の持ち主では無いと、スグリは朝霧の中に紛れそう改めて認識させられてしまうのだった。


「スグリ様、このまま監視を続けますか?」

 配下の者も呆れ顏である。

 それも当然だが

「……続けよ…それも上からの命令だからな」

 配下の男は「はっ!」とまた娼館の監視に戻る。


 スグリもそうであるが、十二番隊は監視や捜索の様々なスキルを持つ者が集められている情報戦のスペシャリストなのだが──その彼等をさらに監視する者が居た。


 離れた建物の陰


 その者はジッと影を放ちスグリ達を監視している。


(ふん、やっとおでましかの!)


 それはサトウに命ぜられたオウングスだった。

 幾つもの影を放ち網を張って待ち構えていたのだ。


(まあ、わざわさ目立つのもこの為じゃからの、当然と言えば当然なのじゃが、アサシンギルドも甘いのお)


 如何なアサシンギルドとは言え、純粋な情報戦ではオウングスにかなう訳が無かった。

 それ程のチートスキルを所持するオウングスだからこその離れ業であるが、気になるのは二点である。


(何ぞ別名があると言うておったの。それとあの女の頭領の行方が気になるわい)


 闇羽根と闇撫手を展開し、臨戦態勢を整えたままオウングスはアサシンギルドの動向を監視していた。

 そして、神殿騎士団が現れるのをジッと待つ事になる。



♢森の神殿 前庭迷宮ガーデンプレイス


 娼館での講習を終えた数刻後

 サトウと真奈美、それとジル、クリスは三人と合流し迷宮の中でモンスターハントを繰り広げていた。


 訓練を兼ねているので、先頭で探索をジルが受け持ち、クリスと真奈美が続き、最後尾で、サトウがロケイトとサーチで補完する事にしていた。


 昨日よりもさらに深く入り込み、後宮への入り口を目指しながら狩りを続ける事にしている。


「……来たわね」

 ジルがそう言うと双剣を抜く。

 女盗賊ローグであるジルは気配感知で接近するモンスターの群れを捉えた。

 クリスが魔法杖を構え先制攻撃の準備を始める。

「さて、どの属性かな」


 サトウ達四人には明確な盾役が居ない。その所為で先ずサトウの風水術で足止めを掛ける事になっていた。


「来たっ! リザードマンよ! 六体!」

 サトウが風水術を放つ

「[ストーンバインド]!」

 リザードマンの足元の岩や石が纏わりつき移動阻害ドンムブを引き起こす。

「「シャッ! シュシュッ!」」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


Lizardman/リザードマン/蜥蜴男


 主に水辺に生息する蜥蜴の獣人。

 通常は数十体の小さな群れを作る。

 硬い鱗を持ち防御力が高い。

 盾と槍、大剣で武装している事が多い。

 レベルにもよるが戦士としてのスキルが高い個体も多く、集団では侮れ無い強敵となる。

 その皮は硬くて軽い事から防具の素材として人気がある。

 蜥蜴ではあるがドラゴンキラー、ドラゴンスレイヤーの効果を受けるのが弱点


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「[アイスジャベリン+]!」

 クリスが冷却系の攻撃呪文を放った。

 複数の氷の槍が足止めされたリザードマンを貫く!

 硬い皮膚を穿つ巨大な槍に怯んだ所へサトウが間合いを詰めていく。鼻歌混じりに風切り丸を抜き一気に斬りかかった。

 一閃

 移動阻害を受けて、それでもなお槍を突き立てようとする先頭の一体を見切り、体を入れ替えるとクルリと旋回し両腕を切り落とすとそのまま後方の二体に風斬エアースラッシュを叩き込む。

 しかし防御力の高いリザードマンには致命傷とはならなかった。


「へぇ、流石に丈夫なんだな」


 そう言って隠密と忍足を瞬間的に発動すると一体の背後に一本の光の軌跡が起こった次の瞬間《ザンッ!》と胴体から上を斬り裂いた。

 そして《ドスンッ!》と潜伏ハインドからの奇襲攻撃サプライズアタックがサトウに連動するかの如くもう一体に倍付けダメージを叩き込む。

(ジルか! 発動が早くなった)

