アルテミスと結月-純潔の花
「徹さん初めてなの・・」
梨花は徹に言われた通り、セリフを言い腰をグラインドさせた。「あっ、もうダメ」
「早過ぎるだろ?感じすぎてるのか?俺と久々にセックスしたから興奮したか?」
梨花は利益も生じさせないセックスを、早く終わらせたかった。梨花の渾身の腰のグラインドで、徹はベッドに果てた。
「梨花感じただろ?俺はすんげー炸裂したよ。骨折してるけどまたヒビが入ったんじゃないかって位にね・・」
「私、役員会議あるから行くね」梨花は乱れたブラウスを直し、病室を出て行った。病室の外には、新入社員の桜木が立っていた。
「あら、ここで聞いてたの?」
「梨花さん申し訳ありません。こんな事になってしまって・・。別にセックスなんかいちいち感じてられないわ。ビジネスのセックスと、愛のセックスは違うわよ。あなたを見ていると、昔の私を見ているようだわ。まだ誰とも付き合った事がないんでしょ?」
「はい。まだ好きな人が出来ないんです。社長と患者さんのエッチ早かったですね・・」
「運悪く見舞った患者は、元旦那よ。利益のない男とのセックスは無駄。効率よく演技すればいいのよ。子宮に負担かけちゃダメよ。妊娠は嬉しい事ばかりじゃないわ。人生のリスクを背負うんだからね!あーっ、子宮痛い。無駄な痛いセックスだったわ」
梨花が去った病室では、徹がベッドの上で自由の効かない足を見つめていた。(足の骨折に感謝だな・・まさか梨花に再会できるなんてな・・。梨花は相変わらず綺麗だった。シングルマザーで娘が2人いるって言ってたな。俺が再婚して、高校2年の娘を育てても良いし。だけど娘は梨花の18歳の頃と同じで、清楚で可憐なお嬢様娘だったりしてな・・・)
徹は入院してる事を、セフレの薇愛にLINEした。薇愛はLINEの連絡を受け総合病院内をうろうろしていた。
「あら?薇愛じゃない?何してるの?」
「知り合いの人が入院してるから、お見舞いなのよ。ママは何の用?」
「私もお見舞いだったのよ」
「ママ、ブラウスのボタン掛け違えてるわよ。しっかり者のママが珍しいね」
プルルルル。スマホに着信がかかり、母親の梨花は仕事の話をしていた。「ごめんね薇愛!仕事の電話なの。またね!!」梨花は娘の薇愛に手を振り、総合病院を後にした。
ガラッ。徹の個室の部屋のドアが開いた。「徹さん!!心配したよ・、大丈夫?」
「薇愛ありがとうな。骨折だけだからな。」
「結月は見舞いに来たの?徹さんは、結月の純潔奪ったんでしょ?」
「奪おうとしたら、警察が落とし物の確認してくれってアパートに来てさ、ヤレなかった。すんげー、鬱憤溜まってさ、繁華街へ歩いて行ったら車に当たり、この状況(笑)」
「世話になってるんだから見舞いに来なさいよ。だけど、私と徹さんの見ちゃったからね(笑)芸術品並みの反り方だもん。ピカソもビックリだわ。早く元気になって、結月の純潔奪わないとね。だけど、個室なんてリッチね。個室だからお医者さんごっこしても大丈夫かもね?個室でしちゃう?」
「今日は大丈夫だよ」
徹は満面の笑みだった。
「徹さん、足骨折してるのに何だか入院が嬉しそうだね」
「今日はもう寝たいんだ」
「えっ!まだ夕方よ?だけど安静が大事よ。じゃあ私は帰るわね」
病室のドアを閉めた瞬間。
「またな梨花」微かに聞こえた名前に一瞬戸惑いを見せた薇愛。空耳だと感じながら、院内を歩き病院をあとにした。
徹の入院は3か月かかり、治療に専念した。母親のルナが逮捕され、父親代わりの徹は入院で、結月のアパートはひっそりと静まり返っていた。母親のルナの逮捕の件もあり、ルナと徹の寝室に置いてある黒百合の御神木を、恐る恐る手に持ちゴミ箱に投げ捨てた。
「こんな気持ち悪い御神木があるからよ!黒百合の御神木は幸せじゃなく、不幸を持たらすのよ」冬の凍てつく寒さの中、黒百合の御神木はゴミ箱に投げ捨てられた。
