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余命48時間  作者: 葉加多錬一朗


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6/7

死に方生まれ方 前編

 どこまでを続く緑の草原の上に真っ青の空と大小様々な雲が浮いている。心地よいそよ風が草原と僕の頬をそっと撫でて通り過ぎていく。

「天国はとても心地いいな、シノ」

 隣の上司が野花で作った冠を頭で押さえながら呟く。

 僕は一呼吸置いて、上司へ返した。

「……ええ、本当にずっと居られる、現世とは違って……」

「温泉だったり大自然のど真ん中だったりあるいはその類のリゾートだったり、現世でも天国みたいな所はいくつもある。だがそれ以上に地獄みたいな所ばっかりだからどうしようもないよな」

 上司はずっと地平線の彼方を眺めている。

「今まで私が案内したみなさんも、ここへ来たのでしょうか?」

「どうだろうね。まあ少なくとも、何人かは現世よりももっと酷い所へ落ちたと思うけど」

 さー…っとまたそよ風が通り過ぎていく。草原は波打ちゆらゆらと揺れている。

「そうだシノ、お前に言っておかなければならないことがある」

 上司がすっと僕の方へ振り向く。

「次がお前の最後の仕事になる」




 ここは本当に居心地がいい。どこまでも続く緑の海原、地平線、揺れる草花、そのどれも全て美しく心地よい。

「こんにちはー」

 遠くから誰かの声が聞こえた。その方を振り向くと、白いワンピースを着た少女と帽子から靴まで全身真っ黒な服装の若い男がこちらへ近づいてきていた。

 真っ黒な服装の男はなんだか見覚えがある。

「こんにちは、私シノと申します。隣に居るのは上席の者で、信条の違い等もあるため名前は申し上げられません」

 彼は帽子を取り軽く会釈し、少女も続いて

「どうもシノの上席の者です、今回は特例として私が帯同してます」

と、軽く頭を下げた。

 シノ、そうだ、シノ!そうだ思い出した

「シノって確か、冥界の案内人の……」

「そうです、私は冥界の案内人シノ。あなたとは過去5回会っています」

「なぜここにいるのです?あなたは()()で死ぬ間際の人を案内しているのに、天国で私のような人でもないただの魂に会いに行くことなどないはずでは?」

 彼は少し間を置きゆっくりとした口調で答えた

「場所がどこであっても、ましてやまだ生まれる前であっても、あなたは今から48時間以内に死ぬ。ただそれだけのことです」




 私はこれまでまともな死に方をしてこなかった。きっとそれはまともな生まれ方をしてこなかったからであろう。

 最初に死んだのは今からおよそ20年前、自宅の冷凍庫の中で冷たく白くなっていたところを発見された。人生で最初に私を抱き上げたのは母でも父でも助産師でもない、何も関係ない警察官であったとは本当に皮肉なものである。

 2回目は風呂場で水死体として見つかった。死んで間も無く見つかったため、最初私を見た人は今にも産声を上げそうだったと言っていたという。

 それからというもの、箪笥たんすへと押し込まれたり首を絞められたり、駅のコインロッカーに捨てられたりトイレに流されたりもした。

 理由としては、経済的に困窮していて仕方がなかっただとか、別に可愛くなくかったので殺しただとか、浮気相手との間に生まれた存在だから都合が悪かっただとか……理不尽という言葉でさえ優しく聞こえてしまうほどに無責任で身勝手な話である。

 これまで過去5回、親たちの勝手な都合で親の元に生まれ、親たちの勝手な都合で死んでいった。

 誰の愛で、誰の都合で私の命はあるのか。誰のために生まれそして死ぬのか。私にはその問いの答えが見出せなかった。

 現世とは正に、冷めきって凍えていて、実に居心地が悪いところであった。

 私はそんな現世で誰かに抱かれることも二本足で立つこともなく天国へ旅立ち、また現世へと降りた____


 そして今、6回目の人生が始まり、同時に終わりを迎えようとしている。


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