 そう言ってサトウは隠密と忍足を解く。

 本来なら継続させて次の攻撃に移るのだが、迷宮での近接戦闘を考慮し、敵のタゲ取りの為の挑発を兼ね姿を現しながらの戦闘を心掛けていた。


 しかし

「シャアアアアアアアッ!」

「「「!!!」」」

 ここで残ったリザードマンがストーンバインドにレジストし姿を現したサトウに襲い掛かる。

 知能レベルの低いリザードマンとは言え仲間を切り刻んだのがサトウなのは理解出来るからだが──そこへ《ドズンッ‼︎》と騙し討ちが決まった。

 ジルの奇襲攻撃サプライズアタックが誰かに攻撃を仕掛けた対象に決まると、もう一段上の効果を発揮し、高確率で即死攻撃クリティカルアタックを発生させるのだ。

(サトウが暴れてくれると面白い様に決まるわね)


 そしてコレはたまたまでは無い。

 サトウは潜伏しているジルの位置を的確に予想し、自らの隠密と忍足を使いながら時にタゲ取りにも貢献する様に移動を繰り返していたのだ。


 そしてそれをクリスも見逃さ無い。

「[ファイアーボール]!」

 二人の動きを先読みし、的確に属性魔法を叩き込んでいく。

 放たれた火球はサトウとジルの攻撃範囲外の一体を火だるまにした。

「[マジックボルト]!」

 魔弾の直撃を受けて硬直スタンした残りの二体にサトウとジルがその牙を剥く。

 サトウが斬り裂き、ジルが再び奇襲攻撃サプライズアタックを叩き込み──迷宮に静寂が訪れる。


 それはあっという間だった。


 サトウはリザードマンの死体をアイテムボックスに回収して行く。


「何と無くサトウが何処にいるのか分かる様になってきたわ♡」

「私も分かるよ!」

「間違えたとかは無しにしてくれよな」

「……全然分かんない」


 全く戦闘の役には立たない真奈美は唇を膨らませている。

 まあ分かっても姫巫女が何かをする訳では無いのだが。

 特に今はオウングスにアサシンギルドを追跡させているのであくまでも慣れさせるのが目的なのだ。


 そして


「……あったわ」

「よし、良くやった真奈美!」


 真奈美の役割は別にあるのだ。


 それはこの森の神殿を突破する鍵となる封印の解呪である。


 その為にサトウは練習がてら隠蔽された森の神殿の術式を探す訓練をさせている。


「あたしは大地の神殿の姫巫女だからイマイチ相性が良く無いかも」


 そう、神殿にはそれぞれ専門の巫女が居る。

 加護を受けられるのはあくまでも仕える神殿におわす神のみなのだが、オウングス曰く「姫巫女は別格なのじゃ!」と言われ真奈美はまるで散歩にでも行くかの如く森の神殿を歩き回っていた。


「神殿の最奥部に続く道は巫女にしか開かれる事は無い」


 その事を知る者はローランドですら一部分の者の秘密なのだ。

 あくまでも神託を受けるのが目的だと周囲は認識している。


 そしてサトウはそこにもう一つの情報を得ていた。


 エアリスの密命


 その対象は巫女以外で唯一神殿の最奥部に辿り着ける存在だと言う。


(姫巫女とは言えあくまでも違う神殿の巫女である真奈美、それと強引に突破出来る【聖石持ち】か)


 ただ、オウングスは警告も発している。

 神殿の排除機能も完璧では無いらしく、高位のチートスキル持ちなら突破する事も不可能では無いらしい。

 ただ、森の神殿に仕える巫女が確認されなくなって等しいこの状況の中では、やはり一つ一つ調べ上げる必要が有るとは言え、やはり真奈美が最有力だと言う。


 そしてオウングスの存在

 潜入と情報戦に関しては鬼の強さを発揮するこの幼女の擬態をした(そもそも元が男か女かすら謎)を従えるサトウこそが今の所実は【翡翠】争奪戦の最有力となっていた。


 キンッ

「あっ! 失敗した!」

「……何をだ? 真奈美」

「えへへ、解呪出来ませんでした」

 ただ真奈美は転生者

 巫女としての修行は一夜漬けの様な物


 だから


「……で、何が起こるんだ…」


「う〜ん、守護獣ガーディアンを呼び起こしたかも♡」


「……襲ってくるのか?」


「うん! 思いっきり!」


 当然こんな危険が増大する。


 決して巫女は神殿を管理し、支配している訳では無いのだから。


「ジル、クリス、かなりヤバいのが来るぞ!」

「……真奈美…サトウに不満がある訳じゃ無いのよね?」

「ええっ! 痴話喧嘩なの?」

「ち、違うよぉ!」


 目が泳いでいるのをジルとクリスは見逃さ無い。


 そして──迷宮に禍々しい咆哮が響き渡る。



「……来たか…」


 サトウはそっとその気配の主を探る。

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