春の訪れを感じさせ、梅の蕾も膨らみ始めた3月。春からの進級に向けて、クローゼットの整理をし、返せずにいた輝七のコートを返す準備をしていた?(輝七君のコートを返さないとね。いろいろ私を守って包んでくれた・・)
結月は、輝七の両親が営んでいる星緒フラワーへ出向いた。
「すみません。こんにちは」
「お待ち下さいね。いらっしゃいませ」
「あっ、、あの、、」
「お花の注文ですか?」店の奥から出てきたのは輝七の母、美朱だった。
「あのお花の注文じゃなくて、コートを返しに来たんです。輝七君のパパさんがコートを貸して下さいまして・・」
「輝七のお友達?彼女?今日は学校お休み?輝七は学校に行っていないんだけどね・・。輝七が休みの日に改めて来ても大丈夫よ」
笑顔で話しかける美朱。
無言で俯く結月。
「どうぞ、寒いから中に入ってね」
美朱が、笑顔で手招きをした。
「あの、、また来ますので大丈夫です」
「早く!早くお姫様は中に入ってね」
美朱の言葉に戸惑いながら、リビングに向かいソファーに座った。「失礼します」
美朱は、お湯を沸かしホットミルクに黄色の星型のチョコを浮かべた。
「どうぞ!熱いから気を付けてね」
「ありがとうございます。頂きます」ミルクを1口飲んだ結月は、自己紹介を始めた。
「自己紹介遅れました。源星結月です。清花高校2年です。こちらのコートを私が困ってる時に、輝七君のパパに偶然会いまして、貸して頂きました。クリーニングはかけたので、パパさんにお返しして頂けませんか?」
「あらそうなんだ。このコートは輝七のコートだから、輝七に直接返しても大丈夫なんだけどね。輝七が休みの日でも良かったのに?別の日に来る?」ニッコリ微笑む美朱。
「今日は私の高校が創立記念日で休みなんです。だから今日が良いかなと思って・・」
「あー(笑)輝七のいない日を狙ったなぁ(笑)輝七とはお友達?彼女?」
「友達っていうか、輝七くんは、どう思ってるか分かりませんが・・」
「このコートはね、璃音さんが中高でヤンチャしてた時に着てたみたいでさ。その頃で言えば特攻服の様なものね。女の子と次から次へと付き合って、わたしと出会うまでは、いろんな女の子と体の関係があったみたい。私と璃音さんは、星緒造園って所で出逢ったのよ。お互いに別の職場だけど、惹かれあっていった・・。だけど、私は辞めざるおえない状況に陥って、職場を去った。お互いに別々の環境で働き、離れ離れになってさ・・。星の悪戯で会うことも出来ず、すれ違ったり障害があったりでサイレントっていう無の期間が数十年あった。お互いに情報も近況も分からない。いつしか生きてるうちに、互いの記憶から意識が消えていくの。苦境に晒された時に、運命か!って思うくらいの異性が現れ幸せのレールが敷かれる。偽のツインレイの男女はね、このレールに乗ってしまうの。一生愛するとか、守り抜くとか誓ったのに、他の異性を愛する事を選ぶ。私は誰からも必要とされず、愛されずに生きてきた。璃音さんと会えない、数十年間のサイレントの中でね、、、私は男に体を売るような仕事に就いてしまったの。純潔で男も知らない私が・・。いろんな女性や男性が近寄ってきて純潔を奪われそうになった。だけど、それでも構わないって思ったわ。だけどね、ツインレイの魂は離れている時こそ、守れるのか!守ってもらえるのか!なのよ。直接守れなくても、何かに力を変えて守り抜く、、それが本物のツインレイなのよ。あっ、ちょっと待っててね」
美朱は、コタツから立ち上がり、結月に、栞を手渡した。「これをどうぞ」
「これは何ですか?」
「これはね栞なんだけどね。御石神社って知ってる?境内の奥に行くと森になってるの。アルテミスの純白の薔薇っていう薔薇の花があるんだけど、1輪だけは枯れる事も無く、倒れる事も無く、ずっと何十年も咲き続けている不思議な薔薇なのよ。その神秘の薔薇の花片で作った栞よ。花片はね、めくってもめくっても咲き続けるのよ。」
