第十九話 森を抜けて
一応ここからが新章です!( ̄Д ̄)ノ
最終的に推敲と加筆を繰り返し完成させる腹積りですので長い目でみてやって下さい!
では続きをどぞ〜
第十九話 森を抜けて
☆
「ここがエルベよ」
「へぇ、結構大きな街なんだな」
「そうよ、一応この地方の拠点なんだから」
俺達は小高い丘の上から街を見下ろしていた。
♦︎あの後
森の中で大蜘蛛を倒したあと、ジルとクリスのたっての願いで俺達は蜘蛛の呪詛に取り憑かれた者達を始末していった。
要となる梨花と大蜘蛛を無くした後は再生力もかなり落ちたようで容易く打ち倒す事が出来た。梨花の「用が済んだ」と言う言葉の意味は未だ謎のままだが、それでもこのままではどうする事も出来ないと判断し、俺達は森を抜け街に向かった。
一応、ジルとクリスのアジトで回収出来るモノは全て集め、ゴブリンキャンプで僅かながら回収出来たアイテムを売り払い旅の資金にする。大蜘蛛は残念ながらドロップアイテムは黒い魔石だったがコレは暫くは売る事は出来ない。少し様子を見てみるつもりだ。梨花への手掛かりになるかも知れないしな
今の所、ジルは俺に隷属させているので取り敢えずは行動を共にしている。クリスはどうするつもりなのか……まだ決めかねているようだ。
ジルとクリスは出身地には訳あって戻れ無いらしく、その説明はまだしたく無いらしい。そこで俺達は隣国に向かって移動し森を抜け、エルベに着いたのだ。
『予想より時間がかかりましたね』
そう、すでに二日が経過している。無駄な時間を過ごした事になるが、俺の[災禍の渦]が効果を発揮するとすれば、桐子、雪代、梨花がこの世界において最悪の事態を巻き起こそうとするなら、俺は知らず知らずの内にその核心に迫っていってる筈だから、取り敢えず俺は自分の直感に従いジルとクリスの言う通りにしている。
そして先ずはベッドで寝てまともなメシが喰いたい。
「あそこなら情報も集まり易いの」
「そう! ボクたちの知り合いも少しはいるしね」
「なら心強いな」
地元の街には行けず、他の国に知り合いがいるのか。ジルとクリスは[お尋ね者]なんだろうが、何をやらかしたのか……今夜ベッドの上で確認してみるかな
「……なんだか顔付きがエロいんだけど」
「……露骨なんだね」
『……全く懲りて無いんですね』
そしてジルは諦めたように溜息を吐く。
「……取り敢えず貴方は命の恩人だもの。そのつもりで対応するから安心して」
「お、お姉ちゃん! それって」
ちゃんと覚えてたんだな。律儀な奴だが、先ずは事情を確認するのが先だろうな。しかし先ずはやるべき事をやろう。
「では向かおうじゃないか。期待と不安を胸に秘め初めての異世界の街に!」
俺達はエルベに潜り込む。
♢エルベ西門前
この街は如何にも異世界の辺境らしく城壁に囲まれている。コレはジル曰く入るのにお金が必要な事を示しているらしい。つまりは維持費をくるなら出せ! と言うつもりなんだろうか? 事を荒立てるのは取り敢えずさけ、俺達は門番の前に並んだ。中途半端な時間の所為で二、三人しか並んでいない。すぐに順番は回って来た。ジルとクリスもおどおどした様子は無い。犯罪者という訳では無いんだな。
目の前の屈強そうーーでも無い兵士が訝しげに俺達三人をジロジロと見ている。ここは打ち合わせ通りに
「お前達は三人組なんだな? 目的はなんだ」
「この街で冒険者になりたいんだ。ギルドも大きいのがあるらしいからな」
二人が後ろでニコニコ笑っている。兵士の雰囲気で今の所異変は起こっていない事が分かった。その表情は平和ぼけして弛みまくっているのが見て取れる。人間なぞどこでも同じなんだな
そしてジロリと此方を見て
「一人銅貨五枚だ」
そう言って手を出してくる。ジルの情報は取り敢えず正しかったようだ。アジトで少しばかりの小銭を回収しておいて良かった。三人で銅貨十五枚を渡して俺達は街の中に入る事に成功する。
「冒険者になるならギルドに行け。この大通りを真っ直ぐ行けばある」
「そうか、助かるよ」
意外にも親切な兵士に礼を言って、ギルドに向かう振りをしながら大通りを進む。
「先ずは回収したモノを売り払い金に変えよう。話はそれからだな」
ジルとクリスも異論は無いようだ。本来なら俺はこの世界で借金返済の為に冒険者をしている筈なのだがどうなる事やら。想定を遥かに超える事態の連続で先行きを考える事が無駄にしか思え無い。
街の中の活気はさすがに辺境とはいえ要となるに相応しいモノだった。通りには人と物が溢れかえり大通りには屋台が立ち並び様々なる物を売り買いしてる。何気には屋台の食い物が美味そうだ。
「腹減ったな」
「そうね…と言うか偉く落ち着いてるのね」
「サトウはこの世界に来たばかりなんたよね? そうは思え無いないね」
『この人は人の理の外を歩くから肝っ玉だけは一流なんでしょうね』
「ほっといてくれ! 」
エルベの街並みは辺境とは思えぬほど整理されたモノだった。統一された大通りとそれを繋ぐ小道が整然と整備されている。煉瓦造りの家屋が立ち並ぶ様はまるで観光地のようだ。ただ、一歩裏通りに入ると貧しい木造バラックが所狭しと無理矢理多々並んでいる。恐らくはスラムだろうと推察出来る。この辺りはいずくも同じーーと言う事なんだろう。
「ジル、ここは近くに冒険者の稼ぎ所が豊富にあるのか?」
「そうね、一応は迷宮もかなりの数が存在するし、ギルドも冒険者ギルドと商業ギルド、魔術師ギルドもあるわね。何より魔境や大森林と呼ばれる稼ぎ所も多いから人は増える一方みたいよ」
少し思案してジルは答える。
なるほど、紛れ込むには最適なんだな。人口の流入が進む辺境エリアーーならばここを拠点にしてみようか? ここで準備を整えその後に本格的に潜伏先を考えるのが最善のように思える。
「ここよ」
思索に耽りながらジルの後をついて歩いていると、一軒の店の前で立ち止まる。表通りから一本入った裏路地にひっそりと佇むその店の軒先には様々な武具がまるで捨て置くように並んでいた。看板には剣の絵が描いてあるだけのシンプルな店構え。営業しているならばだが。如何にも知る人ぞ知ると言う雰囲気は中々だ。
「如何にも掘り出し物がありそうだが、店主を掘り出す必要がありそうでもあるな」
「この店は訳ありなのよ」
ジルの口振りからすると協力者といった所だろうか? 怪しい雰囲気は中々だが、行くほかあるまい。
『アルマ、周囲の警戒を頼む』『……そう来ますか』『……恐らくはな』『ジルさんとクリスさんには?』
マインドリーディングを仕掛けても問題は無い。しかし……
『その辺は臨機応変にいってみようか』
『つまり出たとこ勝負なんですね?』
『失礼な、撒き餌さ』
呆れるアルマを周囲の警戒に当たらせつつ店内に入る、俺とジルそしてクリスを幾つかの視線がジッと見詰めているのに、俺の[剣技LV3]が殺気として感知した。
そして
『佐藤、囲まれてますね』
『囲まれたんじゃない。網に飛び込んだのさ』
さすが異世界、一筋縄ではいかないようだ。