狂った月と太陽 ツキミソウ
星緒社長は状態が悪く予断を許さなかった。会社の従業員も会社の業績などの事を小耳に挟み心穏やかではなかった。従業員は会社の庭園の作業をしていた。アロンに肥料倉庫の鍵を社長室で借りてくるように中村が言った。アロンは2階の社長室へ向かいドアの前で立ち止まった。「あーヒマお手当て稼げないし刺激も無いし」社長室は蒸し暑く窓を開けていた。セレネは巻き髪をアップにして黒いキャミ1枚でソファーに横たわっていた。アロンはセレネの大胆な姿を覗いてしまった。物音に気付いたセレネ。「あら?アロン君・・部屋に入って」アロンは肥料倉庫の鍵を借りに来た事を伝えた。「鍵どうぞ!アロンくん・・急にカラダがフラフラしてきてカラダが火照ってきたみたい。なんでだろ?アロン君は原因なんだか分かる?」目のやり場に困るアロン。「お願いだから手を貸して・・」
セレネはアロンの手を引っ張りソファーで2人の体は重なった。アロンはセレネの髪の香りと色気にやられて唇にキスをした。セレネが急に立ち上がり「今日はここまでにしたい。ゴメンね。アロンくんと先まで楽しみたいんだけどね・・実はできない理由があって・・」セレネが顔を覆いながらアロンに打ち明ける。
「私はアロンくんの事が好きなの。だけどそれを快く思わない人がいるの。名前は言えないけどアロンくんも知ってる男に1週間前にこの部屋でソファーに押し倒された・・怖かった・・私は好きな男としかセックスできない不器用な女なの」
「そいつは誰なんだよ?セレネさんを苦しめる奴は許さない」アロンが泣き出すセレネに言った。
「私の事はどうでもいいの・・・これ以上アロンくんを好きになったら自分が怖くなるの。こんなに人を好きになってしまうなんて・・アロンくんの近くにいるとおかしくなる・・アロン君を見ると太陽の様に感じてしまうの。私を溶かして突き上げる太陽」
アロンは自分の事を愛してくれる人がいるんだなと胸が熱くなった。両親の不仲の家庭で育ったアロン。愛なんてこの世には存在しないと思っていた。
「私を襲った男はアロンくんもよく知っている男よ・・その男はアロンくんの姉弟のアルテミスさんに頼まれたか操られてるのか・・アロンくんの事を好きになってはいけないようにマジナイをかけたの。アルテミスさんは私がアロンくんの事を好きなの知ってるの・・私はアロンくんに手紙を書いて机に置いて置いたの「好き過ぎて結婚したい。」って」アルテミスさんが社長室に掃除に来た時に手紙を読んで知ってしまったんだと思う。アルテミスさんってまだ誰とも付き合った事が無いの?たぶんアロンくんをとられるのが嫌だったんだと思う。リオンとアルテミスさんってどんな関係だと思う?アルテミスさんがリオンを一方的に好きみたいだけどね。リオンは最近私に気があるみたいでさ・・アルテミスさんはその事で嫉妬してるみたいなの。私が苦しむように恋愛できなくなるようにマジナイをされた。こないだ透視の占い師にセレネの運命の相手の誕生日を聞いたの・・そしたら11月13日だって。」アロンはかなり驚いた表情でセレネに
「えっ?俺11月13日生まれだよ」
「えっ?本当?運命の人ってアロンくんなんだね!だけど私とアロンくんには呪い=マジナイがかかってるの・・透視してくれた占いの先生の助言によるとアルテミスさんの大切にしてる物を御石神社の真光の池に浮かべるとマジナイは解けるらしいの。真光の池は不純なものや心を洗う神域の池」
「御石神社って樹海のような神社で森の中で迷う人もいるくらいの迷宮な神域。今度リオンとアルテミスさんを御石神社の視察に行かせようと思うの。ねぇアロンくん?アルテミスさんの宝物って何?」アロンが少し考えながら「昔のアニメのスタームーンの三日月の弓の音色が出るオモチャSTARTONEとあとMisticっていうメーカーの三日月と星のアップリケのワンピースかな。」
「教えてくれてありがとうアロンくん。さすがにアルテミスさんの私物を真光の池に浮かべるのは可哀想だから同じ物をフリマアプリで探して真光の池に浮かべて浄化したい。そうしたらマジナイが解けてアロンくんと私はひとつになれるかも」セレネがアロンの胸に顔を埋め「早く肥料倉庫の鍵を持って行って私達のコトを怪しまれちゃうから」
アロンがセレネに手を振り社長室から出て行った。セレネはソファーにもたれかかりスマホのフリマアプリでSTARTONEのオモチャとMisticの三日月のアップリケのワンピースを検索した。
「見つけた!だけど男ってバカね(笑)ちょっと触っただけで本気になってるし(笑)透視の先生?(笑)誰それ(笑)そもそも占い師なんか知らないし。マジナイの話を信用したアロン(笑)そんなにセレネに夢中なったの?(笑)」蒸し暑い社長室でセレネはタバコを一服した。
2日後にフリマアプリの商品が届きアロンにアルテミスの宝物と同じか確認してもらった。「アロンくんお願いね・・明日の金曜日にアルテミスさんとリオンに御石神社に視察に行ってもらうわ。だから今日の夜に御石神社の真光の池に白いワンピとSTARTONEのオモチャを浮かべてきて欲しいの。浮かべ終わったらセレネのアパートに来てね。早くマジナイを解いて1つになりたい」セレネはハニカミながらアロンに抱きつく。
「えっ・・セレネさんのアパートに行ってもいいの?」
コクリと頷くセレネ。
会社の敷地に咲き始めたツキミソウは夕暮れには白く色づき咲き始めた。ツキミソウの花言葉は移り気。ほのかな恋。無言の愛情。
PM21時。アロンは車を飛ばし1時間30分かけて御石神社に着いた。広大な敷地に樹木が生い茂っている。御石神社には参道が3つある。アロンは懐中電灯の光を頼りに真光の池を見つけた。紙袋からアルテミスの宝物と同じ物を真光の池に投げ入れた。「アルテミスの私物じゃないし、しょうがないよ。これは呪いを解く儀式なんだから」アロンは車に戻りセレネのアパートに向かった。走ってる時に渋滞にはまり別ルートで走っていた。走行中にアロンは懐かしい感じがした。「この風景見た事がある。幼少時に済んでた場所だ。懐かしい。夜に引っ越しして街を出たからよく覚えてないけど・・さっきの神社は森みたいだった。あの森に行った事があるような・・」アロンは気を取り直しセレネのアパートに車を走らせた。
漆黒の夜空にブラッドムーンの赤胴色の大きな月が潜んでいた。