「そんな貴重な薔薇の栞を私にくれるんですか?」
「輝七がね、誕生してから1歳の誕生日にね、御石神社にお参りに来たの。歩く事も出来なかった輝七が、初めて歩いて行ったのが、1輪のアルテミスの純白の薔薇なの。輝七は、まだよく話せないのに「ユーユに渡してって」言うの。その時の清らかで美しい純白の薔薇の花片を1枚栞にしたの。私がね、純白の薔薇の花片を栞にして、小袋に入れたの。そしたら輝七がね、星のシールを持ってきて貼ったのよ。それからずっと開封しないで17年間が経過した。あの時は意味が分からなかったけど、結月ちゃんと今日出逢えて、これを渡さなきゃって思ったわ。ふふふっ」
「可憐な白い薔薇の花片ですね。ありがとうございます。」結月が、栞を財布に入れた瞬間、財布から産婦人科の診察券が飛び出した。「これ落ちたわよ」美朱が、産婦人科の診察券を拾い結月に渡した。慌てて財布に診察券を入れる結月。それを見て、美朱は話し始めた。「私、会社を辞めて数十年ぶりに璃音さんと街で再会した時があってさ。道路を挟んだ向こう側に作業服を着た璃音さんを見つけて、運命の再会だって喜んだ。そしたら璃音さんの隣には女の人がいて、女の人は産婦人科に入っていった。私は雨の中、膝から崩れ落ちた。結婚した時に聞いたら、職場の女の子が貧血で倒れて、病院まで送っただけだって。だけど私は地獄のような日々を何年も送り続けた。私ね、いまだに純潔なのよ」
「えっ?」目が点になり固まる結月。
「やっぱり驚くよね(笑)何で輝七が、産まれたかって事よね?(笑)璃音さんと再会してからも、試練やカルマを乗り越えるのが必死だった。ある時、御石神社の真光の池で、璃音さんが母親に突き落とされて、瀕死の状態だったの。私は自分の命と引き換えでも良いと思ったわ。泣いて願ったら、ギリシャの神が降りてきた。私に「璃音を助けたければ、純潔でいること」と約束させられた。もし破った場合は、璃音の命を消すと言われた。私は純潔でいる事を誓ったわ。だけどね、、唇も体も触れ合う事が出来ないのよ。私は我慢できても、璃音さんは男だからね…。それに子供も授かる事できないの。璃音さんにプロポーズされた時に、私は純潔でいなきゃならない使命があると話したの。ギリシャの神のお告げの事は、いまだに秘密なんだけどね。璃音さんは、純潔でもかまわないし、抱けなくても、子どもも授からなくても良いって言ってくれた。それから数ヶ月したら、お腹の中に輝七が宿っていた。不思議よね…。世の中に不可能な事ってあると思うのよね。だけど無償の真実の愛ってさ、願えば叶う事もあるのよ」涙声で結月に微笑む美朱。
「神秘的ですね…。いいなぁ。私にも神様が降りてきてくれないかな」
「結月ちゃん?困った事があったり、助けて欲しいって思った時は7つの星に願うのよ」
「オリオン座ですよね?」
「輝く七つの星よ(笑)」
結月は、よく理解できなかったが、声に出して復唱をした。
「七つの星!!七つの星!」
「結月ちゃん!輝く七つの星だからね(笑)輝く七つ!コートは璃音さんに渡しておくね」
「宜しくお願いします」頭を深々と下げて、星緒フラワーの店を後にした。
(今日来て良かったのかも…。純白の薔薇の栞を大事にしようっと…。私のお腹に赤ちゃんが宿る体にしてくださいね)
結月は、御石神社に向かい、参拝し、真光の池で足を止めた。手を合わせ、皆が幸せでありますようにと願った。
巫女のバイトを、いろんな事が重なり休んでいた結月だったが、純白の薔薇の花片の栞を見つめ、自分と向き合う準備が整った気がした。「巫女さんに復帰よ!」
神社の境内の奥で、こちらを覗き込む顔が真光の池に映し出された。
「純潔も何もかも奪ってやる」




